『タクシードライバー』デ・ニーロに狂わされた夜。
『タクシードライバー』、皆さんはもうご覧になりましたか？私は先日、初めて鑑賞したのですが、その衝撃たるや…！正直、しばらく放心状態でした。
ロバート・デ・ニーロ演じるトラビス・ビックル。彼はベトナム戦争帰りの不眠症に悩む男で、ニューヨークのタクシードライバーとして夜の街を彷徨います。街の喧騒や、目に飛び込んでくる退廃的な光景、そこで生きる人々の孤独や狂気に、彼はどんどん蝕まれていくんです。
特に印象的だったのは、トラビスが選挙事務所で働くベッツィに恋をするシーン。彼は純粋な想いを彼女にぶつけようとするのですが、うまくいかない。デートにポルノ映画館に連れて行ってしまうという、ズレっぷり。ベッツィを演じるシビル・シェパードの美しさと、トラビスの不器用さが際立っていて、なんとも切ない気持ちになりました。
そして、物語は徐々に狂気を帯びていきます。トラビスは街の汚さを浄化しようと、暴力的な手段に訴え始めるんです。少女売春の実態を知り、ジョディ・フォスター演じるアイリスを救おうとする姿は、正義感なのか、それともただの自己満足なのか…。彼の行動はエスカレートし、クライマックスの銃撃戦は、本当に目を覆いたくなるほど凄惨です。
この映画の凄いところは、トラビスの心情をこれでもかと描き出している点だと思います。彼の独白や、タクシーの中での表情、そしてニューヨークの夜の街並み…全てが彼の孤独や焦燥感を増幅させているんです。観ているこちらも、知らず知らずのうちにトラビスに感情移入してしまい、彼の狂気に引き込まれていくような感覚に陥ります。
ラストシーンは、賛否両論あると思いますが、私は希望のようなものを見た気がしました。まるで悪夢から覚めたかのように、トラビスは少しだけ救われたのかもしれません。
『タクシードライバー』は、決して万人受けする映画ではないかもしれません。しかし、人間の心の闇や社会の病巣をこれほどまでに深く描いた作品は、他に類を見ないと思います。もしあなたが、刺激的な映画や、考えさせられる映画を求めているのなら、ぜひ一度、この作品に触れてみてください。きっと、忘れられない夜になるはずです。
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