拝領唱 "Qui manducat carnem meam" (グレゴリオ聖歌逐語訳シリーズ112)
Graduale Romanum (1974) / Graduale Triplex p. 383; Graduale Novum I pp. 369–370.
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【教会の典礼における使用機会】
【現行「通常形式」のローマ典礼 (1969年のアドヴェントから順次導入された) において】
1972年版Ordo Cantus Missae (Graduale Romanum 1974 / Triplexはだいたいこれに従っている) では,次の諸機会に割り当てられている (「四旬節」「A年」など教会暦の用語についてはこちら。)。
四旬節第2週の木曜日
復活節第3週の金曜日
年間第15週
年間第20主日 (B年)
年間第21週 (木~土曜日を除く。ほかの選択肢あり)
キリストの聖体の祭日 (A年・B年)
教皇聖ピウス (ピオ) 10世の記念日 (8月21日) (ほかの選択肢あり)
「至聖なるエウカリスティアについて」の随意ミサ
葬儀ミサ・死者記念ミサ (ほかの選択肢たくさんあり)
また,聖体拝領そのものに合う内容のテキストをもっているため,その日その日固有の拝領唱に代えて用いてよい拝領唱 (7つ挙がっている) の一つに挙げられている (Ordo Cantus Missae 1972, p. 74, no. 142)。
2002年版ミサ典書では,年間第15主日とキリストの聖体の祭日のところにのみこの拝領唱が載っている (PDF内で "manducat" をキーワードとする検索をかけて調べた限りでは)。なおいずれも語順が若干異なっている。上記Ordo Cantus Missaeにある諸機会のうちそれ以外のところでは,ほかの拝領唱が記されているか,拝領唱の指定そのものがないかである。
また,はじめは共通だがあとは異なるテキストになっているもの (ヨハネによる福音書第6章第54節,Vulgataでは第55節) が,年間第21主日 (ほかの選択肢あり), 「臨終が近いときの聖体拝領 (viaticum)」のためのミサ (ほかの選択肢あり),「臨終が近い人のため (Pro morientibus)」のミサ (ほかの選択肢あり) のところに載っている。
【20世紀後半の大改革以前のローマ典礼 (現在も「特別形式」典礼として有効) において】
1962年版ミサ典書では,PDF内で検索をかけて調べた限りでは,この拝領唱は四旬節第2週 (第2主日後) の木曜日,聖霊降臨後第9主日,教皇聖ピウス10世の祝日 (こちらでは9月3日。テキストは倍くらいの長さ) に割り当てられている。
AMSにまとめられている8~9世紀の諸聖歌書では,この拝領唱は四旬節第2週の木曜日と聖霊降臨後第15 (!) 主日とに割り当てられている。
【テキスト,全体訳,元テキストとの比較】
Qui manducat carnem meam, et bibit sanguinem meum, in me manet, et ego in eo, dicit Dominus.
「私の肉を食べ私の血を飲む者は私の内に留まり,私はその人の内に留まる」と主は仰せになる。
ヨハネによる福音書第6章第56節 (Vulgataでは第57節) が用いられている。ただし最後の "dicit Dominus" は付け加えられた語句である。この "Dominus (主)" すなわちこの言葉を言っている人物はイエス・キリストである。
付加部分 "dicit Dominus" を別にしてもテキストはVulgataと若干異なっており (内容は同じだが),BREPOLiSのVetus Latina Databaseで見てみると,アウグスティヌス『神の国』第21巻第25章やカッシオドルスのコリント前書講解などいくつかの著作に引用されているテキストが一致していた。
【対訳・逐語訳】
Qui manducat carnem meam, et bibit sanguinem meum,
「私の肉を食べ,私の血を飲む人,
in me manet,
その人は私の内に留まる,
et ego in eo,
そして私はその人の内に (留まる)」と
dicit Dominus.
主は仰せになる。