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【毎週ショートショートnote】お題:「決闘年越しそば」(992文字)
とあるTV局で老舗と新進の蕎麦勝負の特番が組まれた
老舗蕎麦屋「鶴乃庵」と新進気鋭チェーン店の「亀そば亭」。年の瀬の蕎麦売上対決は、両店の店主と観客を熱狂させていた。
<勝負のルール>
12月31日9:00~24:00迄
どちらの「年越しそば」が何杯売れるか単純な勝負だ
老舗蕎麦屋「鶴乃庵」は地元の食材をふんだんに使用し、地域に根ざした蕎麦を提供する方法だ。勝負の噂を聞きつけた長年の常連客が長蛇を作った
新進気鋭チェーン店「亀そば亭」は、店をセルフ方式にして、天ぷらの具を豊富にし一大キャンペーンを張った。
<23:00時ー勝負終了の1時間前、老舗蕎麦屋「鶴乃庵」が100杯リードしていた>
これからの巻き返しは不可能かと思われたが、厳しい状況の中、「亀そば亭」の店主はニヤリとほくそ笑んだ。
ー想定内だ。奥の手を出すー
「亀そば亭」は流しそうめんを模した『温かい流し蕎麦』を神社仏閣で売り始めた。
年越しを待つ参拝客が、夜の寒さと物見珍しさで、竹から流れてくる熱い蕎麦をすする。全国で飛ぶように流し蕎麦が売れ、終盤で一気に巻き返し突き放したのだ。
<12月31日24:00となり、勝負が終わった。結果を発表するまでもなく「亀そば亭」の勝利は目に見えて明らかだった>
アナ「結果発表!新旧蕎麦屋対決の勝者は・・!!」
ー結果発表の最中に、老舗蕎麦屋「鶴乃庵」の年老いた店主が、慣れないスマホを手に取り審査委員に見せてきたー
審査員の表情が変わった
”ちょっと待ってください!画面のモニターに出して下さい”
<モニターに映ったのは外国で、数多くのアメリカ人が老舗蕎麦屋「鶴乃庵」の持ち帰り蕎麦をすすっているSNS動画だった>
「アメリカ合衆国は日付変更線で、まだ12月31日24:00になっていない地域です!勝負は終わっていません!」
「どんどん増えて画面を覆い尽くしていきます!さすが老舗の「鶴乃庵」です、ファンは全世界にいたのです!」
「まさか・・そんな手があったのか」新進気鋭チェーン店「亀そば亭」の店主は負けを確信し膝から崩れ落ちた。
すると、老舗蕎麦屋「鶴乃庵」の店主が駆け付けて、「亀そば亭」の店主を抱き起した。「亀そば亭が斬新なアイディアで蕎麦を広め、困難を乗り越えていく姿に感動しました。新旧共に蕎麦文化を守り、発展させましょう!」
年越し蕎麦の決闘は、どちらが勝ったのか。それは、視聴者への最大のサプライズとして、最後の最後まで明かされなかった。
本年度は、たらはかに(田原にか)さんの「毎週ショートショートnote」の企画に参加させていただき、ありがとうございました。
お世話になっているにも関わらず、私には事情があってメンバーシップ等に参加は出来ませんが、たらはかに(田原にか)さん及び毎週ショートショートの企画が今後とも益々発展する様、心からお祈り申し上げます
来年もよろしくお願いします。
ちょこっと解説
日付変更線
地球は丸く、東へ進むにつれて時間は進んでいきます。そのため、地球を一周すると、出発した時よりも1日時間が進んでいることになります。この時間の境目が「日付変更線」です。
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日付変更線とは?
日付変更線は、国際的に決められた仮想の線で、地球を南北にほぼ真っ二つに分けています。この線を越えると、日付が一日変わります。
<世界で最も早く新年を迎える場所>
日付変更線より東側、つまり太平洋の中央付近にある島々が、世界で最も早く新年を迎える場所です。代表的なのはキリバス共和国です。
キリバスは、33の環礁と1つの島からなる国で、日付変更線が国の中を横切っているため、島によって新年を迎える時間が異なります。
<世界で最も遅く新年を迎える場所>
日付変更線より西側、つまりアメリカ合衆国のサモアやハワイ諸島などが、世界で最も遅く新年を迎える場所です。
ハワイ州のホノルルは、日本よりも19時間遅いため、日本の新年を迎える頃、ハワイではまだ大晦日の夕方ということもあります。