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教員採用倍率低下にみる教育の質

今日は教員の倍率に焦点をあてた内容を書いていきたいと思います。最近よくニュースでとりあげられる教員倍率。各都道府県で教員採用の倍率を毎年発表しています。

単純に仮説として

教員倍率が高ければ、それだけ優秀な教員が先生として採用され、
教員倍率が低ければ、能力がそこまで高くなくても教員になれる

と考えられますよね。そして、能力がそこまで高くない方が教員になるということは、日本教育の質も低下してしまうということになります。

まずは、全国の教員採用試験の倍率を見てみましょう。以下に各都道府県別の倍率が確認できますので、興味のある方はみるといいと思います。

まず、注目すべきなのは高知県ですね。小中高ともに高い水準の倍率を誇っています。前年比では低下していますが、依然として他都道府県に比べて高いです。小学校教員については8.1とダントツで高いですね。高知県の教育が非常に気になります。次に高いのが、奈良県(5.8), 沖縄県(4.7), 徳島県 (4.6), 兵庫県 (4.3), 京都府 (4.1)となっています。それ以外は4未満となっています。ちなみに東京は3.1、大阪は3.7となっています。
[※小学校教員の倍率を参考指標としています。]

続いて、問題なのは倍率が低い都道府県です。倍率が2倍を切っている都道府県は以下になります。

福岡県 (1.2)
佐賀県 (1.5)
長崎県 (1.5)
熊本県 (1.5)
大分県 (1.4)
宮崎県 (1.6)
鹿児島県 (1.8)
広島県 (1.7)
富山県 (1.6)
山梨県 (1.9)
宮城県 (1.9)
秋田県 (1.4)
山形県 (1.5)
福島県 (1.7)
北海道 (1.4)
※順不同
※小学校教員の倍率です。

実に47の都道府県のうち15が2倍を下回る倍率になっています。また、これをみてお分かりの通り、エリア別で考えると九州と東北エリアにおいて教員の確保が難しい様子がわかっています。

また、昨年よりも倍率が増加している都道府県は5、変化なしが4、倍率が低下している都道府県が38あります。

先ほどの倍率が高ければ教育の質が高くなる、という説が正しいのであれば、この事実は非常に注視すべき事実でしょう。

先日このようなニュースもあるように、これからも倍率は低下傾向が続くということも予想されています。

今見た内容に関しては、直近の2年についてでしたが、10年前の倍率はどうなっていたのかを確認してみたいと思います。

教員倍率の推移

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昭和54年度から令和2年度までのデータ (文部科学省より)
https://reseed.resemom.jp/article/img/2021/02/03/1071/3848.html

上のデータは小学校教員の受験者数、採用者数、競争率の推移を表したグラフです。こちらを確認すると、採用者数が増加傾向にあり、受験者数が低下傾向にあるため倍率が低下している、という結果になっているようです。

平成12年ごろには実に12.5倍の競争率を誇っているのはすごいことですね。確かにその年は採用者数事態が3683名ですので、今の採用者数の5分の1に当たる数字です。

ただし、これを見る感じでは、受験者数に関しては平成12年と令和2年を比べると、2000人程度しか減っていませんので、受験者数の母数はあまり変化がないということがみて取れます。

ということは、全体の母数は微減ですので、全体の受験者の質は変わってないと言えるかもしれません。(一人一人の能力がどう変わっているのかはみていないので判断できませんが)

問題なのは、採用者数が多くなっていることですね。

この採用者が増えている理由はどういうところにあるのでしょうか。

考えられるのは、以下のような理由かと思います。

・教員の離職率が増えているため
・少人数教室などが増え、1対40の構造が変化しているため
・学校数が増えているため

ちなみに話が少し脱線しますが、最高の値を記録している高知県については、このような形になっています。

https://reseed.resemom.jp/article/img/2021/02/03/1071/3848.html

平成29年を皮切りに一気に受験者数が増えています。これは本当にすごいことですね。自治体として何らかの措置があったのでしょう。

教員の離職率について

では、離職率みていきましょう。こちらは意外と報道されていないデータかもしれません。

https://news.yahoo.co.jp/byline/senoomasatoshi/20210226-00224559

こちらのデータを見ると、毎年7000人弱の小学校教員が離職をしています。

令和2年の新規採用が17000人弱でしたので、小学校教員は増加傾向にあります。確かに先日書いたこちらのブログにも小学校教員については微増傾向にあると記載をしました。

ということは、離職率が採用者数の増加につながったというわけではなさそうです。

少人数学級の増加が小学校教員数の増加なのか?

続いて、少人数学級の増加が採用数の増加につながっているのでしょうか。

https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2021/20210331.html

文部科学省によると実に40年ぶりに学級編成の見直しがあり、1学級の上限人数を40人から35人に段階的に引き下げていくということが発表されています。

どうやらこの事実が教員の採用数の増加につながっていることが予想されています。

学級の人数引き下げについては、GIGAスクール構想で1人1台の端末を活用した学びを展開するにあたり、よりきめ細やかに一人一人の学習習熟度に合わせたサポートができるようになるという理由から引き下げがあったということです。

1学級が40人から35人に変化したときにどれくらいのインパクトがあるかは分かりませんが、少人数化することにより、先生の目が行き届きやすくなり、学びの寄り添いができるようになるというのは非常に良いことでしょう。

欲を言うと20名~25名くらいまでいけるといいですが、教員の確保が難しいですね。

教員採用倍率低下 vs 35人学級化

しかしながら、35名学級になった結果、教員の採用数が増えているわけです。教員の採用数が増えるということは倍率が下がっているということです。倍率が下がるということは、教員のレベルもそこまで高い水準が求められなくても教員になれるということです。

これ自体が良いことなのかということは議論の余地があるかもしれません。

教員レベルが高い厳選された教員が40人学級をもち、教育を提供することが良いのか、それとも教員レベルがそこそこで、35人学級をもつようになることが良いのか、こればかりは蓋を開けてみなければ分かりません。

そして、この政策が正しかったのかという結果が出るのは10年スパンでみなければなりません。それが教育という分野の特異性です。

もちろん理想を言うならば、

より高いレベルの教員が35人学級を持つ

というのが理想なわけです。

高知県の受験者数増加の要因

そこで、ベンチマークすべきなのは、高知県の事例でしょう。

高知県の教員受験者数が増えたのは何が要因だったのか。最後におまけではありますが、こちらをみてみたいと思います。

こちらの記事を確認すると以下のような内容が記載されていました。

一例だけをあげると、高知県ではここ1、2年の小学校の倍率は高いのですが、だからといって、安心もできません。報道によると、「昨年は内定128人中78人、今年は150人中84人がそれぞれ辞退し、その後の2次、3次内定で補充した」というのです(高知新聞2020年12月9日)。高知は他地域よりも採用試験のスケジュールが早めなのですが(教員採用試験は日程がかぶらない限り、複数受験可能)、とりあえず内定を取っておきたいという人も多いのかもしれません。となると、受験者数が多い、あるいは倍率が少々高いからといって、それでいいとも限りません。
https://news.yahoo.co.jp/byline/senoomasatoshi/20210202-00220716

これを見る限りとりあえず "滑り止め"として教員採用を受ける人が多い、都いうことがわかります。

この事実から高知県も必ずしも受験者数が多いからといって良いわけではないようです。ただし、採用試験のスケジュールが早いなどはいいですよね。

よく言われるのが、就活と教育実習の時期が被ってしまい、結果的に教員を諦める、というケースを知り合いでもたくさんみてきました。

こういった優秀な人材を確保する機会を失っているというのも事実かもしれません。

倍率が低下している今、もう少し教員になる道が開かれていた方がよりレベルの高い教員採用につながる可能性が増えていくかもしれません。

今回は、教員採用という点において焦点をおいていきました。

非常に興味深いリサーチでした。

ぜひ今後も良い学びを実現するためには何が必要なのか、いろんな角度からみていきたいですね。



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