GRADUALE TRIPLEXに出てくる用語や指示の訳・解説 (1) 書名とpp. 13–37

 ミサ用グレゴリオ聖歌が載っている聖歌書として現在おそらく最もよく用いられている "GRADUALE TRIPLEX" に出てくる用語や指示 (ラテン語) を訳し,解説する (なお,この本は古写本から書き写されたネウマの有無以外は1974年版 "GRADUALE ROMANUM" と同じ内容なので,こちらをお持ちの方にも本稿はご利用いただける)。
 アルファベット順ではなく,この本のはじめからページを繰っていって出会う順 (前書きなどの部分は除く) にしてある。


更新履歴

2023年9月14日
● "Ps." は "Psalmodia (詩篇唱)" の略であろうと書いていたが,"Psalmus (詩篇)" の略であろうという記述に改めた。

2022年1月31日
● 同じ季節のほかの歌を用いてもよいということについて ("In omnibus Missis de Tempore eligi potest ..." のところ),例として聖家族の祝日の入祭唱を降誕節のほかの入祭唱に替えてもよいと書いたが,実際にそうしているところを見たことがあるわけではないし,降誕節は降誕節でもいわば無印の「降誕節第1主日」「降誕節第2主日」などではなく「聖家族の祝日」なのではたして本当にそうしてよいのかどうか100%の自信がないため,ひとまず「 (たぶん) 」と付け加えた。
● 1か所,逐語訳で前置詞 "dē" を「~の中から (英:out of, from)」と訳しているところがあったのだが,間違ってはいないし文脈にも合っているものの, "dē" というよりは別の前置詞 "ex" の性格が顕著に感じられるので逐語訳としてはどうかと思い,単なる「~から」という訳語に改めた。

2022年1月29日
● 投稿
 


GRADUALE TRIPLEX (書名)

  「三重のグラドゥアーレ」「三重のミサ聖歌書」。何が三重なのかというと,楽譜がである。四線譜の上下に2種類のネウマが書かれており,つまり一つ一つの旋律が3種類の楽譜で示されていることを指している。
 "graduale" は多義語であり,"昇階唱" の意味のこともあるが,ここでは「ミサ聖歌書」である。
graduāle ミサ聖歌書 (名詞,中性・単数・主格)
triplex 三重の (形容詞,中性・単数・主格)

PROPRIUM DE TEMPORE (p. 13)

  「時 (季節) に応じた固有文」「時 (季節) についての固有文」
 まず「固有文」(proprium) は「通常文」(ordinarium) と対になる語である。「通常文」は原則として毎回唱えたり歌ったりする式文で,Kyrie, Gloriaなどいわゆる「ミサ曲」に入っているものはこれに該当する。「固有文」はその日その日のミサの内容によって変わる式文のことである。
 次に「時 (季節) に応じた」(de tempore) というのは,アドヴェント (待降節),降誕節,四旬節,過越の聖なる三日間,復活節,年間という各季節に,さらにはそれぞれの週・それぞれの日に (特に細かい場合は,それぞれの時間帯にまで) 応じた,ということであり,これは各季節の名称を見れば分かるように,「イエス・キリストの記念としての一年間のそれぞれの時 (各季節,各週,各日,各時間帯) に応じた」ということにほかならない。教会の典礼においては,一年全体の「時」そのものがイエス・キリストの記念を行うものとして秩序づけられているのである (なおその意味で,典礼暦自体が福音を伝えるひとつの「説教」であると思う)。そのようなものとしての「時」に応じた固有文,というのがこの "PROPRIUM DE TEMPORE" という言葉の意味であると考えられる。
 なぜそういえるかは,この "PROPRIUM DE TEMPORE" の部に含まれていないものを見渡すとよく分かる。まず,さまざまな聖人の記念のための固有文 (PROPRIUM DE SANCTIS)。次に,種々の個人的なあるいは社会的な意向によるミサの固有文 (MISSAE RITUALES AD DIVERSA ET VOTIVAE, p. 641 ff.)。最後に (「個人的な意向による」に含まれるともいえるが) 葬儀のための固有文 (LITURGIA DEFUNCTORUM, p. 667 ff.)。これらに共通するのは,ミサを行う理由・機会が神でない人間に基づいていること,そして何より,その時限り・その日限り (聖人の記念はほぼ毎年その日に行われるが,しかし一年のうちでその日だけである) であって,一年全体を (「時」を) 秩序づけるものとはなっていないことである。「時」を秩序づけているのはあくまでもイエス・キリストの記念なのである。
proprium 固有文 (名詞,中性・単数・主格。もとは「固有の」「特徴的な」を意味する形容詞が名詞化したもの)
~に応じた,~についての (前置詞)
Tempore 時,季節 (名詞,中性・単数・奪格)

In omnibus Missis de Tempore eligi potest pro opportunitate, loco cuiusvis cantus diei proprii, alius ex eodem tempore. (p. 13)

  「時 (季節) に応じた (についての) すべてのミサにおいて,都合によっては,その日に固有のどの歌であれ,代わりに同じ季節のほかの歌を用いることができる」。直訳すれば(……) その日に固有のどの歌の位置においてであれ,同じ季節からほかの歌が選択されることができる」
 「時 (季節) に応じた (についての) すべてのミサ」というのは早い話が "PROPRIUM DE TEMPORE" の部 (pp. 13–391) に載っているすべてのミサのことだと思えばよい。詳しくは上の "PROPRIUM DE TEMPORE" の解説をお読みいただきたい。
  「同じ季節のほかの歌」というのは,例えば聖家族の祝日は降誕節に属しているので,この日に指定されている入祭唱 "Deus in loco sancto suo" の代わりに同じ降誕節の入祭唱 "Dum medium silentium tenerunt omnia" などを用いてもよい (たぶん),ということである。
in (英:in)
omnibus すべての (形容詞,女性・複数・奪格)
Missīs ミサ (名詞,女性・複数・奪格)
~に応じた,~についての (前置詞)
Tempore 時,季節 (名詞,中性・単数・奪格)
ēligī 選択される (動詞ēligō, ēligereの不定法受動態・現在時制の形)
potest ~することができる (助動詞possum, posseの直説法・能動態・現在時制・3人称・単数の形)
● 主語はだいぶ後の "alius"。
prō ~のために,~に従って (前置詞)
opportūnitāte 都合のよい状態,都合のよい機会,メリット (名詞,女性・単数・奪格)
locō 場において,時点において,状態において (名詞,男性・単数・奪格)
cuiusvīs どの~でも (英:whatever [you want]) (形容詞,男性・単数・属格)
● 直後の "cantus" にかかる。
cantūs 歌の (名詞,男性・単数・属格)
● 2つ前の "loco" にかかる。
diēī 日の,日に (名詞,男性または女性・単数・属格または与格)
●「日の」(属格) ととるならば直前の "cantus" に,「日に」(与格) ととるならば直後の "proprii" にかかる。結局同じ意味になるのであまり気にしなくてよい。
● 本来は男性名詞だが,教会ラテン語では私が今まで見てきた限り女性名詞扱いのことが多い。しかしこのGRADUALE TRIPLEX (もとはといえばミサでの聖歌に関する規定 "Ordo Cantus Missae" [1970]) では,判別可能なケースでは男性名詞として出ていることが圧倒的に多く (指示書き部分。聖歌のテキストは別),それゆえここもおそらく男性名詞なのだろうと思うが,完全に確かではないので断定は避ける。
propriī 固有の (形容詞,男性・単数・属格)
● 2つ前の "cantus" にかかる。
alius ほかの (もの) が (形容詞,男性・単数・主格)
● "cantus" が省略されている。「ほかの歌が」。
● これがこの文の主語であり,述語動詞はだいぶ前の "eligi potest"。
ex ~から (英:out of, from)
eōdem 同じ (形容詞,中性・単数・奪格)
tempore 季節 (名詞,中性・単数・奪格)
● 文脈上こちらは一義的に「季節」であって「時」ではない。

TEMPUS ADVENTUS (p. 15)

  「アドヴェント (待降節)」。直訳すると「到来の季節」「到来の時」。
tempus 時,季節 (名詞,中性・単数・主格)
adventūs 到来の,アドヴェントの (名詞,男性・単数・属格)

HEBDOMADA PRIMA ADVENTUS (p. 15)

  「アドヴェント (待降節) 第1週に」。「第1主日に」ではない。つまり,特に別個に指示されていない限りは,主日 (日曜日) に用いられた歌がその週の間ずっと用いられるということである (聖人などの祭日・祝日・記念日を除く)。
 最後に「に」とつけたのは,おそらくこれは奪格だからである。主格でも文字の上では全く同じ形になるのだが,同レベルの見出しとして後に出る "SABBATO"「土曜日に」というのが明らかに奪格であることから,これも奪格だと考えるのが理に適っていると思う。次に示す母音の長短も,奪格だということを前提にしている。
hebdomadā 週に (名詞,女性・単数・奪格)
prīmā 第1の (形容詞 [序数詞],女性・単数・奪格)
Adventūs アドヴェント (待降節) の (名詞,男性・単数・属格)

Antiphona ad introitum VIII (p. 15)

  「入祭のためのアンティフォナ,第8旋法」あるいは「入祭にあたっての交唱,第8旋法」
 "Antiphona ad introitum" は短く "Introitus" と呼ばれる (そして "IN." と略される) ことのほうが多いが,時々このような書き方になっている。ともかく,要するに入祭唱のことである。
 "antiphona" は多義語であり,本来は2つのグループに分かれて交互に歌うという歌唱形態のこと,つまり「交唱」を意味する。しかし,詩篇唱 (詩篇あるいはそれに類するテキストを定型に従って朗唱するもの) の前後に (場合によってはさらに途中にも) 歌う歌のことも "antiphona" といい,こちらの意味の場合はそのままカタカナにして「アンティフォナ」(もとのラテン語の発音に従うなら「アンティフォーナ」) とするのが適切であろう。
  「入祭」と訳した "introitum (<introitus)" は,字義通りには「入場」を意味する語である。ミサのはじめに司祭や侍者たちの行列が祭壇を目指して入ってくることを指している。つまり入祭唱は本来,この行列の間に歌われるための歌である。
  「第8旋法」はヒポミクソリディア旋法 (ソの変格旋法) のこと。旋法の番号が記されているのは,アンティフォナがどういう旋法でできているかを示すためというよりは (それは一義的には決められないこともある),詩篇唱をどの定型で歌えばよいかを示すためというのが大きい。
antiphōna アンティフォナ (詩篇唱の前後に [場合によっては途中にも] 歌う歌);交唱 (名詞,女性・単数・主格)
ad ~のための,~にあたっての (前置詞)
introitum 入場,入祭 (名詞,男性・単数・対格)

Ps. (p. 15)

 これ以降の部分で行われるのは詩篇唱なので,この "Ps." は「詩篇唱」という意味のラテン語 "Psalmodia" の略かとも思える。しかし,ここに詩篇以外のテキストがきている場合には "Cant." ("Canticum" の略) と記されている (例:p. 448第3段) ことから考えて,"Psalmus" すなわち「詩篇」であろうと思う。
psalmus 詩篇 (名詞,男性・単数・主格)

Feria 6: Dominus illuminatio mea, 288. (p. 15)

  「第6の週日には "Dominus illuminatio mea" [を入祭唱として歌え]。288[ページを見よ]」
  「第6の週日」とは金曜日のこと。日曜日を週の第1日として数えてゆくと6番めは金曜日だというわけである。上に「特に別個に指示されていない限りは,主日 (日曜日) に用いられた歌がその週の間ずっと用いられる」と書いたが,これがその「特に別個に指示されてい」る場合である。
 "feria" は本来複数形 "feriae" の形で用いられて「休日,祝日」を意味する語だが,キリスト教では神の救いによってどの日も祝うべきものとなったという考えから,この語をごく普通の週日に用いるようになったらしい。
fēriā 週日に (名詞,女性・単数・奪格)
6 (sextā) 第6の (形容詞 [序数詞],女性・単数・奪格)

GR. I (p. 16)

  「昇階唱,第1旋法」
 "GR." は "Graduale" の略である。先述したようにこれは「ミサ聖歌書」あるいは「昇階唱」を意味する多義語だが,ここでは後者である。なお正式には "Responsorium Graduale" というらしい。
 第1旋法はドリア旋法 (レの正格旋法) のこと。
Graduāle 昇階唱 (名詞,中性・単数・主格)

V. (p. 16)

 昇階唱,アレルヤ唱,詠唱に現れる記号で,"Versus" の略である。直訳すればせつあるいは「句」だが,少数 (一人のことも多い) の優れた歌い手によって歌われる部分すなわち「独唱句」(この日本語が適切かどうか,また適切だとしてもどのくらい定着しているか,私にはよく分からないということを断っておく) を意味している。なお,入祭唱の詩篇唱の後にはアンティフォナが必ず繰り返されるのと異なり,昇階唱の前半は独唱句の後再び歌っても歌わなくてもよい。アレルヤ唱の "Alleluia" は必ず繰り返すが。

OF. II (p. 17)

  「奉納唱,第2旋法」
 "OF." は "offertorium" の略である。本来は「奉納」「奉献」そのものを指す語。第2旋法はヒポドリア旋法 (レの変格旋法) のこと。
Offertōrium 奉納 (唱) (名詞,中性・単数・主格)

CO. I (p. 17)

  「拝領唱,第1旋法」
 "CO." は "Communio" の略である。本来は「聖体拝領」そのものを指す。さらに元をたどれば「共同体」「一致」といった意味の語。
Commūniō 拝領唱,聖体拝領 (名詞,女性・単数・主格)

Ps. 84, 2. 3. 4. 5. 7. 8. 10. 11. 12 (p. 18)

  「詩篇第84篇第2, 3, 4, 5, 7, 8, 10, 11, 12節[をこのアンティフォナと組み合わせて歌え]」
 入祭唱においては詩篇唱までGRADUALE TRIPLEXに記譜されているのだが,拝領唱ではそうではなく,このように詩篇の番号と節の番号が記されているだけである。入祭唱では通常1節だけ歌って終わるのに対し,拝領唱では上記のように多くの節を歌う (全部歌わなければならないわけではないが) ので,これを記したらあまりにもスペースが取られてしまうからだろう。
 詩篇の番号はVulgata (もとはといえば七十人訳ギリシャ語聖書) 式の数え方に従っており,ヘブライ語原典に基づく現代の多くの聖書での数え方とは1つずれることが多い。この「第84篇」というのも,一般的な聖書でいう第85篇のことである。詳しくはこちらをごらんいただきたい。
 節の番号はNova Vulgata (第2バチカン公会議後に出た「新しいVulgata」) のそれである。

Ps. 147*, 12. 13. 14. 15. 17. 18. 19. 20 (p. 21)

 同じく拝領唱における詩篇唱テキストの指示だが,今度は詩篇の番号の横に星印がついている。これは,拝領唱のアンティフォナが同じ詩篇から取られていない場合についているもので,より適当な詩篇があるならば詩篇唱はそちらに替えてもよいということを示している。

Feria 4: (si ante diem 17 decembris inciderit) (p. 22)

  「第4の週日に ([この日が]12月17日より前に来る場合)」
 第4の週日すなわち水曜日に歌うべき歌の指示だが,括弧内の文が条件をつけている。この水曜日 (アドヴェント第3週の水曜日) が12月17日より前 (12月16日まで) である場合に限る,というのである。これは,12月17日から24日までのアドヴェント最後の日々にはより優先順位の高い別の式文が用意されているためである (p. 24以降)。
fēriā 週日に (名詞,女性・単数・奪格)
4 (quartā) 第4の (形容詞 [序数詞],女性・単数・奪格)
もし (英:if) (接続詞)
ante ~の前に (前置詞)
diem 日 (名詞,男性または女性・単数・対格)
17 (septimum decimum / septimam decimam) 第17の (形容詞 [序数詞],男性または女性 ["diem" がどちらなのかによる]・単数・対格)
decembris 12月の (名詞,男性・単数・属格)
inciderit (その日が) 当たる (動詞incidō, incidereの接続法・能動態・完了時制・3人称・単数の形)

Dom. anno B (p. 22)

  「主日には,B年には」。つまり「B年の主日には」
 "Dom." は "Dominica"「主日 (日曜日) に」の略である。主日ミサでの聖書朗読箇所は3年周期になっており,その周期の中のどの年にあたるかによって,A年・B年・C年という。そのうちのB年には,ということである。
dominicā 主日 (日曜日) に (名詞,女性・単数・奪格)
● もとは「主の」を意味する形容詞 ("dies dominica"「主の日」)。
annō B B年に (annō:名詞,男性・単数・奪格)

Cant. Isaiae (p. 24)

  「イザヤのカンティクム」
 "Cant." は "Canticum" の略である。拝領唱の詩篇唱のためのテキストの指示だが,普段は詩篇のどれかが指定されているところ,ここではイザヤ書が指定されている。このような,聖書のうち詩篇以外の文書に含まれる歌 (歌うのに適した詩的なテキスト) を総称してカンティクムという。詩篇以外でありさえすれば,旧約聖書か新約聖書かは問わない。ほかの有名な例を一つ挙げるならば,マニフィカト (Magnificat) はルカによる福音書第1章に含まれるカンティクムである。
canticum カンティクム,歌 (名詞,中性・単数・主格)
Isaiae イザヤの (名詞,男性・単数・属格)

IN FERIIS ADVENTUS a die 17 ad diem 24 decembris (p. 24)

  「12月17日から24日までのアドヴェント (待降節) の週日に」。この期間にはアドヴェント第3週のどこかで入ることになるが,アドヴェント第3週の定めよりもこちらが優先される。
in ~において (前置詞)
fēriīs 週日 (名詞,女性・複数・奪格)
Adventūs アドヴェント (待降節) の (名詞,男性・単数・属格)
ā ~から (前置詞)
diē 日 (名詞,男性または女性・単数・奪格)
17 (decimō septimō / decimā septimā) 第17の (形容詞 [序数詞],男性または女性・単数・奪格)
● 序数詞の形 (綴り,十の位と一の位との順序など) にはいろいろあるようだが,今回はGRADUALE TRIPLEXのほかの箇所 (p. 310) に見られる形に従った。
ad ~まで (前置詞)
diem 日 (名詞,男性または女性・単数・対格)
24 (vīgēsimum quartum / vīgēsimam quartam) 第24の (形容詞 [序数詞],男性または女性・単数・対格)
decembris 12月の (名詞,男性・単数・属格)

A die 17 decembris cantus sic ordinantur, Alleluia vero ad libitum de Tempore electo (cf. etiam infra pro diebus 19 et 20 decembris) (p. 24)

  「12月17日以降の歌は以下のように定められている。アレルヤ唱については季節のものから自由に選ばれる。(12月19日と20日については,後述することも参照せよ)」
  「季節のものから自由に選ばれる」とは,アドヴェントの部に載っているアレルヤ唱の中から自由に選べということ。12月19日と20日についての指示はp. 34にある。
ā ~から (前置詞)
diē 日 (名詞,男性または女性・単数・奪格)
17 (decimō septimō / decimā septimā) 第17の (形容詞 [序数詞],男性または女性・単数・奪格)
● 序数詞の形 (綴り,十の位と一の位との順序など) にはいろいろあるようだが,今回はGRADUALE TRIPLEXのほかの箇所 (p. 310) に見られる形に従った。
decembris 12月の (名詞,男性・単数・属格)
cantūs 歌が (名詞,男性・複数・主格)
sīc 次のように,このように,そのように (副詞)
ōrdinantur 定められている,秩序づけられている (動詞ōrdinō, ōrdināreの直説法・受動態・現在時制・3人称・複数の形)
Alleluia アレルヤ唱 (名詞,中性・単数・奪格)
ここから "electo" までは独立奪格句構文で,この "Alleluia" が事実上の主語,"electo" が事実上の述語動詞である。
vērō ただし,しかし (副詞または接続詞)
ad libitum 好きなように,自由に (libitum:恣意)
 ~から (前置詞)
Tempore 季節
ēlēctō 選択された/選択される,抽出された/抽出される (動詞ēligō, ēligereをもとにした完了受動分詞,中性・単数・奪格)
● 性・数・格は前の "Alleluia" に一致してこうなっている。
cf. (cōnfer) 参照せよ (動詞cōnferō, cōnferreの命令法・能動態・現在時制・2人称・単数の形)
etiam ~も,そのほかに,その上さらに (接続詞)
īnfrā 下,下記の,後で出てくる (副詞)
prō ~のために,~のゆえに
diēbus 日 (名詞,男性または女性・複数・奪格)
19 (decimō nōnō / decimā nōnā) 第19の (形容詞 [序数詞],男性または女性・単数・奪格)
● 序数詞の形 (綴り,十の位と一の位との順序など) にはいろいろあるようだが,今回はGRADUALE TRIPLEXのほかの箇所 (p. 319) に見られる形に従った。
● かかっている名詞 "diebus" が複数形なので,この序数詞が単数形でよいのかどうかと不安になるところだが,Google検索をかけてみた限りではこのような形 (名詞が複数形で,そこに単数形の序数詞がいくつかかかるという形) は実際に存在するようである。意味から考えれば「19日」も「20日」もそれぞれ1つしかないのだから当然だが。
et (英:and)
20 (vīgēsimō / vīgēsimā) 第20の (形容詞 [序数詞],男性または女性・単数・奪格)
decembris 12月の (名詞,男性・単数・属格)

FERIA SECUNDA/TERTIA/QUARTA/QUINTA/SEXTA (p. 24, 27, 29, 31, 32)

fēriā 週日に (名詞,女性・単数・奪格)
secundā 第2の (形容詞 [序数詞],女性・単数・奪格)
tertiā 第3の (形容詞 [序数詞],女性・単数・奪格)
quartā 第4の (形容詞 [序数詞],女性・単数・奪格)
quīntā 第5の (形容詞 [序数詞],女性・単数・奪格)
sextā 第6の (形容詞 [序数詞],女性・単数・奪格)
 つまりそれぞれ「月曜日に」「火曜日に」「水曜日に」「木曜日に」「金曜日に」。

IN ULTIMIS FERIIS (p. 25–)

  「[アドヴェントの]最後の一連の週日に」。先ほどの "IN FERIIS ADVENTUS a die 17 ad diem 24 decembris" を短く言いかえたもの。
in (英:on) (前置詞)
ultimīs 最後の (形容詞,女性・複数・奪格)
fēriīs 週日 (名詞,女性・複数・奪格)

Ut supra feria 2, 24, praeter: (p. 31)

  「前述の第2の週日 (月曜日) の通り。24[ページを見よ]。ただし次のものを除く」
ut ~のように,~と同じ (副詞または接続詞)
suprā 上,上記の,前述の (副詞)
fēriā 週日に (名詞,女性・単数・奪格)
2 (secundā) 第2の (形容詞 [序数詞],女性・単数・奪格)
praeter ~を除いて (副詞または前置詞)

SABBATO (p. 33)

  「土曜日に」
 しばしば「キリスト教の安息日は日曜日」とも言われるが,ここで土曜日を表す教会ラテン語がヘブライ語で「安息日」を表す「シャッバート」という語に由来する形をしているところに,「安息日」(土曜日) と「主日」(日曜日) とが分けて考えられているということを読み取ってもよいだろうか。
sabbatō 土曜日に (名詞,中性・単数・奪格)

Cantus ad lectiones apti pro diebus 19 et 20 decembris: (p. 34)

  「12月19日と20日のための,朗読箇所に合う歌」
cantūs 歌 (名詞,男性・複数・主格)
ad ~に (前置詞)
lēctiōnēs 朗読,朗読聖書箇所 (名詞,女性・複数・対格)
aptī よく合う,ちょうどよい,適した (形容詞,男性・複数・主格。もとは動詞apiō, apereをもとにした完了受動分詞)
● 3つ前の "cantus" にかかる。
prō ~のために (前置詞)
diēbus 日 (名詞,男性または女性・複数・奪格)
19 (decimō nōnō / decimā nōnā) 第19の (形容詞 [序数詞],男性または女性・単数・奪格)
● 序数詞の形 (綴り,十の位と一の位との順序など) にはいろいろあるようだが,今回はGRADUALE TRIPLEXのほかの箇所 (p. 319) に見られる形に従った。
et (英:and)
20 (vīgēsimō / vīgēsimā) 第20の (形容詞 [序数詞],男性または女性・単数・奪格)
decembris 12月の (名詞,男性・単数・属格)

Die 24 decembris, ad Missam matutinam
In feriis, una ex Missis supra notatis pro feriis, 24 et seq. In dominica vero, Missa de dom. IV Adventus, 34.
 (p. 37)

  「12月24日,朝のミサにあたって
 週日であれば,週日のための前掲のミサの中の一つ。24[ページ]以下[を見よ]。しかし主日であれば,アドヴェント第4主日のミサ。34[ページを見よ]」

 12月24日の夕方からはもう降誕節なので,アドヴェント最後の日としての12月24日のミサは午前中にしか行えない (夕方より前でありさえすればよいのか,つまり例えば13時や14時に行なってもよいのかどうかは私は知らない)。それで「朝のミサで」というわけである。
diē 日 (名詞,男性または女性・単数・奪格)
24 (vīgēsimō quartō / vīgēsimā quartā) 第24の (形容詞 [序数詞],男性または女性・単数・奪格)
decembris 12月の (名詞,男性・単数・属格)
ad ~のために,~にあたって (前置詞)
Missam ミサ (名詞,女性・単数・対格)
mātūtīnam 朝の (形容詞,女性・単数・対格)
in (英:on) (前置詞)
fēriīs 週日 (名詞,女性・複数・奪格)
una 一つ (名詞化した形容詞 [基数詞],女性・単数・主格)
ex (英:out of, from)
Missīs ミサ,ミサ式文 (名詞,女性・複数・奪格)
suprā 上に,(本の中で) 前に
notātīs 記された,記されている (動詞notō, notāreをもとにした完了受動分詞,女性・複数・奪格)
● 2つ前の "Missis" にかかる。
prō ~のために (前置詞)
fēriīs 週日 (名詞,女性・複数・奪格)
et seq. (et sequentēs) およびそれに続くもの (ページ)
● "sequentes" は複数形。複数のときは "seq." でなく "seqq." と書くこともあるようだが,今回は指されているページが実際に複数 (pp. 25–34) なので "seq." という形ではあるが複数形ととった。
in (英:on) (前置詞)
dominicā 主日,日曜日 (名詞,女性・単数・奪格)
vērō しかし,ただし
Missa ミサ,ミサ式文
~の,~に関する,~についての
dom. (dominicā) 主日,日曜日 (名詞,女性・単数・奪格)
IV (quartā) (形容詞 [序数詞],女性・単数・奪格)
Adventūs アドヴェント (待降節) の (名詞,男性・単数・属格)

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