入祭唱 "Sacerdotes Dei" (グレゴリオ聖歌逐語訳シリーズ88)
GRADUALE ROMANUM (1974) / GRADUALE TRIPLEX pp. 447–448; GRADUALE NOVUM II p. 162.
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【教会の典礼における使用機会】
【現行「通常形式」のローマ典礼 (1969年のアドヴェントから順次導入された) において】
1972年版Ordo Cantus Missae (GRADUALE ROMANUM [1974] / TRIPLEXはだいたいこれに従っている) では,「殉教者かつ司祭」を記念するミサ (復活節に当たらない場合) で共通に用いることができる歌の一つ,また教皇または司教を記念するミサで共通に用いることができる歌の一つとなっている。個々の聖人の記念日の中では,次の日に割り当てられている。
聖ファビアヌス,教皇・殉教者 (1月20日)
聖ブラシオス,司教・殉教者 (2月3日)
聖ポリュカルポス,司教・殉教者 (2月23日)
聖スタニスワフ (スタニスラウス),司教・殉教者 (4月11日) (復活節に当たらない場合)
聖マルティヌス1世,教皇・殉教者 (4月13日) (復活節に当たらない場合)
聖ヨアンネス (ヨハネ) 1世,教皇・殉教者 (5月18日) (復活節に当たらない場合)
ヴェルチェッリの聖エウゼビウス,司教 (8月2日)
聖大グレゴリウス (グレゴリウス1世),教皇・教会博士 (9月3日)
聖カリストゥス1世,教皇・殉教者 (10月14日)
さらに,ある時期以降に出版されたGRADUALE TRIPLEXには,1982年に列聖された聖マクシミリアン・マリア・コルベ (司祭・殉教者) の記念日 (8月14日) が載っており,この日にもこの入祭唱が割り当てられている。
ほかに,叙階が行われるミサや司祭のために捧げられるミサでもこの入祭唱を用いることができることになっている。これらについてはいずれも,複数ある選択肢のうちの一つである。
2002年版ミサ典書では,複数の司牧者を記念するミサで共通に用いることができる入祭唱の一つとなっている。上に挙げた諸項目・諸機会のところには,この入祭唱は一切載っていない。
【20世紀後半の大改革以前のローマ典礼 (現在も「特別形式」典礼として有効) において】
1962年版ミサ典書では,1人の「殉教者かつ司教」に関するミサ (復活節に当たらない場合) で共通に用いることができる入祭唱の一つとなっている。個々の聖人の祝日の中では,次の日に割り当てられている。
[ヴェルチェッリの] 聖エウゼビウス,司教・殉教者 (12月16日)
聖ポリュカルポス,司教・殉教者 (1月26日)
聖ブラシオス,司教・殉教者 (2月3日)
聖スタニスワフ (スタニスラウス),司教・殉教者 (5月7日) (復活節に当たらない場合)
[ラヴェンナの] 聖アポリナーリス,司教・殉教者 (7月23日)
[アレッツォの] 聖ドナトゥス,司教・殉教者 (8月7日)
AMSにまとめられている8~9世紀の諸聖歌書では,聖大グレゴリウス (3月12日),聖アポリナーリス (7月23日),聖クシストゥス (シクストゥス。2世) (8月6日),聖コルネリウスと聖チプリアヌス (9月14日),聖マルクス (10月7日) の各日のところにこの入祭唱が載っている。
【テキスト,全体訳,元テキストとの比較】
Sacerdotes Dei, benedicite Dominum; sancti et humiles corde, laudate Deum. T. P. Alleluia, alleluia.
Cant. Benedicite omnia opera Domini Domino: laudate et superexaltate eum in saecula.
【アンティフォナ】神の司祭たちよ,主を祝せよ。聖なる者たちと心の謙遜な者たちよ,神をたたえよ。(復活節には) ハレルヤ,ハレルヤ。
【カンティクム】主に創られたすべてのものよ,主を祝せよ。彼をほめよ,大いに称揚せよ,永遠に。
アンティフォナの出典はダニエル書第3章第84節前半と第87節前半だが,これはヘブライ語聖書にはなく,七十人訳ギリシャ語聖書にのみ含まれている。新共同訳聖書や聖書協会共同訳聖書 (それぞれ「旧約聖書続編つき」の版) には,これを含む部分は「ダニエル書補遺 アザルヤの祈りと3人の若者の賛歌」として載っており,当該節の番号は61,64となっている (ヘブライ語聖書のダニエル書第3章にない部分のはじめを第1節として数え始めているために生じたずれである)。
ごらんの通り,1974年版GRADUALE ROMANUM / GRADUALE TRIPLEXではこの入祭唱には復活節に付け加えて歌うための「ハレルヤ」がついているが,そのわりには復活節に当たりうる時期の使用機会のところにいちいち「復活節に当たらない場合」と書いてある (上の「教会の典礼における使用機会」の部を参照)。GRADUALE NOVUMではこの「ハレルヤ」はない。1961年版GRADUALE ROMANUMでもついていない。
いつもの詩篇唱の位置で歌われるのもダニエル書の同じ部分であり,ここに掲げられているのは第3章第57節 (新共同訳や聖書協会共同訳では「ダニエル書補遺 アザルヤの祈りと3人の若者の賛歌」第34節) である。
「カンティクム (Canticum)」とあるが,これは聖書に含まれる歌 (歌うのに適したテキスト) のうち詩篇以外の文書に含まれるものの総称であり,今回はここで歌われるのが詩篇でなくダニエル書の一部なのでこう書かれている。詩篇以外であれば,雅歌だろうがイザヤ書だろうがルカによる福音書だろうが,そこに含まれる歌はすべて「カンティクム」と呼ばれる。
【対訳・逐語訳 (アンティフォナ)】
Sacerdotes Dei, benedicite Dominum;
神の司祭たちよ,主を祝せよ。
別訳:(……) 讃美せよ。
sancti et humiles corde, laudate Deum.
聖なる者たちよ,心の謙遜な者たちよ,神をほめよ。
T. P. Alleluia, alleluia.
(復活節には) ハレルヤ,ハレルヤ。
【対訳・逐語訳 (カンティクム)】
Benedicite omnia opera Domini Domino:
主のすべての作品よ,主を祝せよ。
別訳:(……) 讃美せよ。
laudate et superexaltate eum in saecula.
彼をほめよ,大いに称揚せよ,永遠に。