(10)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟―「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~当たり前の娯楽編~
さて、ここまで思いのままに綴ってきましたが、ひとつ誤解のないようにお伝えしたいことがあります。
〈子は思い通りに育たないけど、環境を用意するのは親〉
私は自分の子どもに対して「本好きになる可能性の高い環境」を提供していますし、そういうお勧めの文章を書いてきました。
けれど子どもは思い通りには育ちませんし、また、「親の思い通り」に育ってはいけないものだと考えます(健康な子に・・・というような〝願い〟はまた別)。
だから我が子も将来どんな人間になるかは未知数ですし、どんな道を選んでも(人の道に反していない限り)見守り、サポートしていきたいと考え・・・られるような親でありたい・・・そう努力したいと思っています。
けれど読書習慣を身につけることは、プラスにこそなれマイナスにはならないーこれだけは確信しています。
いずれにしても令和の世を生きる子ども達はこの先、友達とゲームを楽しみ、そのうちスマホを持ってSNSやインターネットを当たり前に活用していくでしょう。
特に小学校高学年にもなれば、習い事や塾や部活、音楽やファッションや芸能人の話題や友達づきあいなどで、あっという間に一日が終わってしまうことと思います。
我が家の長女も毎日忙しく、本だけを読んでいるわけにはいかない様子です。ゲームも好きですし、「こんな動画がおもしろいんだって」という情報も、日々仕入れて帰ってきます。
それでも「物語(小説)を一冊読み切るチカラ(読書の筋力)」と「本を読んでおもしろいと感じる心」は本人の財産。
きっと人生のあらゆる場面で読書を楽しんでくれると思います。
「いろいろ好き」で、「本も好き」になってくれたらそれでいいのです。
・・・と、ここまで書いてみて突然気付いたことがあります。
長女が小学3年生くらいの時に確信したのですが、彼女の思考回路は完全に理系。
小さな頃から飲食店に行くとメニュー表の「品数や価格」に興味を抱き、クロスワードよりもナンプレ、ディズニー映画よりも囲碁将棋などのルールブックを見ている時のほうがイキイキとしています。
たぶん、図書館通いをして本棚のある生活を意識的にしなければ、長女は「小説を読む子」「文章を読んで感動する子」に(すんなりとは)ならなかったのでは・・・ないでしょうか。
環境づくりをしてよかった・・・と思います。
〈本が「一番好き」じゃなくていい、「普通に好き」でいい〉
ちなみに2年生の次女は、「一番好きなのは工作と、走ることで、本はその次くらい」と言います。今の将来の夢は陸上選手です。
確かに常に何かを描いたり作ったり体を動かしていますが、読書の筋力は既についていて、好きなジャンル・傾向もはっきりしているので、私が「はい、新刊出てたよ」とお気に入りのシリーズを渡すと喜びますし、読み始めると一定の集中力を発揮して最後まで読み切ります。
そうしてポイっとその辺に置き、「(主人公の)〇〇ちゃん、お友達と仲直りしたよ」などと報告してくれた後でまた、工作を始める…といった具合です。
本の虫じゃなくていい。読むときは読む、という筋力さえあればいいと思います。
〈「少数派」も「インテリ」も関係ない、当たり前の娯楽として〉
私は、子どもの頃によく本を読んでいて、周囲から「変わってるね」と言われたことが何度かあります。
特にいじめとか、そういうわけでもなく、今考えると本が好きじゃない子から見れば、「それの何がおもしろいの?」という素朴な疑問をぶつけられたのだという気がします。
子ども心に疑問でした。本を読む以外の変わった行動は特にしていない(つもり)なのに、スポーツや芸能人が好きな子たちと比べて、私は変わっているのか…と。
けれど、「少数派」だったことは感じていました。
また、「本をよく読む人はそもそも頭がいいのだ」という意見もあるかと思います。
けれど、成績優秀でも小説に興味がない人はたくさんいます。
私は、「少数派としての読書」でも、「変わり者としての読書」でも、「インテリとしての読書」でも、「特別な行為としての読書」でもなく、「誰にとっても気軽な娯楽としての読書」…を、たくさんの人が体験してくれたらいいな…と、心の底から願っています。
だって、本はとてもとても、おもしろいからです!
おもしろい本を読み終わったときの、体の隅々までいきわたるような充実感と幸福感を、たくさんの人に味わってほしいのです。
〈パパ、ママも「読む姿」を日常的に〉
話が少し戻るのですが、「子どもが本好きになる環境」で書いた「親(身近な大人)が日常的に本を読んでいること」についてお話します。
読む習慣のあまりないパパ、ママさんが、子どもと本選びをするうちに「自分も読んでみようかな・・・」と思えたらベストなのですが、そうならなくても、まず簡単にできることがあります。
それは「子どもが見ている前でスマホなどに夢中にならない」ということ。
必要な情報収集や連絡以外は、少なくとも子どもが本を読んでいる前で、「大人にはもっと楽しいことがある」と無言でアピールするのはお勧めできません。
子どもは鋭いです。敏感です。
それよりも、料理の本や好きなタレントのエッセイ、写真集や趣味の雑誌でもいいので、「本」という物を身近に置いてみてください。
分厚い小説を読む必要はないんです。
大切なのは、本という物。
ふと気分転換したい時、いつもならついスマホを手にする瞬間に、用意した本を読んでみていただけたらと思います。
そして、その姿をさりげなく子どもに見せるのもひとつの方法(決して嘘をついたり過剰な演技をする必要はありません)。
大切なのは子どもが「ママ(パパ)も本を読むんだ」と思うことです。
ママ(パパ)用の小さな本棚を作って、子ども用本棚の隣に並べたり、スペースがあれば同じ本棚に子ども用も大人用も並べたっていいと思います(内容次第ですが・・・)。
「両親ともに本をまったく読まない」…となると厳しく、どちらかの親が本好き、というだけでも全然違うと思います。
読書に限らずですが、親と子がまったく別の方向を向いている場合、子どもの興味を持続させるのは難しい…かもしれません。
なぜなら子どもは親が大好きで、最も影響を受ける(受けて幸せな)相手は親だからです。
もしどうしても「自分が読む」のが難しいという場合は、せめて「本好きなんだね。ママ(パパ)は全然好きじゃないけど・・・」というような言葉は心の中だけで呟いていただけたらな・・・と思います。
どうでしょうか?
少しでも、気に留めておいていただけたら嬉しいです。
つづきます。
―が、図書館・書店編はいったん終了、次から2回ほど長女の「ハリポタ読破編」をおくります。