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映画感想『八犬伝』

noteでフォローさせていただいる方には映画通が多くて、評論家のような記事をふむふむ、なるほど、と興味深く読ませていただいている。しかしながら私はあまり映像作品を頻繁には見ない。基本、映像よりも活字なんだと思う。

私が映画やテレビドラマを見ようとする基準は実に単純で、
1. 好きな俳優が出ている
2. 原作が好き
主にその二点。暇つぶしに見るプライムビデオは別として、タイムリーに見るのならやはり上の法則に従ってしまう。

さて、ある年代から上の人はご存知だと思うが、子どもの頃NHKで放送されていた人形劇『新・八犬伝』に夢中になっていた。その当時担任の先生も好きだったことも手伝いクラスではその話題でもちきりだった。それが高じてまずは児童書を読み、次いで現代訳などを読んでいった。

映像化もされていて薬師丸ひろ子主演の角川映画は正直がっかりだったが、2006年放送のタッキーのドラマは面白くて息子と二人で見入っていた。今回映像化にあたり毛野役が板垣理人くんだったので見る前から楽しみだった。毛野の役は女優さんが演じることが多く、角川映画では志穂美悦子さん、タッキー版では山田優さんで、なんというか…どうせなら女装しても絵になる美少年に演じてほしい!と兼ねがね思っていた。

今回良かったのは理人くん以外にも八犬士がそれぞれらしい配役だった。ただ申し訳ないのだけど理人くん以外の八犬士役の俳優さんを知らなかった。尤もそれらしかったのが犬田小文吾で、信乃役の俳優さんもカッコよかった!―渡邊圭祐さん、調べてみたら大河ドラマで頼通を演じてる人だったのですね。( ..)φメモメモ
反して伏姫と浜路のあでやかさがイマイチで残念。

この作品は入れ子式になっていて八犬伝の話は劇中劇、馬琴先生の創作日記が外の世界となっている。実の世界が不合理ゆえ虚(物語)の世界で勧善懲悪を貫いて希望を与えたい馬琴と、現実世界はむしろ虚で虚の世界にこそ実があると主張する鶴屋南北。この辺りがおそらくメインテーマなのでしょう。どちらが正しいとも言いきれない問題。

現実の世界では、馬琴の奥さん役の寺島しのぶさんが江戸のおかみさんそのものだった。夫の才能が理解できない平凡な妻、いつの時代もどこの国でも夫婦が本当に分かり合えることは…たぶんない。それから不愛想な嫁を演じた黒木華さんもよかった。お二人とも鉄板の演技力でした。

八犬伝の話は劇中劇のためかなり端折られて、というよりもダイジェストだったのが残念。個人的には馬琴先生のはなしよりもむしろ八犬伝そのものを大々的に取り上げてほしかった。放流閣の戦いとか関東合戦は大画面で見ると確かに迫力があってよかったので、是非全編上映してほしい。



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