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メリル・ストリープの慟哭。『ソフィーの選択』が突き刺す、愛と絶望

『ソフィーの選択』、観終わった後、しばらく放心状態でした。メリル・ストリープの演技が凄まじい、という言葉だけでは到底足りないほどの衝撃。彼女の存在そのものが、ソフィーという女性の苦悩と悲しみを体現しているようでした。

舞台は第二次世界大戦後のニューヨーク。若い作家のスティンゴが、ソフィーと彼女の恋人ネイサンと出会うところから物語は始まります。ソフィーはポーランド出身で、過去に辛い経験を抱えている様子。ネイサンは頭が良いけれど、どこか不安定で危うい雰囲気。最初は、そんな二人に惹かれていくスティンゴの視点を通して、彼らの日常が描かれていきます。

でも、物語が進むにつれて、ソフィーが抱える過去が少しずつ明らかになっていくんです。アウシュヴィッツ強制収容所での過酷な体験、そして、タイトルにもなっている「選択」の意味…。ネタバレになってしまいますが、彼女がナチスの将校から迫られた究極の選択は、想像を絶するものでした。母親として、人間として、これ以上の苦しみがあるだろうか、と心が締め付けられました。

メリル・ストリープの演技は、本当に圧巻。ポーランド語とドイツ語のセリフも完璧にこなし、ソフィーの複雑な感情を見事に表現しています。特に、過去を語るシーンは、彼女の表情、声色、仕草の一つ一つから、絶望と悲しみが溢れ出ていて、観ているこちらまで息苦しくなるほどでした。

映画全体としては、重く、苦しいテーマを扱っています。でも、人間の強さや、愛の形について深く考えさせられる作品でもあるんです。ソフィーとネイサンの関係は、一見すると歪んでいて危ういけれど、お互いを必要としている気持ちは痛いほど伝わってきます。

この映画は、エンターテイメントとして楽しめる作品ではないかもしれません。でも、人間の心の奥底に触れる、忘れられない体験を与えてくれるはずです。鑑賞後は、きっと誰かと語り合いたくなると思います。覚悟を決めて、ぜひ観てみてください。きっと、あなたの心に深く刻まれる作品になるはずです。

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