(9)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟―「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~子どもの自我編~
子どもが本好きになるには、図書館や書店が「行ったら楽しい場所」である必要があります。
子ども時代にこういうイメージを持っていないと、どんどん足が遠のいてしまい、成長してからそれを覆すのは至難の業…になってしまうのです。
そこで…。
〈「好きな本を選んでいい」という約束を守ることの大切さ〉
子どもと一緒に書店に行ったら「好きなものを選んでいいよ」という親の言葉をできる限り守ってあげてほしいと思います。
これ、図書館だと無料なのであまり気にしないと思いますが、買うとなると、親も「お金を払う価値のあるものかどうか」考えてしまいますよね?
―いやいや、ちゃんと守ってるよ…という方も多いと思いますし、それならいいのですが、私は何度か失敗しています。
例えば、書店で見かけるこんな親子がいます(我が家の失敗談ということでもいいです)。
子「決まった。これにする!」
親「え~? もっとこういうのにしない?」
…とドリルっぽい本、できるだけ文字の多い本を勧める。
子ども「・・・じゃあこれにする・・・」(明らかにがっかりした表情)。
―心当たりのある方、いらっしゃいますか?
―この現象はなぜ起こるのでしょう。
もしもこれがオモチャ屋さんだったら、もしくはゲームソフト選びだったらどうでしょう。
親は「もっとためになりそうなものを選びなさい」と言うでしょうか・・・たぶんノーですよね。
オモチャやゲームははじめから「娯楽」と認識しているからだと思います。
それに対して、本はどうでしょう。
本は少なからず「賢くなるもの」という期待があるので、子どもが「1ミリも勉強っぽくない本」を選んでくると、親は期待はずれと感じがち。
もしかしたら子どもは、ワクワクしながら選んだ本を否定されてガッカリするかもしれません。そうなるともう、子どものなかでは「本屋=楽しい所」ではなくなってしまいます。
私は、(反省も込めて)本を子どもにとって大いなる娯楽にしてあげたいと願っています。
少しくらい「あれ?」という本を選んできても「それがいいんだね」と認めてあげたいと思うのです(絶対的に不適切なものはダメです。だから、内容はちゃんと見てあげてください。そしてダメな場合、理由をちゃんと伝えてあげてください)。
勉強に役立つ本を買う場合ははじめから「そういう約束」で書店に出向くのがいいでしょう。
〈「超意外」な本を選んだ長女にもちゃんと理由がある〉
ここで我が家の体験談をひとつ。
長女が3年生位の時、大型書店へ行き「好きな本を一冊選んでいいよ」と言いました。
当時はクイズやナゾトレ本にハマっていたので、そうしたジャンルの本を選ぶとばかり思っていた私は、長女が悩んだ末に「これがいい!」と持ってきた本を見て、あ然。
それは数十体の幻獣同士が繰り返しバトルをする内容で、特長や戦力(といっても幻獣なので架空のデータ)を細かく分析し、勝敗を次ページで発表するという本。
「え、これ!?」と固まってしまいました。
けっこうな高値ですし、今時こういうことを言ってはいけないと思いつつ、「女の子なのに…こういうのが好きなの?」と聞いてしまいました。
我が家ではなにも物語や小説だけを推奨しているわけではなく、〇〇の不思議…とか、おもしろい動物の研究本とか、比較的文章もあるコミックエッセイなど、わりと多彩な本を買ってきたつもりなのですが、これにはびっくり。
それでも頑張って「どうしてこの本がいいの?」と聞くと、「クラスの子がこの本を持ってて、少しだけ読ませてもらったら、続きが気になった」ことと、「データを分析して予想するのがおもしろい」という返答。
はい、ちゃんと理由があるのです。
迷いましたが結局買うことにしました。内容が悪いのではなく、この子は本当にこれをおもしろいと思えるのか? 気まぐれではないのか? と危惧していたのですが、私が間違っていたことがすぐにわかります。
帰宅後さっそく長女は妹と部屋でその本を読みふけり、たっぷり2時間、2人でキャアキャア、ワアワア、「やったぁ!」「やっぱり!」などと盛り上がっていたのです。
部屋から出てきた長女に「おもしろい本を選べてよかったね」と言うと、「そうでしょ? 買ってくれてありがとう!」と頬を紅潮させていました。
この経験から私は「賢くなるために本を読む」のは大人の発想なのだと再認識したのです。…いや、わかってはいたんですけどね。
子どもの読書の筋力、文章を読む力を鍛えたい…と考えている私ではありますが、やっぱりいちばん大切というか、そのベースとなるのは子ども自身が「本屋は楽しい場所」「行ったら好きな本を選べる場所」と思うこと。
いろいろさじ加減をしながら、子どもと一緒に本選びを楽しんでいこうと思ったのでした。
〈大きくて立派な子どもの自我を見つめて〉
「今やろうと思ったのに、ママ(パパ)に言われたからやる気がなくなった!」・・・という言葉、子育てあるあるですよね。
「自主性を育む」って、言葉で言うほど簡単ではないですし、特にもともと自我の強い子どもに何かを勧めるのはなかなか難しいなと感じます。
その一例として、我が家の次女の話を少々・・・。
のんびり屋の長女とは個性が違い、小学2年生の次女は自我のかたまり。
やる気を起こせば何ごとにも積極的に取り組みますが、先回りして何か言うと「ママにいわれたくないの!」と恐ろしく反抗します。
そこでまた私が対応を間違って何か言うと、顔を真っ赤にし、ふんぞり返って足をバタバタするので、思わず笑ってしまう(笑うしかない)のですが・・・。
こういう子どもに何かを習得してもらおうと思ったら、環境を用意して、後は見守ることが大切だと思います(たぶん)。
ある時次女が学校から借りてきた本がおもしろそうなので私も読んでみました。
ちょっとホラーな内容の短編集で、不慮の死を遂げた子どもの魂や、大切な人の生まれ変わりを信じる人達が登場し、読み応えがあったので「おもしろいね」と言うと次女は
「私、本選ぶのじょうずでしょう?」
―と目をキラキラさせました。そして前のめりに「この話もいいんだよ」・・と一生懸命説明する様子が、なんとも誇らしそう。
子どもが選んだ本に興味を示すこと、おもしろい部分に共感を示すこと。
たぶんこういうことなんだな・・・と手応えを感じました。
ちなみに先日、次女がハリー・ポッターを手に頑張って読もうとしていたので、思わず「それ読むの?いいね~」とニコニコして近づいたら、「イヤ!」と逃げられてしまいました。
長女が熱心に読んでいたのを見て、「おもしろいのかな…」と興味を持ったのでしょうが、放っておいてほしかったようです。
親にアドバイスされたくないのでしょう(子どもによりますけどね)。
いずれにせよ、これは失敗しました。
今度手にしているのを見たら、いっさい話しかけないようにしようと思います…。
つづきます。