左ほほで育った破裂しそうな口内炎に怯えた一晩に考えたこと
違和感があって鏡で口のなかをのぞいてみると、小さなあずきができていた。
口内炎だ、めずらしい。
まあ、そんなこともあるよなぁと放っておいた。
1時間ほど経ってもう一度鏡をのぞき込んでぎょっとした。
あずきが、急成長を遂げて枝豆くらいになっていた。
口内のうすい皮に覆われた血色の豆は、今にもはじけそうなくらいにぱんぱんで。
鏡をのぞき込んだまま、怖くなった。だって、さすがにこれは普通じゃない。
これ、まだ育っていくんだろうか…
日中の出来事を思い出す。心当たりは、2つあった。
1つは、3回目のワクチン接種をしてきたこと。1・2回目は接種後も日常生活に支障がないレベルだったけれど、3回目は別のワクチンを打ったから反応が違うのかもしれない。
このまま熱が上がって、全身にいろんな副反応が出てくるのか…?
もう1つは、歯科医に行ったこと。取材なので治療的なことはしていないけれど、写真撮影時に患者さん役として、口のなかにミラーや不思議な機械が入ってきた。まさか、あのときのあれで…?
困ったとき、一番頼りになる検索方法といえばTwitterである。
「ワクチン 口内炎」と検索すると、同様にワクチン接種後に口内炎ができた人やその家族のツイートが上がっていた。
摂取会場でもらった資料の副反応欄には一切書いていなかったけれど、免疫力が落ちて口内炎などができやすくなるらしい。そうなのか。
この大きい口内炎(?)も、自分だけじゃないと思うと少しだけ落ち着いた。
あまりにも大きな豆なので、万が一にも噛んでしまったらその後1週間は染みるやつ。
絶対にかまないよう細心の注意をはらいながら1日過ごして現在は、皮が伸びた分の違和感は左ほほにのこるけれど、破裂することも、誤って噛んでしまうこともなく、何とか事なきを得た。あぁよかった。
ワクチン接種の副反応で、わたしにとって一番怖かったのがこの豆だった。
腕は重いし痛くて上がらないし、普段体温が低めなので、普通の人の微熱レベルの熱でおさまったけれど背中に大きな石をしょっているようにずっと体が重かった。
この週末で確定申告するつもりだったのに、と思いながら、やっぱり一日しんどくて、ほとんどの時間をお布団の中で終えてしまった。
今年はまだ花粉の気配も感じていないし、慢性的なドライアイくらいしか不調はない。
普段、健康面で大きな問題を抱えていないということが、どれだけ有難いことなのかということを、こういう機会に思い知る。
普段から体温が高くなってしまう病気の人は、いつも発熱している感じで日常生活を送っているんだろうか。
妊婦さんは、背中ではなくおなかに数か月間数kg分の重りをつけ続けてているのと同じだし。
外からわかりやすい不調ならこちらも配慮したり気遣ったりできるけれど、見えにくいものは難しい。気づかないまま、元気な人と同じように扱ってしまって辛い思いをさせてしまった人もいるかもしれない。
そんなことを、自分が「元気じゃない人」になってはじめてきちんと考える。
『余命10年』の茉莉ちゃんも、残り時間への不安さはもちろん、血液に酸素を上手に乗せて運べないんだから、ずっと苦しいし不調だったんだろうな。ちょうど、昨日うかがった歯医者さんでも、呼吸が浅いと集中力や性格にも影響するって話を聴いたところだし。
以前、職員会議で眠ってしまっている人に対して「眠っていることはよくないけれど、もしかしたら昨晩悩みがあって眠れなかったかもしれないし、徹夜で仕事していたのかもしれない」と言っていたのを思い出した。
目で見て分かることなんて、ほんの少ししかないのかもしれない。見えない部分まで想像して、行き過ぎて妄想のレベルになったとしても、それで誰かの「つらい」を少しだけ軽くできたらいいよなぁ。
大きすぎる口内炎が怖すぎた故、ついそんなことまで考えてしまった。