拝領唱 "Illumina faciem tuam" (グレゴリオ聖歌逐語訳シリーズ103)
GRADUALE ROMANUM (1974) / GRADUALE TRIPLEX p. 271; GRADUALE NOVUM I p. 237.
gregorien.info内のこの聖歌のページ
【教会の典礼における使用機会】
後日追記する。
【テキスト,全体訳,元テキストとの比較】
Illumina faciem tuam super servum tuum, et salvum me fac in tua misericordia: Domine, non confundar, quoniam invocavi te.
御顔をあなたの僕の上に輝かせてください,御あわれみによって私をお救いください。主よ,私が恥を見ないようにしてください,私はあなたを呼び求めたのですから。
詩篇第30篇 (ヘブライ語聖書では第31篇) 第17節全体と第18節前半とが用いられており,テキストはローマ詩篇書にほぼ一致している (ローマ詩篇書とは何であるかについてはこちら)。唯一の違いは冒頭の "illumina" が同詩篇書において "inlumina" となっていることだが,これは音便の問題にすぎない。
【対訳・逐語訳】
Illumina faciem tuam super servum tuum,
御顔をあなたの僕の上に輝かせてください,
illumina 明るくしてください,輝かせてください (動詞illumino, illuminareの命令法・能動態・現在時制・2人称・単数の形)
faciem tuam あなたの姿を,あなたの顔を (faciem:姿を,顔を,tuam:あなたの)
super ~の上に
servum tuum あなたの僕 (対格) (servum:しもべ,tuum:あなたの)
「あなたの僕」=「私」。
et salvum me fac in tua misericordia:
御あわれみによって私をお救いください。
et (英:and)
salvum 救われている,健康である,安全である,良好な状態に保たれている (損なわれていない,傷ついていない) (形容詞) …… 英語でいう "make A B" (AをBにする) 構文の "B" にあたる。このときラテン語ではA,Bとも対格をとる。
me 私を …… 英語でいう "make A B" (AをBにする) 構文の "A" にあたる。
fac (……に) してください (動詞facio, facereの命令法・能動態・現在時制・2人称・単数の形) …… 英語でいう "make A B" (AをBにする) 構文の "make" にあたる。
in ~のうちに,~によって
tua misericordia あなたのあわれみ (奪格) (tua:あなたの,misericordia:あわれみ)
"salvum me fac" を逐語的に説明したが,これは「私を救ってください」という意味の熟語としてセットで覚えてよい ("me [私を]" はもちろんほかのものに置き換わることもある)。
Domine, non confundar,
主よ,私が恥を見ないようにしてください,
Domine 主よ
non confundar 私が恥を見ませんように,私が恥を見ないようにしてください (non:[否定詞],confundar:私が恥を見ませんように [動詞confundo, confundereの接続法・能動態・現在時制・1人称・単数の形]) …… "confundar" は直説法・未来時制 (「私が恥を見ることはないでしょう」) も同形であり,そちらでも文脈上おかしくない。しかし,もとの七十人訳ギリシャ語聖書でこれにあたる語が「希求法」というその名の通り願いを表す形をしているため,ここのラテン語もそのような意味にとったほうがよいと考えられ,すると接続法扱いしたほうがよいというわけである。
quoniam invocavi te.
私があなたを呼び求めたのでありますからには。
平たい訳 (これで十分だと思う):私はあなたを呼び求めたのですから。
quoniam (既知のように) ~であるから
invocavi 私が呼び求めた,私が (助けを求めて) 呼んだ (動詞invoco, invocareの直説法・能動態・完了時制・1人称・単数の形)
te あなたを