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『エル ELLE』ユペールが暴く、心の奥底。

ポール・ヴァーホーヴェン監督の『エル ELLE』、観終わった後、しばらく放心状態でした。イザベル・ユペール演じるミシェルは、ゲーム会社の社長であり、容姿端麗、頭脳明晰、そして何よりも強い。そんな彼女が自宅でレイプされるという衝撃的なシーンから物語は幕を開けます。

普通なら警察に駆け込むところを、ミシェルは冷静沈着に行動するんです。むしろ、犯人を特定し、自分の手で復讐しようとします。この時点で、もう完全に彼女の世界に引き込まれてしまいました。

ミシェルを取り巻く人間関係も複雑で面白いんです。元夫、愛人、息子の彼女、仕事仲間…誰一人として「普通」の人がいない。それぞれが問題を抱え、欲望渦巻く人間模様が、ミシェルの復讐劇に絡み合ってくるんです。

特に印象的だったのは、ミシェルの過去です。彼女の父親は有名な大量殺人犯で、幼い頃のトラウマが彼女の人格形成に大きく影響を与えていることが示唆されます。レイプ事件をきっかけに、過去の記憶が蘇り、彼女の行動原理がより深く理解できるような気がしました。

犯人の特定方法も、ミシェルらしくてゾクゾクしました。ゲーム会社のシステムを悪用したり、挑発的な態度で相手を揺さぶったり…。彼女は、ただの被害者ではなく、圧倒的な力を持つ「女王」なんです。

そして、一番衝撃的だったのはラストシーン。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、ミシェルの選択は、観る人によって解釈が分かれると思います。「これで良かったのか?」と、深く考えさせられました。

『エル ELLE』は、単なるサスペンス映画ではありません。レイプという暴力、過去のトラウマ、複雑な人間関係…様々な要素が絡み合い、人間の本質をえぐり出すような作品です。

イザベル・ユペールの演技は圧巻で、彼女以外にミシェルを演じられる人はいないんじゃないかと思うほどでした。一見冷酷に見えるけど、どこか脆さも持ち合わせているミシェルを見事に体現しています。

もしあなたが、刺激的な映画、人間の奥深さを描いた映画を求めているなら、『エル ELLE』は絶対におすすめです。観終わった後、きっと誰かと語り合いたくなるはず。ぜひ、ミシェルの世界を体験してみてください。

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