(30)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~
お手紙、つづきです。
「家にある本で、デジタル漬けになる前に『読む』習慣を」
・・・というお話をしています。
低学年までは動画やゲームがなくても家で楽しく過ごせます。
「みんな見てる」「そういう時代」は少し横においといて・・・
読む楽しみとすんなり出会える時期を大切にしたいなと思います。
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(29)5歳頃から〝積読本〟と暮らすことが「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
今日は
「図書館で暮らしてみたいな、子と何日か」
・・・というお話です。
さて、シオリさん。
今日はちょっと、想像・・・いえ、妄想に近いお話をします。
私としては真剣なのですが、世の中からすれば妄想に近いと言われそうなので、笑って読んでいただけたら嬉しいです。
――私は時々、思います。
「図書館で暮らしてみたいな・・・子ども達と何日か」――と。
子ども達というのは、我が家の子どものことだけではありません。
それは例えば、近所の子ども達でも、学校のお友達でもいいのですが、
とりわけ思うのは、「ゲームや動画視聴、スマホなどデジタル依存・中毒で苦しんでいる・・・かもしれない、子ども達」です。
暮らしてみるというのは、簡単に言えば
「図書館で何日か暮らしてみたら、本のおもしろさを体験できるかもしれない・・・いや、できるに違いない」という合宿のようなものですね。
子ども時代に、「本を読んだらおもしろかった」という体験を積むことは、生きるうえで娯楽や学びの土台になると私は信じています。
そういう体験を積んだうえで、それからデジタルを習得しても、なんら遅いとは思いません。
でも今の社会は、「本を読んだらおもしろかった」という経験をしないまま成長していく人も多いですよね。
いえ、そのことが悪いとか、本を読む人が偉いとかーーそういうことではまったくないのです。
――ただ、そうは言ってもシオリさんのように「子どもを本好きにさせたい」と願う親が多いのは事実ですし、習慣的な読書で子どものいろんなチカラが育まれたり、情緒の安定につながるのは確かだと思います。
また、今の社会でリアルな子育てをしているパパ、ママにとってハードルが高いのは、「いざ子どもに読書を勧めようとしても、既にゲームや動画、スマホに夢中になってしまって、とりつく島もない・・・」という状況があることだと思います。
ーーじつは私も、こういう記事を書いておきながら、たまに友達から言われて悩むことがあります。
「ねえ、あなたの提案は『デジタル依存になる前の子どもに、先に本を好きになってもらう方法』だよね? それはわかるんだけど、既にゲームやスマホにハマっている子どもを持つ親は、どうすればいいの?」――と。
これは痛い質問で、本当にその通りなんです。
教育者でも研究者でもない私は、そのことにいつも悩みます。
――が、それに関して思っていることをお話すると長くなるのでまた違う機会に譲るとして、ただひとつだけ、言えることがあるんです。
それは、人は何歳からでも、
「本を読んだら、おもしろかった・・・」
という経験をすれば、まっさらな自分自身の心でそれを味わえば、本好きになるんだということです。
(ただ、熱が冷めないうちに「次の一冊」を選ぶためのガイド ー友人とか情報とか― が必須だったりはします)
けれど、今の子どもは何かと忙しいですし、既にデジタル機器で時間つぶしや気分転換の方法を持つ子が、「今日は本でも読んでみようかな」と自分の意思で興味を転換することが・・・現実としてあるでしょうか?
読み始めても2~3ページで「イマイチ」と感じれば、本を手放すのは簡単です。「その先がおもしろいのに・・・」と言っても、それではおとなの強制になってしまいます。
――そこで、私の妄想、
「図書館で暮らしてみたいな子と何日か ーー図書館合宿――」
のお話です(前向きが長くてすみません)。
私が考える図書館合宿は、たとえばこうです。
小中学生を中心に希望者を募り、できれば大きめの図書館を借り切り、
3日くらいみんなで「暮らし」ます(個人的には5日~1週間くらいでもいいと思っています)。
図書館や自治体やなんらかの運営団体の協力がなければ難しそうですが、あくまで妄想ですので・・・。
デジタル機器はもちろん、持って入れません(緊急時は除く)。
安全のため、一緒に過ごすおとなはきちんと数名いますが、先生でもコーチでもなく、読書の強制はしません。本についていろいろ教えてくれる司書さんは、いるのがベストでしょう。
1日3食(おやつも)きちんと食べますし、近隣の施設を利用したりしてお風呂にも入ります。日中はほぼ自由時間で、集まった子ども同士、カードゲームやトランプ、将棋やボードゲームなどの遊びをしてもいいですし、鬼ごっこなどをして多少騒いでも・・・いいことにします。
読書の強制はしない。デジタル機器を使わずに、みんなで工夫しながら楽しく過ごす。ずっと遊んでいても構わない・・・そういう生活です。
――図書館合宿なのだから、読書ガイドの時間や、「とにかく何か読んでみよう!」という時間があってもいいとは思いますし、そこは企画者(いるとしたら)の考え方次第と言えますが、もし私が企画者なら、半強制的に読書をさせる時間は設けないと思います。
この図書館合宿の目的は、主に2つ。
(1)「スマホや(デジタルの)ゲームがなくても楽しく過ごせる」ことの体験。
(2)「暇を感じたら、目の前の大量の本から自分で1冊を選んでみる」ことの体験。
本は素晴らしい。スマホばかりやらないで・・・。
周囲からどんなに建設的な助言を得ても、実際にそういう状況になってみなければ、人は実感できないものですよね。
そこで(2)ですが、図書館で数日(早ければ1日)を過ごすうち、
子ども達は必ず「暇」を感じるはずです。
カードゲームや鬼ごっこ(?)などにも限界があるでしょう。
電子機器もテレビもありません(原則、館内のパソコンなども使わないことにするとします)。
――すると、
本しかないわけです。
本なら、一生かけても読み切れないほどの冊数があるはずです(児童書だけでも)。
本好きなら喜ぶでしょうが、そうでない子には最初は苦痛かもしれませんよね(だからこそ、親子で納得して申し込む必要がありますし、強制はしないというのが原則です)。
けれど、時間をかけて館内を見渡して、表紙やタイトルが気になった本を1冊2冊手に取って、ページをめくってみたとします。
学校の図書室や、メディアで見かけたことのあるタイトルくらいはあるでしょう。
読んでみて、イマイチだな・・・と思っても、どうせ読書以外にすることはありません。
とりあえず10ぺ―ジでも読んでみると、意外な展開があり、その先も読めるかもしれません。
また、別の本にしたとして、主人公の設定が気になり、こちらは意外とおもしろく読めるかもしれません。
なんと言っても、ほかにすることがないのです。
私は、人間は暇を感じて、目の前に本があれば、本を読む生き物だ・・・と信じています(だからこその〝積読本提案〟をしています)。
私は、現代の子ども達があまり本を読まないのは、本がおもしろくないからではなく、「ほかにすることがたくさんあるから」・・・が主な要因だと思っています。
中学受験をする子は高学年にもなれば勉強に忙しいでしょうし、人によっては部活、友達づきあい、SNS、次々と更新されるネットの情報収集、ラインの返信・・・などなどで、毎日時間に追われていると思います。
そういう生活が確立されたなかで、
「何百ページもの本をじっくり読んでみる」
「自分に合った1冊を見つける」
という体験がすんなりできるとは・・・やっぱり思えないんですよね。
もし私が現代の子どもで、読書に触れる機会がないまま育ったら、
それが実感だと思うんです。
――だからこその、図書館合宿です。
もし、数日間こういうものに参加すると決まったら、友人や関係各所(?)に、「そういうわけなので数日間連絡取れません」と伝えたり、
「この期間は勉強はストップ」とか、前後で調整したりできますよね。
そうすれば「ラインを返さなきゃ!」と慌てることもないですし、もう、読書くらいしかすることがないのだと・・・諦めることもできるでしょう。
考えようによっては、人生で読書に没頭できる絶好の数日間ですから、
なんてぜいたくな時間だろう! と私は思ってしまうのですが・・・。
ただ、もし本当にこういう企画があって、周囲のおとなに半強制的に参加させられたら、子どもはどう思うでしょうか?
きっと、嫌ですよね。
だから、子ども自身が納得して参加する必要があるのは大前提なんですが、私は
子どもって「なんだかんだ言って、目の前にある限られたもので、工夫して遊べちゃうすごい生き物」
・・・だと思うんです。
それに、本ってやっぱりすごくおもしろいんですよね。
うまくハマれば・・・本当に寝食を忘れるくらいの「夢中」を、読書はプレゼントしてくれるーーそのくらい可能性のあるものです。
これは、デジタル機器をいっさい使わないサマーキャンプのような企画と似ているかもしれませんね。
たとえば最初は「え~スマホ没収?」みたいに不満げだった子ども達も、自然に囲まれながらみんなでご飯をつくって、体を使った遊びを楽しんで、移り変わる景色や空気を味わって・・・いるうちに、「キャンプってこんなに楽しんだ!」と実感したりしますよね。
それは、
「新しくて珍しいことを教えこまれた」のではなく、
子ども自身が
「今までも当たり前にあった自然の素晴らしさを体感した」
ということだと思います。
・・・図書館合宿は、その読書バージョンです(イメージ)。
デジタル機器がなくても、楽しく時間を過ごす手段はあるんだということを・・・読書をその選択肢として体感してもらえたらと思います。
さて、とはいえ(私が妄想する)図書館合宿では、読書の強制はしません。
辛くなれば途中でリタイアしてもいいですし、図書館の敷地内で外の空気を吸ってもいいと思います。
なので「結局3日間、本をあまり読まずに過ごした」
「読んだけど、この1冊・・・というほどの本には出合わなかった」という子もいることでしょう。
それでも全然かまいません。
――ですが何人かは、いると思うんです。
「え~もう終わり? もう少しここにいてもいい? ――じゃあ、
この本借りていくね」
「この本、前から気になってたけど、図書室から借りようか迷ってて・・・読んだらすごくおもしろかった!」
・・・という感想を抱く子が。
もしそうなったら、その子の人生で
「(自分で選んで)本を読んだらおもしろかった」という体験ができたことになります。
これは、
子どもにとって大きな成果だと思います。
・・・もちろん、この図書館合宿は荒唐無稽な想像です。
実現するにはあらゆる意味でハードルが高そうだとわかっています。
それでも、やってみたらどうなるんだろう? ・・・と想像するだけでワクワクしてしまいます。
ーーきっと、私がいちばん参加したいんでしょうね。
我が家の娘達にこの企画の話をしたら、2人とも
「楽しそう! 行きた~い」と言ってくれました。
嬉しいのですが、「楽しそう! 行きた~い」と言う子にはあまり必要がなくて、「なにそれ行きたくない・・・」と言う子に参加してほしい企画なので、そもそもハードルが高そうですね。
それでも私は思います。
強制されるのはつまらない。
自分で見つけることほど、楽しいものはない。
ただ、どうしたって自分で見つける環境にない場合もある。
それが子どもの場合は・・・おとなが何か考えてあげなきゃならない。
ーーあぁ、それにしても、図書館合宿に参加して、読み逃しているあの本もこの本も、家事を忘れて読み耽りたい私です・・・。
お手紙、つづきます。
〈図書館で子らと数日暮らしたい 「本しかないの?」「世界があるの」〉
・お手紙(31)はこちらからどうぞ。
(31)5歳頃から〝積読本〟と暮らすことが「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
・お手紙(1)はこちらからどうぞ。
(1)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)