進学先で順調なスタートを切るために 新中学生・高校生の春休みをどう過ごす?
ほとんどの中学受験生・高校受験生は入試を終え、受験生としての生活にいったんピリオドを打ちました。 小学6年生・中学校3年生は卒業式を間近に控えて新しい生活への期待と不安を胸に毎日を過ごしているのではないでしょうか。
受験から開放されて今まで観ることのできなかったテレビや、マンガ、ゲーム、友達との遊びを満喫しているお子さんも多いことでしょう。 一方で、勉強面では進学する中学・高校からの課題や宿題が出ていたり、中学受験や高校受験で通っていた塾の「進学準備講座」を継続して受講する方、 「学校からの課題や通塾の予定はないけれどなにかやっておいたほうがいいかしら…」と不安になっているご家庭も多いのではないでしょうか。
中学・高校に入学すると、
・それまでの生活や勉強の質・量の違いに戸惑い、すぐに周りに取り残されてしまう子
・進学先での新生活を通じて、さらにステップアップ出来る子
で、入学後すぐに差がついてしまいます。その差は、入学前の心構えの差が大きく影響するようです。
卒業式を終えてから4月の入学式までの春休みは、入学前の準備をするためにあらゆる意味で大切な期間です。 順風満帆な新生活を過ごすために、先輩たちの「入学前の春休みにこれをやっててよかった!」といったアドバイスや「入学前にこんなことをやっておけばよかった…」といった後悔の声などから 「新中学・新高校生活に向けて春休み中にどんな準備ができるのか」をご紹介します。
1.入学前の春休みをどう過ごす?
受験からの開放感や新しい生活への期待から「春休みはまるまる遊びほうけてしまった」という子どもは多いもの。
高校・中学入学前の春休みは、友達との遊びや、入学準備の買い物などであっという間に終わってしまうものですが、この時期に何を考え、どう過ごすかで、新生活のスタートに大きく差がつくと心づもりをしておいたほうがよさそうです。
新中学生と新高校生、また、私立国公立の中高一貫校に進む生徒では春休み中にしておきたい準備内容は異なります。 特にレベルの高い学校に合格した生徒は、理解力が高い上に目標のために努力ができる同級生たちと一緒に学んで行くため、遅れを取らないためにはこの期間から準備しなくてはいけません。
■新中学生 春休みにはどんな学習が必要?
「小学校から中学校への進学において新しい環境での学習や生活へうまく適応できず不登校などの問題行動につながっていく事態」を「中1ギャップ」と言います。 学習面では、授業が教科ごとに先生が変わり進度も早くなります。定期テストではクラスメイトとの学力差が明確になり、それが部活動や友人関係に影響することも。 公立中学に進学する場合、学習内容がそれほど難しくなるわけではありませんが、数学や英語に関しては春休み中に準備をしておきましょう。
①算数(数学)
小学校の算数の勉強が定着していない場合、中学の数学の勉強に対する苦手意識が生じてしまいます。四則計算・分数・小数計算は中学1年生の授業の基礎になりますので、ここで小学校の算数を復習しておきましょう。 書店に並ぶ「小学校の学習の総復習」系の薄い問題集を1冊やるのもおすすめです。
②英語
「児童英語研究所」が2021年3月に「英語教育を受けている首都圏在住の小学生の母親590人」に調査したところによると、 「英語教育を受けている小学生の22.9%が英検3級以上(中学卒業レベル)を取得済であるという結果が明らかになりました。
とにかく、英語は「今まで英語に取り組んできた子」と「英語に触れてこなかった子」とで大きく差がつく教科です。 小学校時代から英語に取り組んでいるならば、確かに高校入試にも有利に働きますが、やってこなかったからと言って中学校での学習についてそれほど心配する必要はありません。 少しでも中学校入学後の英語学習の負担を少なくしたいと考えるならば、簡単なあいさつ程度の会話や、アルファベットの読み書き、小学生で習った英単語の読み書き程度が出来ていれば、中学入学後の学習スタートがスムーズになります。
英語への苦手意識を付けないために、春休みは英語に触れさせるよいチャンスです。ぜひYouTubeや、海外のキッズ向けの映画などの映像教材などを活用し、英語や国際文化への関心を付けることをお勧めします。 小学校時代の英語学習の経験以上に、「英語が好きか」「国際文化に感心があるか」が、子どもの中学以降の英語力に大きく影響するのではないでしょうか。
■中高一貫校に通う場合に気を付けたいこと
「中学受験が終了したら……」中学受験を経て私立中に進学が決まっている方は、受験期間にこんな言葉を合言葉に頑張ってきたご家庭も多いことでしょう。 コロナ禍前の春休みでは、受験から開放されて、家族旅行や小学校時代の友人との遊びで忙しい日々を過ごしていた新中1生でしたが、旅行や外出がままならない現状で、受験後の放心状態のまま過ごしてしまう子どもが増えているのではないでしょうか。 私立中学に進学する場合、公立中学と大きく違うのは、授業の進度の速さです。 多くの中高一貫校では中学のうちに通常の高校のカリキュラムに突入しますが、早くも「中だるみ」のゾーンに突入してしまった場合は授業についていけなくなる可能性も。 そうならないためには、受験直後の春休みに、中学受験で身に付けたハードな学習習慣を完全には捨て去らないことが鉄則です。
中学受験塾に通っていた場合、これまで通っていた塾の「中学準備講座」に参加される方もいらっしゃるでしょう。 講座に参加しない場合も、春休みには受験生時代に立てていた学習スケジュールに近いものを作成し、規則正しい生活と、学習時間の確保を心がけてください。
特に遠くの学校に通われる予定のお子さんは、4月からの起床時間を念頭に、一日のスケジュールを立てて過ごす必要があります。 その場合、お母さんはお弁当作りのために子どもよりも早く起床する必要がありますので、この機会に一緒に早起きの練習をするとよいですね。
数学は中学受験時代の勉強が役立ちます。進学先の中学校から配布された資料を基に、中1学習範囲で役立ちそうな単元を復習し、ハイスピードで難しくなる数学に備えましょう。 数・国・理・社は中学受験時代の「学習貯金」が役立ちますが、英語だけはそういうわけにいきません。
教育に熱心なご家庭でも早い学年から中学受験体制に入っていた場合、小学校時代に英語学習を一切やらず中学英語をスタートする不安を持たれているのではないでしょうか。 我が子が私立中学に入学して驚いたことの一つに「海外生活の経験のある子や、毎年の夏休みに英語のサマースクールに通っていた子、受験勉強と公文英語などを並行していた子、インターナショナルの幼稚園に通っていた子など、 『幼い頃から英語が身近にあった子』が想像以上に多かったこと」があります。
ゼロからのスタートの場合、あまりの進度の速さに一度諦めてしまうと、小学校時代に英語学習を先取りしてきた子どもとの差は縮まるどころかどんどん開いてしまうことを実感しています。 特に難関校や、グローバルな校風で英語学習に特色のある中学に進学予定のお子さんは、躓きのきっかけになる英語への苦手意識対策に、春休みに英語塾や家庭教師などで集中的に準備することをお勧めします!
■新高校生 高校入学前にやっておきたいのは……
中3生は高校進学後、よいスタートを切るために、この春休みにどんな過ごし方や学習をしておくと良いのでしょうか?
高校では、勉強の量は増え、進度は速くなります。進学校の場合は大学受験を見据えた授業がすぐに開始。 高校受験で身に付いた「学習習慣」をこの春休みで途切れさせることなく、毎日1時間でも、机に向かって勉強する時間を作ることが入学後、高校の学習にスムーズに付いていく秘訣です。
春休みは高校受験時に取り組んだ「中学学習範囲の総復習」から、苦手分野を復習しましょう。 進学校の場合、大学受験に対する意識づけが早期にできている子どもほど、成績が良いもの。
特に中高一貫校に高校から入学する場合、6年間のカリキュラムにより中学で高校の学習範囲を学んできた、中学から上がってくる生徒と同じラインに立つことになります。 中高一貫校では中学のうちから生徒に「大学進学への意識づけ」が行われているため、学力だけでなく、大学進学に対する熱量の差に圧倒されることがないよう、春休み中に準備と方向性決めをしておきましょう。
2.勉強以上に注意が必要! 進学後の生活の変化
学習面だけでなく、生活の面でも、小学校から中学校、中学校から高校では大きな変化があります。 進学後にギャップによるストレスで悩まないために、なるべく明確に新生活をイメージしておくのがお勧めです。
■小学生と中学生の違い
①人間関係
地元の公立中に進学する場合、私立中に進学する友人と離れ離れになったり、他の小学校からの生徒と同じクラスになったりと、新たな人間関係を構築する努力が必要です。 中学では、部活動や生徒会活動が開始し、友人関係だけでなく、先輩との上下関係も初体験。入学後、人間関係のストレスで悩む子どもは少なくありません。
②スマホの所持率UPでSNS利用トラブルも
スマホを中学の入学祝いにもらう子どもも多く、使い始めの高揚感から小学校時代の友人や、中学のクラスメイトとライングループで繋がり、ひっきりなしに通知が鳴っているような状態になる子も(特に女子)。 中学生のSNSのトラブルは毎日のようにニュースになっており、親にとっても悩ましい問題です。家族の中でしっかりとルールを定め、ある程度のフィルターや制限をかけることも必要かもしれません。
③部活動が開始
多くの中学生にとって、「部活動」が生活や関心の多くの割合を占めるようになります。朝練や放課後の部活動で家に居る時間が少なくなり、土日も練習や試合で家をあけることが多くなり、家族との時間はめっきり減ってしまいます。 部活での師弟関係や上下関係、友人関係で悩む子どもも多く、体力的・精神的に大きな負担となりますが、中学の部活で得た経験や学びは子供を大きく成長させてくれるでしょう。
④内申書を気にする必要
高校進学においては「内申書」も合否の大きな基準となるため、小学校生活ではありえなかった「人の評価を気にすること」「評価のために自分の意志とは違う行動をすること」も必要になってきます。 子どもが「中1ギャップ」に陥らないためには、事前にこういった心構えをさせる機会が必要なのではないでしょうか。
■中学生と高校生の違い
今年から成人年齢は18歳に引き下がり、成人一歩手前の高校時代は、中学時代とは違い、「自分が理想とする大人」になるためのトレーニング期間です。
①通学
公立中学の場合、徒歩圏内の学校に通うことがほとんどなので、朝練などがない場合は比較的ゆっくり家を出ても学校に間に合いますが、高校は公共の交通機関を使って通学に長時間かかる場合もあります。 部活動の朝練がある場合は、5時台に家を出る、という子どもも少なくないようです。中学時代には寄り道が禁止されお金を持たずに通学していた子供たちも、登下校時に友人と寄り道や買い物などでお金を使うケースも増えていきます。
②科目数・定期テストの日数・課題が増える
授業内容も大きく変わります。各科目が細かく分けられ、大学受験や就職にむけて、より専門的な学習内容になります。そのため、定期テストの科目数も増え、日数も増える可能性があります。 課題も中学に比べると多く出されるため、机に向かう時間は自然と増えるのではないでしょうか。
高校2年生からは「理系」「文系」、「国立大進学」「私立大進学」などのコースに分かれる学校も。その場合、進学する場合は進学したい大学や専門学校の試験科目を、就職したい場合はどういった分野の仕事に就きたいのか、1年生の時点で意識することが必要です。
③入部率は減り、アルバイトを始める生徒も
中学では生徒のほとんどが入っていた部活ですが、高校では部活に入らない「帰宅部」の生徒も増えてきます。中にはアルバイトをする子もいるでしょう。 アルバイトは「お金を稼ぐこと」の大変さを知り、自分でお金の管理を学ぶ良い経験になる一方で、勉強や学校生活がおろそかになる危険性も高いため、注意が必要です。
3.新中・高生が入学前に準備していること
新中・高生は、制服や教科書・参考書などの準備以外にどのような物を購入し、どんな準備をしているのでしょうか。 学校生活をスムーズにスタートさせるために、ぜひ参考にしてください。
■入学準備 新しい環境で必要なもの・こと
ー春休み中に購入するとよいものー
・電子辞書や、タブレット端末など
持ち運びに便利な電子辞書やタブレットは中・高の勉強にあると便利なツールです。授業中に辞書を使うことが増えてきますが、「重たい紙の辞書をひくのをいやがっていた子どもも、電子辞書を使用するようになってからは積極的に辞書を引くようになった」という保護者の声も。
中学校や高校によっては、購入が必須になる学校もあるため、機種などに関しては、オリエンテーションや先輩保護者のアドバイスを確認してください。 通学に公共の交通機関を使用する場合、タブレットに学習アプリをダウンロードしたり、電子辞書に入っている学習アプリを活用し、電車・バスの中など、スキマ時間で勉強できるメリットも。
ー春休み中にやっておきたいことー
・通学路をチェックしておく
特に進学先の学校が遠い場合は、通学中の混雑や乗り換えなどに戸惑わないように、実際の登校時間に合わせて春休みにあらかじめ親子で予行演習をしてみてはいかがでしょうか。 新学期は定期券の購入窓口も混雑します。定期券の事前購入も忘れないようにしてください。
・支援金制度についてチェック、申請する
各都道府県には、授業料負担だけでなく入学金やその他入学手続きの際に必要な費用を減らすことができる支援制度があります。家庭経済状況に合ったものがあれば、申請書を取り寄せて締切日までに申請をしてください。
・塾や家庭教師を検討する
受験が終わったら、すぐ次の受験へ意識を切り替えることも重要です。中学・高校受験で通っていた塾の「新学期準備講座」で学習の準備をし、そのまま中1・高1でその塾に通い続ける家庭もあるでしょう。 しかし、高校受験塾、中高一貫校生向けの塾、大学受験塾・補習塾など、状況に合わせた専門塾を利用するのが、希望の進路に近づくためには有効なのではないでしょうか。
多くの生徒が塾を探し始めるタイミングとして「最初の定期テストが終了した6・7月頃」があります。 初めての定期テストの結果から「ひょっとしたら学校の授業についていけないかも……」と考え、子どもや親の意志で塾探しをスタートする場合、口コミなどで評判のよい塾は地域によっては既に定員いっぱいで募集が締め切られていることもあるようです。 進学実績の高い人気の塾に入りたい場合、中学生であれば、小5、6年生から高校受験を見据えて入塾している生徒が多いのだとか。 受験終了後のなるべく早い段階で塾や家庭教師を検討し、春期講習に申し込んだり、体験授業や説明会に参加することをお勧めします。
■イマドキの新中・高校生は入学前から友達づくりをスタート!
「LINEリサーチ」が2020年4月に高校入学予定の受験終了後の男女に対し「高校生になる前にやっておきたいこと」をアンケートした結果によると、「ダイエット」「勉強」「筋トレ」「断捨離」などに続き、「同じ高校になる人と先につながりをもっておく」という回答がありました。
「同じ高校になる人と、入学前につながりを持ちましたか(持とうと思いますか)」という質問に対しては、76.5%が「つながりを持った(持ちたい)」と回答しており、入学後の人間関係を既に警戒している様子が見えてきます。 友達とのつながり方として一番多かった回答は「SNS」。中でも「インスタグラム」「Twitter」「LINE」で《入学先が一緒である子を探す》という回答が。SNSの利用は低年齢化しており、新高校生だけでなく新中学生(私立・公立)も同じような状況なのではないでしょうか?
数年前に公立小⇒私立中学に進学した我が家の娘も、受験終了後に購入したスマホを使って、すぐに友達探しをしていました。 リアルで会うわけではありませんでしたが、入学前には進学先の学校名のLINEグループが既にできており、食事中にもLINEの通知が鳴っている状態でした。
子どもたちの「新しい学校で仲間外れになりたくない」という気持ちは十分理解できるため、黙認してしまいそうになりますが、インスタグラムを覗くと溢れている「#春から〇〇(学校名)」というタグなどからのつながりは、少し危険な気もします。
合格後のウキウキしたこの時期だからこそ起こりうるトラブルに巻き込まれないよう、親は子どもの行動に注意しておく必要がありそうです。
4.まとめ 将来について入学前に家族で話し合いをしておこう
「どんな中学・高校生活を過ごしたいか」を入学前にイメージすることは、余裕を持って充実した中学・高校生活を過ごすためには必要なことです。勉強の仕方・部活動や学校生活への取り組み方を間違えたまま、漠然と学年が上がってしまったら、時間の無駄になりかねません。
ぜひ入学前に、将来の目標を親子で話し合い、逆算して3年後にどこを目指すべきか一緒に考えてみてください。その際には「高校図鑑」、リリース予定の「大学図鑑」を活用し、具体的な進路を親子で話すためのきっかけにしていただけると幸いです。
また、「オンライン家庭教師のラコモ」では、充実した中・高生活を経て有名大学に進学した家庭教師の先生がたくさん在籍しています。こういった先生から、中学・高校時代の過ごし方のアドバイスをもらうのもおすすめです! 「単発授業」「春期講習」を設けている先生もいるので、春休みに小・中の学習の復習、新学年の予習にぜひ活用してください。
思春期・反抗期を迎える中学・高校時代は精神的なストレスも大きく、学校・部活・塾などで多忙になり、不安を感じるお子さんも多いことでしょう。 日頃からの親子のコミュニケーションを大切にして、希望の進路に進むためのサポートをしていきたいものです。