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【映画レビュー】巨大移動都市ロンドンが迫る!壮絶なSFアクション『移動都市 モータル・エンジン』

フィリップ・リーブの小説「移動都市」を原作に、ピーター・ジャクソンが製作・脚本を手掛けた壮大なSFアクション映画。

「60分戦争」と呼ばれる最終戦争から数百年後、わずかに残された人類は地を這う移動型の都市で生活を余儀なくされていた。小さな都市を捕食することで成長し続けるの巨大移動都市ロンドン。ロンドンの指導者ヴァレンタインに復讐心を抱く少女ヘスターは、ある小都市がロンドンに捕食される混乱に乗じてロンドンに潜入し、ヴァレンタインに刃を向ける。

この映画の最大の見どころは、何と言っても巨大移動都市ロンドンの圧倒的な迫力だ。アカデミー視覚効果賞を受賞したクリスチャン・リバーズならではの力の注ぎようで、ばかばかしいほどの巨大さと暴力性を持つ移動都市が猛スピードで爆走するシーンは圧巻である。

また、ヒューゴ・ウィービング演じるヴァレンタインの存在感も見逃せない。彼の冷酷なキャラクターが物語に深みを与えている。そして、ヘラ・ヒルマーが演じるヘスターのアクションも見どころの一つだ。彼女の激しい戦いと心の葛藤が見事に描かれている。

ただ、中盤は少しダレてしまった感が否めない。最初はワクワクして観ていたのに、約1時間ほどは退屈に感じてしまった。それでも、緑の人と赤い人が登場してからは、ストーリーが盛り返してきたので、最後まで観る価値はあったと思う。特に後半にかけて、物語の背景にある帝国主義や大量破壊兵器への皮肉が見えてきて、違った意味で楽しめた。

この映画を観ていると、移動都市主義という考え方が本当にどうしようもないものであることに気づく。自分たちで何かを生産することなく、他者のものを奪うだけの思想は、長い目で見ればジリ貧になっていくのは明らかだ。作中でもその貧しさが描かれていて、ただのアクション映画ではない深いメッセージ性を感じた。


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