【イタリアで最も美しい村】スペッロを訪ねて
スペッロはウンブリア州ペルージャ県にある、イタリアで最も美しい村と
名付けられたコムーネの⼀つ。
ドライブの途中、スバシオ⼭の麓に突如現れる村の姿に、思わず歓声があが
ります。
旧市街へと向かうと、⽴派な古い⾨が・・・
紀元前1世紀頃のローマ時代のコンソラーレ⾨が出迎えてくれます。
横に⽴つ塔は中世期のもの。そして、3体の彫刻は16世紀に取り付けられた
ものだろうとのこと。スペッロの歴史が凝縮されたような⾨に、村への期待
も膨らみます。
花祭りの村にふさわしく、どんな⼩路にも緑や花で溢れていて、⼈⼝8500人
ほどの⼩さな村にも関わらず、⽣活の質というか、住⺠の精神的な豊かさみ
たいなものを散策しながらヒシヒシと感じます。
坂道がきつい所もあるので、暑い時には汗だく・・・
でもその坂を上り切った後、ふと振り返ると広がる
ウンブリアの緑に癒されます。
とてもフォトジェニックな村なので(住⺠もよく⼼得ているでしょうし)
こんな⾵に、観光客のカメラに収めてもらうために、そこに駐⾞してあるか
のような光景にも出会えます(笑)はい、もちろん写真を撮りました♪
⾞窓からも⾒えていた、サンタ・マリア・マッジョーレ教会の鐘楼に到着し
た頃、雲⾏きが怪しくなってきたので、教会内で少し時間をつぶすことに。
1025年に建設された教会を、1285年に再築してロマネスク様式に
したようです。
内部はバロック様式になっていましたが、ここの⾒どころはズバリ︕
バリオーニ礼拝堂に残るピントゥリッキオの美しいフレスコ画でしょう︕
その側廊の礼拝堂にだけガラスの扉がつけられ、2ユーロを払って
明かりを点けたら、もう⾄福の時間です。
礼拝堂の床にはウンブリア州デルータ産の16世紀マヨルカ陶器が
敷き詰められ、壁の三⽅をピントゥリッキオの素晴らしいフレスコ画で
飾られた⼩さな空間にしばし⾝を置く幸せに浸る・・・
今までにも何度か「受胎告知」の絵を⾒てきましたが、
こんなに洗練されたのを⾒るのは初めてかもしれません。柱に掘られた彫刻
等の細部まで丁寧に描かれ、どこをとっても完ぺきな遠近法なのに、
固くなく、あくまで優美な空間を表現しています。
また絶妙な⾊合いが洗練度を⾼めている感じがしました。柱廊の奥に⾒える
当時のスペッロも非常に美しく描かれています。
うつむく姿のマリアに⾒とれながら、ふと視線をずらすと・・・
注⽂主のバリオーニの肖像画かと思いきや、よく⾒るとベルナルディーノの
名前が!
実はピントゥリッキオというのは「⼩さな絵描き」という意味で、
彼の本名はベルナルディーノ・ディ・ベットというのですが、
なんと画家は⾃画像を受胎告知の中に描きこんでいたのです︕
この時代はまだ作品に「サイン」という習慣がなかったのもあると
思いますが、画家がこうして画中に表れるというのは、
画家としての⾃信もあるでしょうし、また依頼主との信頼関係なんかも
深かったのかなと思わせます。
ピントゥリッキオといえば、真っ先に思い出すのがシエナ⼤聖堂の
左⾝廊にあるピッコローミニ図書館の鮮やかなフレスコ画。
あそこにも確かピントゥリッキオの⾃画像が描きこまれていたような・・・
なぜかピントゥリッキオがとても気になる今日この頃です。