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新珠三千代の美、永遠に。『雁の寺』に息をのむ

新珠三千代さん主演の『雁の寺』、鑑賞しました。モノクロ映像が醸し出す独特の空気感と、人間の業や愛憎が絡み合うストーリーに、すっかり引き込まれてしまいました。

舞台は京都の寂れた寺。そこで暮らす美しい住職夫人、千代(新珠三千代)と、彼女に惹かれる若い僧、慈念(中村賀津雄)。禁断の愛に身を焦がす二人の姿は、息をのむほどの色気と危うさを孕んでいます。特に、千代が見せる、儚げでありながらも芯の強さを秘めた表情が印象的でした。新珠三千代さんの美しさが際立っていて、彼女の存在そのものが、この映画の芸術性を高めているように感じました。

物語は、千代の過去、そして寺に伝わる「雁の絵」の謎を軸に進んでいきます。実は千代は、過去に愛した男を殺めてしまった過去を持つ女性。その罪の意識と、慈念への愛情の間で揺れ動く姿は、観ているこちらも苦しくなるほど。また、雁の絵に隠された秘密が明らかになるにつれ、物語は予想外の展開を見せます。過去の因縁が絡み合い、登場人物たちの運命を大きく狂わせていく様は、まさにドラマティック。

特に、ラストシーンは衝撃的でした。慈念が、千代を救うために取った行動は、愛ゆえの狂気とも言えるもので、深く心に突き刺さりました。あのラストシーンを観るだけでも、この映画を観る価値があると言えるでしょう。

ただ、少し時代を感じさせる演出や表現も確かにあります。現代の映画に慣れている方には、少し退屈に感じられる部分もあるかもしれません。でも、それを差し引いても、この映画が持つ力強さ、美しさ、そして人間の業の深さは、十分に心に響くはずです。

『雁の寺』は、単なる恋愛映画ではありません。人間の欲望、罪、救い、そして愛という、普遍的なテーマを深く掘り下げた作品です。鑑賞後には、きっと色々な感情が胸に押し寄せてくると思います。少しでも興味を持たれた方は、ぜひ一度、観てみてください。きっと、忘れられない体験になるはずです。

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