お勧めの本『マネーボール』 〜メジャーリーグの採用活動に学ぶ〜
ビジネスにおいて数字は大切ですが、ビジネス以外の例えばスポーツでも同様です。
もっとも、スポーツビジネスという言葉もありますから、一概にスポーツがビジネス以外ではないかもしれませんが・・・。
そんなスポーツにおいても、数字がたくさん使われています。
スポーツの世界では、それを「データ」という言葉で使うことが多いですが、プロ野球の世界でも色々なデータがあり、新しい選手を取る時のスカウティングにおいても、様々な数字をもとに選手を判断します。
それは、次のような表に出ている数字になります。
投手(ピッチャー)でいえば・・・
勝利数
スピード(球の速さ)
コントロール(制球力)
スタミナ(投球回数)
防御率
打者(バッター)でいえば・・・
打率
ホームラン数
安打数
打点数
盗塁数
スカウトの人は、このような数字をもとに、即戦力としてだけでなく、数年後の将来性も見極めていきます。
プロ野球の世界においても、このように数字が多く使われていますが、ビジネスにおける需要と供給の原理原則と一緒で、良い数字の選手は魅力的ですが、色々なチームがスカウトしようとして、その人を取るコスト(契約金など)が、どんどん高くなっていきます。
だからその土俵で勝負しようとすると、資金力のあるチームが強くなり、それはまさにレッドオーシャンとなってしまうのです。
「レッドオーシャン」とは、文字通り「血で血を洗うような真っ赤な海」のようなイメージで、競合がひしめき合う激しい競争状態にある既存市場です。
だから、資金力のないチームは数字の見方を変えて、競争力の少ない土俵(ブルーオーシャン)を見つけることが大切になります。
ブルーオーシャンとは、文字通り「のどかで穏やかな青い海」のようなイメージで、競争相手のいない未開拓市場です。
一般的には、自由な発想やユニークなアイディアから生まれるものといえます。
ビジネスにおいても活用できる、プロスポーツチームの事例をご紹介します。
これは「マネーボール」という本で紹介されている、メジャーリーグのあるチームの実話です。(私が好きな本の1つです)
これは、アメリカのメジャーリーグベースボール(MLB)の球団ゼネラルマネージャー(GM)に就任したビリー・ビーン氏が、セイバーメトリクスと呼ばれる統計学的手法を用いて、MLB随一の貧乏球団をプレーオフ常連の強豪チームに作り上げていく様を描いたストーリーです。
資金力のないこのチームでは、数字の良い選手を取る競争力がありませんでした。
そこでこのチームでは、数字の見方を変えました。
分かりやすく言うと、表に出ている数字の良い選手を取ることを諦め、見方を変えてチームが勝つために必要な別の数字をはじき出し、その数字が高い選手を取ることにしたのです。
その数字がどのようなものかというと、3つほど事例をご紹介します。
①出塁率
表に出てくる「打率」という安打(ヒット)を打つ確率ではなく、塁に出る確率が「出塁率」です。
ビーン氏の定義に基づくと「出塁率」とは「アウトにならない確率」となります。
一見似ていますが、見方がまったく変わりますよね。
②選球眼
一般的に「出塁率」を上げるために大切にされる数字は「安打数」です。
しかしこの表に出てくる数字には、資金力のあるチームがワンサカ寄ってきます。
しかし「出塁」するためには「安打数」が少なくても「四球(ファーボール)数」が多ければ良いという見方もあります。
極端な言い方をすると、仮に打てなくても、ボールを見極める力(選球眼)があって、四球を選ぶことができると、出塁できるのです。
このように表に出てこない数字である「選球眼」を重視したのです。
③与四球
選球眼を重視することの裏返しで、投手(ピッチャー)が四球を与えている数の少なさを重視したのです。
高校野球で150kmのスピードで投げる投手は注目されますが、与四球の少ない投手がニュースになることはないかもしれません。
このように、数字の見方を変えるだけで、平凡な選手が良い選手に変わっていくのです。
その結果、資金力のないチームであっても、チームが勝つために必要な選手を取ることができ、そのチームの未来が変わっていくのです。
ちなみにこのチームとは、メジャーリーグの「オークランド・アスレチックス」というチームで、今ではプレーオフ常連の強豪チームになっています。
数字は事実を正しく知るために重要ですが、どの数字を見るかによって、その価値は全く変わっていきます。
その時に大切なことは、数字の因果関係を把握することです。
今回のプロ野球の事例でいえば、優勝するために最も大切な数字は勝率です。
チームは優勝を目指して戦いますので、この数字が最も大切になります。
ではその勝率を上げるために、試合に勝つことも必要ですし、それと共に試合に負けずに引き分けに持ち込むことも大切になります。
試合に負けないためには、点を取られなければ良いので、良い投手を含め守備力が大切になります。
一方で、勝つためには、点を取らないといけないので、良い打者を含めて攻撃力が必要になります。
では、そのためにどうするのか?
どんな数字を大切にしていくのか?
このように数字をもとに因果関係を考えていくと、今回の事例のような固定概念に捉われないアイディアに繋がっていくのです。
ビジネスにおいて、数字とアイディアというと一見相反するもののように感じるかもしれませんが、数字の見方を変えると新たなアイディアが生まれ、その先の未来が変わっていくのです。
数字力に興味のある方は、こちらもぜひご覧ください。
思考で差がつく「数字に弱い」社会人のための苦手意識を克服する方法: 「難しい」の原因は9割が思い込み