“ビジュアルブランディング”見えない何かを探す冒険:後編
そしてカタチに込める
ネクストステップとして会社名の変更によるロゴマーク、ロゴタイプの構築へ進む。
ビジュアル作成の段階で会社名変更を見据えていたので、
ロゴマークとの親和性を見越してウェブサイトのメインビジュアルを創っていた。
その時の色設計は120パーセント活かせる。元のグリーンが主体の色設計を、新鮮さ、柔軟さ、そして「進化」にシフトしたものにしたいという方向性で考えていた。
それを表すのは「Teal」(色名)だと感じていた。
Tealの定義としては、
「Greenがさらに進化したもの。
自律的な組織。組織の目的も、集まったメンバーにより進化する。メンバーの生きがいをサポートする/しあう組織
和名は、鴨の羽色(かものはいろ)。
青緑色の一種。
英語ではteal blueの他に「teal green(ティールグリーン)」とも呼ばれる。」
と言われている(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
それに類する色とアクセントとしての反対色、ベースの黒、グレイなどを制定した。
会社のロゴマーク、ロゴタイプを作るときはいきなり形からはいっては失敗する。
こういう会社であって欲しい、という気持ちと、
こういう会社でありたい、という気持ちを伝えるため。
そして、この会社なら仕事をまかせたいと感じさせるため。
会社の顔となり永く愛されるためには、ビジュアルコンセプトに「強度」が必要だから。
そのためには丁寧に会社を作り上げている要素を解きほぐし、その形にならない価値を見える化する必要がある。
まず、社員がその表現に納得感があり、誇れることができるかは最重要。
それには最初からデザイナーが密室で創造するのではなく、「CIは自分ごと」ととらえていただく段階が必要となる。
その流れは箇条書きにすると
●目的の明確化=会社のストーリーとビジョンの洗い出し
↓
●ポジショニング確認=今どこにいるのか、どこに向かいたいのか
↓
●ふさわしい書体の策定=展開ツールを視野に入れて機能性とブランドをふまえた書体へ
↓
●会社名ロゴタイプを選定=和文表記、欧文表記 推奨書体
↓
●マーク開発=キーワード出し アイデアブレスト 手書きのデザインラフ (同時に走る)
↓
●会社名ロゴタイプとシンボルマークの組み合わせ作成 8パターン
↓
ここで、デザインは決定
そこからは精緻化と展開。
●ロゴタイプ、マークの精緻化=強度を増すように、文字間の整理、アイソレーションエリアの設定 縮小、拡大に耐えうる細部の整理
↓
●デザインマニュアルの作成=これが全てのツール展開の元になる
↓
●印刷物などのツール展開
↓
●ハード(看板や車のステッカー、ヘルメット、制服など)展開
ここまでで一通りの流れとなる。
...とシンプルに表現できるが、道は平坦ではない。
CIデザインは、ブランディングデザインと違い「オーディエンスやターゲット」の分析よりも徹底して企業DNAについて掘り下げる。
社名が変わり新しい領域も見据えて替わろうとしている会社の「歴史」「ミッション」「ココロ」「やる気」「世界観」「理念」「エッジ」「価値」...を洗い出すことはあっさりとできるものではない。社長はじめ役員がそろい、そしてスタッフが揃う中でとことん ヒアリングしこの会社の「視点」を明確にする。話し合いはもちろん、言葉が霧散しないように書き留めていく。
そして、企業として伝えたい内容を「スローガン」にして、書体に反映し、マークに落とし込む。
形にしていく段階では、最初から見た目のよいデザインをPCで作り込まない。言葉から連想される造形と、企業のロゴ、シンボルとしての機能を同時に考えなからスクラッチ&ビルド的に手書きで考えていく。
複数のアイデアから、選び抜かれたシンボルマークとロゴタイプ。
もちろんこれで終わりでなく。むしろこれが始まりである。
ロゴの精緻化。アイソレーションの制定と、エッジやカーブ、文字間、など、細部にわたって研ぎ澄ませる。
マニュアルの作成。形あるものは放置すると必ずその存在がぼやけてくる。複数の人間が関わるプロジェクトで使われるロゴ、マークであればなおのこと。徹底して使い方のルールを定める。その細かさは、やりすぎくらいでちょうどいいと感じる。
そして、このマニュアルはこの会社で働く社員のブランド理解の浸透の礎ともなる。全ての社員がこのCIに共感しハッピーに仕事ができるように。
ロゴマークの制定が終わると、各ツールへの反映。これは、ロゴを考える時にかなり想像が膨らんでいるのでスムーズにデザインが浮かぶ...が、ここで油断してはいけない。デザインだけが先走るとそのロゴマークにこめた思いがぼやけることがある。いろいろな可能性は試しながらもつねに会社の世界観からはずれないように進めていく。
決定案となった印刷物のコラテラル。
「これはあの会社だね」と言われる、その世界観がぶれないようにさらにいろいろなツールに落とし込む。
まさに「顔」であり、ステークホルダーとのタッチポイントが、印刷ツール。細部の作り込みに丁寧に集中する。
全てのツールのモックアップを検討し、さらにデザインを磨き上げる。
さらに、会社の外観や全てのハードツールにも踏襲。
社内CI策定チームの皆さんと。
私が全体重をかけてこの会社のCIのビジュアルを創り遂げられたのは、社長の「ビジュアルをしっかりと構築することは無形の会社の財産、価値につながる。」というスタンスがあってこそだったと思う。
経営戦略のひとつとして細部にまでこだわり展開したビジュアル。これからは、そのブランドがより効果的に世界に広がる力になりますように。
(この過程の公開を許諾くださった日新ネットワークス株式会社様に感謝します。ありがとうございました。)