拝領唱 "Sedebit Dominus Rex" (グレゴリオ聖歌逐語訳シリーズ9)

 GRADUALE ROMANUM (1974) / GRADUALE TRIPLEX p. 391; GRADUALE NOVUM I p. 374.
 gregorien.info内のこの聖歌のページ

 1925年の「王であるキリストの主日」の制定に伴って新作されたのであろうか,古い聖歌書には載っていない拝領唱である。
 

更新履歴

2023年11月23日

  •  現在の方針に合わせ,全面的に改訂した。

2018年11月18日 (日本時間19日)

  •  投稿
     


【教会の典礼における使用機会】

 後日追記する。
 

【テキスト,全体訳,元テキストとの比較】

Sedebit Dominus Rex in aeternum: Dominus benedicet populo suo in pace.
しゅは王として永遠に座したもうであろう。主は御自らの民を平和のうちに祝福なさるであろう。

 詩篇第28篇 (ヘブライ語聖書では第29篇) 第10節後半と第11節後半とが用いられており,テキストはVulgata=ガリア詩篇書に一致している。ヒエロニュムスがヘブライ語から直接訳してできた詩篇書 (Psalterium iuxta Hebraeos) とも一致している (普通のグレゴリオ聖歌がこれをもとにしていることはないので,普段はこれとは比較しないのだが,近年できた拝領唱だと思われるのでこちらも見てみた)。(これらの詩篇書についての解説はこちら。)
 

【対訳・逐語訳】

Sedebit Dominus Rex in aeternum:

主は王として永遠に座っていらっしゃるであろう。

sedebit 座っているであろう (動詞sedeo, sedereの直説法・能動態・未来時制・3人称・単数の形)
Dominus 主が
Rex 王 (主格)
in aeternum: 永遠に

● "Dominus" と "Rex" という文法的に同格の名詞がただ並んでいるので,「主が,すなわち王が」あるいは「王である主が」かと思うところだが (そして実際そういう意味でもありうるのだが),ラテン語ではこれで「主が,王として」の意味を表すこともできる (参考:山下太郎氏による解説)。英語だったら "as" が入るところ。

Dominus benedicet populo suo in pace.

主は御自分の民を平和のうちに祝福なさるであろう。
別訳: (……) 平和をもって (……)

Dominus 主が
benedicet 祝福するであろう (動詞benedico, benedicereの直説法・能動態・未来時制・3人称・単数の形)
populo suo 自身の民を (populo:民を [与格],suo:自身の) ……日本語の「祝福する」という動詞の目的語には必ず「を」を用いるが,ここで用いられているラテン語の動詞benedico, benedicere (>benedicet) の目的語は与格 (日本語でいう「~に」) をとることもあれば対格 (日本語でいう「~を」) をとることもあり,ここでは前者になっている。「祝福するであろう」をちょっと言いかえて,「自身の民よいことを言うであろう」というふうに考えれば,与格が用いられていることが感覚的に納得しやすいと思う (ちなみに実際,"benedicet" を分解すると "bene" は「よく」という意味,"dicet" は「言うであろう」という意味である)。
in pace 平和のうちに,平和によって,平和をもって (pace:平和 [奪格]) ……教会ラテン語における「in + 奪格」は手段・道具を表すことがある。

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