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すべらないバナナくん

ついさいきんの話、自信いっぱいのバナナくんがいました。
バナナくんの特技は、周りの人をつるっとすべらせることです。

「ぼくが通るところではみんながすべって転んじゃうんだ。
でもぼくは絶対にすべらないよ!」
バナナくんは得意げに言いました。

ある日、バナナくんは決意しました。
「そうだ!ぼくの特技を活かして、お笑い芸人になろう!」

お笑い学校で練習を重ねるバナナくん。
どんな難しいネタでも、完璧にこなします。

「やっぱりぼくは天才だな!」
自信満々で本番の日を迎えました。

ついに初舞台! バナナくんは堂々と舞台に上がりました。

「みなさーん!これからバナナくんの『つるっとお笑い』ショーを始めまーす!」

予定通り、完璧な演技。
一つも間違えることなく、見事なステージでした。

でも... 観客からは、小さな拍手しか聞こえません。

「えっ?おかしいな... ぼくは全然滑ってないのに...」

その夜、バナナくんは考えました。
「結局、ぼくも滑っちゃったんだ... お笑い芸人として...」

次の朝、バナナくんは決心しました。
「もしかしたら、ぼくには 別のやりかたがあるのかもしれない」

そして、八百屋さんのかごに 自分からそっと入りました。

「おはよう!」
元気な女の子が、バナナくんを見つけました。

「お母さん!このバナナ、買って! なんだかニコニコしてるみたい!」

その日の朝ごはん。
女の子はバナナくんをむきました。

「わあ、このバナナ、むきやすいね! 皮がつるつるしてる!」

「ふふふ」
バナナくんは心の中で笑いました。

皮がつるつるなのは、 最後まで誇り高いバナナくんらしさ。
でも今は、女の子の朝ごはんになれることが
なによりうれしかったのです。

それは、舞台での拍手より
ずっとずっと幸せな気持ちでした。

めでたし、めでたし。

おしまい


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