拝領唱 "Venite post me" (グレゴリオ聖歌逐語訳シリーズ101)

 GRADUALE ROMANUM (1974) / GRADUALE TRIPLEX pp. 267–268; GRADUALE NOVUM I p. 233.
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【教会の典礼における使用機会】

 後日追記する。
 

【テキスト,全体訳,元テキストとの比較】

Venite post me: faciam vos piscatores hominum: at illi, relictis retibus et navi, secuti sunt Dominum.
「私についてきなさい。あなたたちを,人間をすなどる者にしよう。」すると彼らは,網と船とを後に残してしゅについていった。

 マタイによる福音書第4章第19–20節が用いられており,「ついてきなさい」と呼びかけているのはイエス (=「主」),呼びかけられているのは漁師だったペトロ (シモン) とアンデレである。

 テキストは (もとになっているのがおそらくVulgataではないということを別にしても) 福音書と少し異なっている。
 特にはっきり異なるのは「網と船とを後に残して」というところであり,もとの福音書ではここは「網を後に残して」となっており,「船」は出てこない。船 (と父親) を後に残してイエスについていったと記されているのはすぐ後に弟子になるもう2人の漁師ヤコブとヨハネであり,この拝領唱はそこから要素を借りてきた形となっている。もっとも,ペトロとアンデレも漁師であった以上,いずれにせよ船も捨てていったことだろうし,実際ルカ福音書には「彼らは舟を陸に引き上げ,すべてを捨ててイエスに従った」(第5章第11節,聖書協会共同訳) とあるが。
 それから最後の「主についていった」のうち「主に (Dominum)」という語は,もとは単に「彼に (eum)」である。
 

【対訳・逐語訳】

Venite post me:

「私についてきなさい。

venite 来なさい (動詞venio, venireの命令法・能動態・現在時制・2人称・複数の形)
post me 私の後に,私の後を (post:~の後,~の後ろ,me:私 [対格]}

faciam vos piscatores hominum:

私はあなたたちを,人間をすなどる者にしよう」
直訳:私はあなたたちを人間たちの漁師たちにしよう。

faciam 私が (……を……に) しよう (動詞facio, facereの直説法・能動態・未来時制・1人称・単数の形) ……英語でいう "make A B (AをBにする)" 構文の "make" にあたる。
vos あなたたちを (対格) ……英語でいう "make A B (AをBにする)" 構文の "A" にあたる。
piscatores hominum 人間たちの漁師たち (piscatores:漁師たち [複数・対格],hominum:人間たちの) ……英語でいう "make A B (AをBにする)" 構文の "B" にあたる。このとき "A" と "B" とは同格になるので,この "piscatores" は "vos" に合わせて対格をとっている。

at illi, relictis retibus et navi, secuti sunt Dominum.

すると彼らは,網と船とを後に残してしゅについていった。
直訳:それに対して彼らは,網と船とが後に残されたのち,主についていった。

at しかし,それに対して
illi 彼らが
relictis retibus et navi 網と船とが後に残されたのち (relictis:残された [動詞relinquo, relinquereをもとにした完了受動分詞の複数・奪格の形],retibus:網 [複数・奪格],et:英 "and",navi:船 [単数・奪格]) ……独立奪格句 (絶対的奪格)。英語の独立分詞構文のような働きをする。奪格をとっている名詞が意味上の主語,奪格をとっている分詞が意味上の述語動詞の働きをする。そして,ここではその分詞が完了受動分詞であり,この場合の基本的な意味は「~された後で」で,つまり主節より前の時点に行われたことを述べるものとなる。
secuti sunt ついていった (動詞sequor, sequiの直説法・受動態の顔をした能動態・完了時制・3人称・複数の形)
Dominum しゅに (対格)

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