瀯酔

美に殉死 愛の闘争

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最近の記事

「セクシー・ボランティア」という概念について

「セクシー・ボランティア」という、なんだかポップで怪しい概念をずっと提唱している。和訳すれば性的無償奉仕とでもなるのだろうか。海や太陽のように、非常に大きく、ゆるやかな概念であり、それは活動者同士の相互作用の中で無意識の底を伝播していくものなのであるが、最近どのようなものなのかと尋ねられることも増えてきたので、敢えて言語化を試みようと思う。論理や整合性を超越した概念であるので、粗い文章になるかと思われるが、どうか寛大な心で読んでいただければ幸いである。是非、その深淵を感じてい

    • 教師生活5か月目に初任者研修に参加した感想

       教員の初任者宿泊研修に参加してきた。  始めの方の講義では、如何に自分の授業が力量不足であるのか痛感した。 慣れてきて、毎日をこなす作業になっていなかっただろうか。常に最新の教育を目指すべきではないのだろうか。特に私の場合、自分が論理的理解を好むがゆえに、論理的な説明に重きを置きすぎてはいなかっただろうか。旧時代の教育や自己満足に留まっていたのではないだろうか。  しかし、研修が進むにつれて、新たな感覚も得た。すなわち、人は実に━━この東京の特定の教員集団の中でさえ━━多様

      • 暗い部屋

        シャンソンが、涙に透ける 遠いあなたのために 夜が終わらぬようだから せめて同じようにと 緑の言葉に眉をひそめて 小さな部屋であなたは震える 活字のキスは穏やかに 光に背いて耳を刺す やがて醒めゆくのであれば 今はまだ 時を求めて

        • 小さな自慰

          青い琥珀 洗練された修辞法 美女の下痢 私はぐるぐると粘膜の滑り台を落ちていった 怯えて、怯えて 最後に鼓膜が破れて、死んだんだ!

          ヴェール

          酩酊は俺をどこにも連れてゆかない 接吻の冷たい痛みに震えながら 冷たいというのはこんなに美しかったっけと 俺はもう一度、背中を丸めた 眼下の闇にはだだっ広い河原が息をしていて 育ちの良いレース刺繍は呆気なくほどかれてゆく 俺は正直飽き飽きしている 愛の啄ばみも 質素な常識も インテリの黄色い笑顔も 澄み渡る虚栄も なにひとつ、俺の瞳孔に値しない なにひとつ 俺は暗闇に唇を探した いつの間にレースはほどけきって 彼女の白い肉が川に濡れていた 真に耐えがたいのは、腐敗で

          ヴェール

          キャンバス

          まっ白なキャンバスの まっ白な真ん中に 俺はぽっかり浮いている またとない有象無象の夢が 瞬くように泳いでは消え 放縦なヴィーナスの如く 冷たい布地に跳ね散る (暗転) まっ黒なキャンバスの まっ黒な真ん中に 俺はぽっかり浮いている またとない有象無象の夢が 瞬くように泳いでは消え 放縦なヴィーナスの如く 冷たい布地に跳ね散る 世界は、ここにはない 誰かに奪われた小さな生活が 徒に膨張しているのだ 誰かに忘れ去られた小さな生活が 揺り籠に死んでいるのだ たくさん、たく

          キャンバス

          ダビデ

          君は石だ 鏡に非対称性を捧げ 酔い潰れたメデューサの紅い毛髪の 朽ち果てた瞳の重さを受け止める 太陽を月を とてつもなく大きな光を人々は称揚するが 誰にも見えないのだろう 対称性の向こうに消えそうな目の輝きを 眩い嘆きを 燃え尽きた命の星を蹴り飛ばして 夜の果てに眼光を捨てる そんな日々を嘗ては過ごした 酒を絶やしてはならぬ そう笑う君は太古の血潮だった 誰の目にも触れられぬ 遠い太古の結晶だった 幻覚と散逸構造が唯一の友人で 毎日毎日、鏡のワルツを眺めた 少女は泣き

          ダビデ

          蜘蛛の糸

          きらびやかな嘘の潮風に 零れ落ちた太陽のしずくを探して 錆びた始発列車に飛び乗った 昨晩からどうにも内臓は愛情に飢えて 力なく千切れた脳をぶらりぶらりと引っかけたまま どれが本当の俺なんだろうと朝まで問う 咎めたければ咎めれば良いさ 俺は窓外に目をやった 肉体のなんと無駄なことだろう 朝日に濁る列車の窓に薄汚い少女の声が乱反射する 肉体のなんと無駄なことだろう 声は蘇った 鬱血した肺を解放すべく 声は蘇った 通りで解らぬわけだ 文明の速度の狭間に俺は舞台袖を見た

          蜘蛛の糸

          呼吸

          光は追わなければならぬ それは盲従ではなく、純心の淘汰である 淡い出来心で駆け上る ガラスの慈悲の螺旋階段は どこへも通ずることなく 造花の薔薇の台座となる 消えゆく光のボルボックスを 痙攣する薔薇に重ねて 押し返す粘性の情熱を 閉じた瞼に乗せた 早朝の青さと夜の残酷さが 互いの名を呼ぶ束の間 貴方の頭髪や、眼球や唇は 色を放ち酸素の海を抱く 或いは生の寝返りを太陽に託すことで 人は人となり時は時となるのだ あの、蠢く大きな灼熱の嘘に

          悪い夢I

          地獄の隅をモンシロチョウが舞う 剥がれ落ちた虚栄の粒は 二度と帰らぬ鱗粉となる 深緑の表層は裸の真珠に呑まれ 形骸化した蹄が風のリボンを踏みしだく この地獄を眼前にして 清澄たる翅は異国の波となるという (オレンジ色の無人島) めくるめくエントロピーの砂塵に 安らかに身を委ねて 液体金属の脆い母性は 永劫の音を奏で溶けてゆく もう大丈夫… 安堵は翅を毟り去る

          悪い夢I

          招待状

          紳士淑女をなお超えて 美麗の微笑む皆様方へ さあ倦怠した虚像に何を託そう 細胞活動をつぶさに成し遂げるべく 流動する柱を再構築する世界 或いは今ここに託すべきかもしれぬ 豪奢なシルクをふんだんに重ねて ウールやコットンをしとど纏い 潰えぬ星屑のごと静脈を靡かせ 午後の香気立つ川辺に 鴨や白馬のランデヴーを 時の懸濁と凝集に耳を傾け 波打つ紅茶に言の葉を燻らす 嗚呼 夜会服と薔薇の拳銃! 狂騒の日々は鐘を撞き 麻痺は俺たちのうたた寝を蝕む 電子の瀑布に舞踏を鞭打ち た

          招待状

          沈丁花

          銀の触手は永遠となり 或いは冷たい月となり 今宵も踊る 心臓のワルツ 赤らんだ君の頬は すっかり夜の水に透けて 恐怖と恍惚を押し流してゆく おお、この瞬間こそ生であると 琥珀は蟲を閉じ込めた ツイード生地の鱗粉を 薔薇色の裸に散りばめて 俺の記憶じゃ間違いなく あの夜は沈丁花が咲いていた 螺鈿のリードじゃ鳴らないはずの 永遠の蠢きを俺は見た やがて無慈悲にあっけなく 世界は夜明けの手を引いて 俺は賀茂川を 君は高野川を 無意識に遡り寝床を探す 触れ得ぬ林檎を抱きしめ

          沈丁花

          顕微鏡

          それはまるで溶けだした柑橘類のように 濡れたうなじを舌で拭う しどけない死の匂い 一方俺は墨汁の香りをコトコトと楽しみながら 薄暗い花屋の奥で無意識を抱き寄せる あんたも罪だねえ 乾杯 また乾杯 それから並んでリボンを毟る 一粒一粒、ささくれた汁を撒き散らして 撓んだ顕微鏡の中で すべてが小さく焦げてゆく

          時の皺

          砂と煙に呑まれて 拾えぬ記憶が一つ 何事もなかったかのように 踊る水の精は 私の瞳をじっと見つめる あの日の言葉が 川からこぼれる 水草に絡むあぶくは 僕の心にも…… くすんだ筆跡と 雪解け水の光沢 どこにも存在しない心は 影を伸ばすたび 気まぐれな記憶の住人となる あの日の言葉が 川からこぼれる ベルベットの時の皴を 握り崩して……

          時の皺

          ナーズローに捧ぐ

          埒を開けよう! 純白の血気を失うことなく 秋空を奔走する可憐な毛糸 嗚呼、悲しき星の定めか 鈍色の人間たちは彼女を嗅ぎ分ける 散逸するルビーの潮風は 誰よりも遠くに届くのだから ナーズローの温もりは 物質の夢を夜に捨て ただ一輪の睡蓮に 已むを得ん、日記を閉じよう 生活を さあ生活を 月光を破り、睡蓮はやはり咲く 悪意の偶数の泥沼に 震えるリネンの花弁を伸ばし それでもお前を抱きしめる なあ、真珠を 盗まないか? 何の苦も無く転がさないか? 醜い鷲鼻が虫のように囁く

          ナーズローに捧ぐ

          現代讃美歌

          日本社会はEDである 見給え不能な若人たちを プラトニックな恋人たちの 疲弊に潰れし魂を 「今どきの若者は」 カカカカカ! 嗚呼古今東西 ユビキタス これこそ我らが定めですぞ 効率簡便単純を 醜悪矛盾複雑性は 一切合切認めません あいつはとうとうEDに それが最もブクブクと 社会の林檎を肥やすから SNS映え 人工バズり 理想の貴方の大量生産 インターネットに間引かれて あいつはとうとうEDに 肉体捨てて歯車に ヘカトンケイルは死の行進 労働 税金 また労働 成長のため

          現代讃美歌