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「赤いきつね」はアホである。異論は認める。
「赤いきつね」のCMがプチ炎上しており、識者とやらが沸いてきて、的外れな指摘を繰り返しているので、イライラするので書いておきたい。
まず、指摘すべきは、これだけ置きにいった守りのCMで炎上するのは、アホである、ということ。
タレントCMはリスクがあるからアニメでいこう。そうだね、制作費も抑えられるしね。新海誠風にしようか。いいね、流行ってるしね。でもさ、似せすぎたらパクリって言われるよ。大丈夫、おれ、いい制作会社知ってる。いいね、そこに頼もうか。マクドナルドのアニメCMがバズってるから、二匹目のドジョウを狙いたいな。いけるよ、あれがバズったからさ。これは絶対クレームこないし、みんな「いいね」ってしてくれるよ。突飛なストーリーなんていらないよ。アイデアなんて出さなくていい。女の子が夜に食べてるだけでいいんだ。クレーム怖いからね。
で、炎上である。アホかと。前例ありありの創造性を感じない守りのCMでスベるってめちゃくちゃ恥ずかしい。
いろいろ言いたいことはあるが、一応、炎上の理由を置いた上で話そうか。
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炎上の理由
「女性が頬を赤らめる描写が性的」との批判
「オタク向けで不快」との声
逆に「何が問題なのかわからない」という反論
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で、わらわらと識者が専門家が素人が業界人が、沸いてきてるんだけど。もっともな指摘をしてくれてさ、間違ってないんだけど、これまた、くだらない。
この騒動の根幹にあるのが、このCMが、つまらないこと。
その証拠に、でも、これおもろいじゃん、という声が圧倒的に少ない。雰囲気だけを切り取ったいい感じのCM。賛否の賛がないから否が目立つ。だから、クレームの声が目立つって構造だ。
大手メーカー管理職が、謝罪も差し止めもしない東洋水産と制作会社の対応を「毅然としていて評価できる」と評価していたり、料理研究家のリュウジ氏がXで「一昔前のグルメ漫画で育った人間からすると、頬を染めて食うのはデフォルト」と発言していたり、女子SPA!の記者が『CMを「性的」と捉えるのではなく、「グルメ」として解釈すべき』だと分析。総じて取り下げる必要はない、と言っているわけだけど。だれも内容とかストーリーを褒めていない。
「置きにいったCM」の悲しき末路である。擁護はあれど、誰も「このCM好きだけど」とか触れもしない。つまり、騒動以外、何も残せていない。本来の目的は「赤いきつね」を好きになってもらったり、食べたくなってもらったりすることだったんでしょう。くだらんCMのディティールの論評が溢れてる時点で、このCMは失敗なんだよ。
これからは、クレーム覚悟でつくるべきなんだと思うよ。
たしかにさ、タレントCMのリスクは高まっている。むちゃくちゃなクレームも多い。SNSでCMの感想がダイレクトに言えちゃう時代だから、え、そんなことで、なんてクレームもめちゃくちゃくる。だからといって、守りに入ると、賛もなく否だけが目立つ。「差し止めしないのは毅然としていて評価できる」とかCMを流した後で評価してるけどさ、CMをつくるときに賛否両論恐るるに足らずという毅然とした姿勢でつくるべきだったんだよね。
あと謝罪か、謝罪しないか、で、論評されているようだけどね。これも、また的はずれな気がするな。
ビジネスということを考えたら、謝罪か、利用するか。の2択であるべき。いちばんよくないのは、今回のダンマリ。謝るべきか、そうじゃないかを見極めたら、この注目を集めた今だからこそできるCM制作に入るべき。なんでもいいよ。絶対にクレームのこないタレント(柴田理恵とか)とかで、実写でつくってもいいし、モザイク入れて流してもいい。でも、無視はいけない。クレーマーを相手にしようよ。だって、クレーマーだって「お客様」なんだから。
東洋水産は、今さらそんなこと言われても遅いよ。なんて、思うことはない。こんな深夜に、CM屋に電話しても、彼らは「え、今からですか」と言いながらも喜んで朝までに企画を考える。そういうのが大好きな人種だ。世の中に面白いものを投下したいと思って、この業界にいる。そういう人がいいものをつくる。
だからさ、彼らに置きに行ったCMをもう作らせないでほしいな。前例を踏襲した「○○っぽい」をオーダーしないでほしいな。クリエイティブなんて、すごい人ほど、みんな無理難題が好きで、それを解決できたときがいちばん気持ちいいんだから。
今回の件で、なんでもクレームつけるな、という嘆く声が多いけど、そこは変わらないし、むしろそこを歓迎するべきだと思うよ。SNSのクレームなんて、もう変数が多すぎて反応が読めないもんだと思ったほうがいい。むしろクレーマーと戯れる根性があったほうがいい。
2月16日、つば九郎の中の人が亡くなった。彼こそがそれを体現していたと思う。クレームなんて恐れない。ファンとアンチと戯れろ。その姿勢が許容されたら、みんなファンになる。
つば九郎に、合掌。
きょうの音楽は、We Are The Swallows
愛されたら、クレームすらエンタメになる。