見出し画像

田中絹代の魂!『西鶴一代女』、奔放な生き様に胸熱

溝口健二監督の『西鶴一代女』、ついに観ました!モノクロなのに、色彩が溢れ出ているような、そんな不思議な感覚に包まれました。田中絹代さんの演技が、もう、言葉にならないほど素晴らしいんです。

物語は、井原西鶴の『好色一代女』を基に、一人の女性、お春の波乱万丈な一生を描いています。最初は純粋で可愛らしいお春が、様々な男たちに翻弄され、社会の底辺へと落ちていく様は、観ていて本当に胸が痛みます。

特に印象的だったのは、お春が宮仕えをしていた頃の場面。お春は、身分の低い武士と恋に落ち、それがきっかけで家を追われてしまうんです。この時の、幸せそうな顔から一転、絶望に打ちひしがれるお春の表情の変化に、思わず息を呑みました。田中絹代さんの、繊細な感情表現に引き込まれました。

その後も、お春は次々と困難に見舞われます。遊女に身を落としたり、年老いた男の妻になったり…。それでも、お春は必死に生きようとするんです。その姿は、悲しいけれど、どこか力強く、観る人に勇気を与えてくれます。

物語が進むにつれて、お春の境遇はどんどん過酷になっていきます。ラストシーンでは、お春は乞食同然の姿になって、寺の門前で物乞いをしています。かつて、あんなに美しかったお春が、なぜこんな姿になってしまったのか…。やるせない気持ちでいっぱいになりました。

ただ、このラストシーンは、単なる悲劇として終わっているわけではないと思うんです。お春の瞳には、絶望だけではなく、何か悟りのようなものが宿っているように見えました。彼女は、様々な経験を通して、人生の真実を見つけたのかもしれません。

『西鶴一代女』は、娯楽作品というよりは、人間の業を描いた、重厚なドラマです。観終わった後は、しばらく放心状態になってしまうかもしれません。でも、きっと、あなたの心に深く刻まれる作品になるはずです。ぜひ、一度、観てみてください。モノクロの世界に広がる、圧倒的な映像美と、田中絹代さんの名演に、きっと心を奪われるはずです。

いいなと思ったら応援しよう!