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ひたちなか海浜鉄道阿字ヶ浦駅【前編】

「ローカル私鉄」には、JRのローカル線とはまた違った風情が感じられる。
愛惜というべきか、思いきって悲哀と表現したほうがふさわしいだろうか。
どことなく、芭蕉の句に込められた「しほり」の気配に近いものを纏っているようにすら、思えてくる。
もしかしたら、必要以上に大きなものを背負っていない、「かるみ」の中に生きているのかもしれない。違うか。

ひたちなか海浜鉄道湊線は、JR常磐線勝田駅を起点に、おさかな市場で有名な那珂湊駅を経由して終点の阿字ヶ浦駅までを結ぶ、全長14.3kmの短い鉄路である。
茨城交通湊線だった時代には、夏の海水浴シーズンに合わせて、上野駅から臨時急行「あじがうら」号が乗り入れるほどの観光路線だったらしいが、1990年代の半ばころから乗降客がみるみる減り続け、2008年には第三セクター化されて、社名も現行のものに。近年は関係者の頑張りが奏功し、利用者数は着実に回復中。

阿字ヶ浦駅構内には、かつて同鉄道で走行していたディーゼルカーが2両、仲良く留置されている。

気のせいか、接吻しているように見えます…
古いレールで作られた鳥居

この薄いクリーム色と紺色で塗り分けられた車両は、何と、

2015年2月22日をもって営業運転を終了し、検査期限切れにより休車扱いとなっていたが、その後正式に同年限りで引退となった。その後は阿字ヶ浦駅に留置され、車体の腐食が進んでいたが、クラウドファンディングによる資金調達に成功し、塗装などを修繕、2021年にひたちなか開運鐡道神社の御神体として祀られることとなった。鉄道車両の御神体は世界初。

Wikipediaより

だそうである。
「世界初」って、そりゃあ、日本人のほかに誰も考えつかないだろー。
形式番号が「キハ222」のため、「キハニニニ命」の祭神名が与えられたとのこと。
ならば、相方の立場はいったいどうなるのか?との疑問も浮かぶ…。

ご神体になれなかった君よ
終着駅の行き止まり

終着駅には、これまた一段と風情…いや、寂しさが漂っている。何しろこの先はどこにもレールが通じていない。デッドエンド。
ただし、ひたちなか海浜鉄道には、驚くべき秘策があった。
ここ阿字ヶ浦駅からさらに線路を延長して、国営ひたち海浜公園付近まで列車を走らせようというのだ。国土交通省による事業認可済みで、2030年に開業予定という。廃線危機から打って変わっての反転攻勢。
とはいえ、ご覧のとおり、現在の阿字ヶ浦駅は静かなまま。

ホームに列車が入ってきた。
派手なデザインでラッピングされた、比較的新しめなディーゼルカーだ。
色使いからして、てっきり理容店の広告なのかと思ったら、地元の「イソザキ自動車」という会社がスポンサーらしい。

駅名板、洒落てますね!
(知らない人は読めなさそうだけど)
しばらく停車したのち、勝田駅へ向け出発


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