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子供の「やる気」塾に丸投げしても全く意味ない説 後編

さて、前編の記事では「やる気」に関する分析をしてみました。
ただ、具体的にどのような解決策があるか、という部分には言及していなかったので、後編では具体的にやる気を養うためにはどうすれば良いか、ということを書いていこうと思います。

「やる気出して」は言わない

やる気を上げてくれ!というのはほとんどの場合が保護者のご要望です。

しかし、いくらやる気を出して欲しいからといって、何も考えずに「やる気を出して」とは言わない方が賢明です。

こんな質問をしてみましょう。

「この記事を読んでいる方はどういう属性の方か分かりませんが、もっと家事のやる気上げてもらえませんか?」

この質問をされてほとんどの人がイラッとしたと思います。

それもそのはず、奥様でれば「は?私にこれ以上家事やれって?意味わからないんですけど?」となるでしょう。

旦那様であれば「いや、俺は仕事で疲れてるのに家事に協力的なんですけど?」となるかもしれません。

一人暮らしの方であれば「ていうか、今の家事の環境で自分は納得してるからほっといてよ!」となります。

まさにその通り。余計な口出しすみません。

「もっとやる気を出して」という言葉には人をイラッとさせる効果があるのです。

ですので、この言葉を使わずに、外堀から埋めていくことでいつの間にかやる気が出ていた!というのが理想なわけです。

ここまで読んで、勘のいい人はもう気づいているかもしれませんが、やる気を出させるためにはそれなりの長い時間が必要なのです。

しかし、世の中の大多数の人は即、やる気を出して欲しいが故に、安易な言葉に走りがちです。

まずは即時性を求めないこと、直接的にやる気を出せと言わないようにしてください。

なるべく早い時期から様々な経験を

やる気を出すためにはプラスになる要因とマイナスになる要因があります。プラスになる要因をより多く取り入れ、マイナスになる要因を排除していくことがやる気を上げる近道です。

まずはプラスの要因として、多様な要因があるかと思いますが、その一つとしてさまざまな体験をする、と言うことが挙げられます。教育格差という問題が取り上げられて久しいですが、実は近年は体験(機会)格差という言葉がクローズアップされています。

週末は家でゴロゴロ、学校と家の往復以外にやることは何もない・・・日常がルーティン化してしまってはいないでしょうか?実はこれ、脳科学的にも日常に変化がなくなることはマイナスである、ということが報告されているのです。

では体験格差がなぜやる気の有無に関わってくるのか。それは体験がないと将来の夢や目標が設定できないからです。

言うまでもなく、知らないことは夢にはなり得ません。親が商社マンでもない限り、小学生が「将来は商社マンになるんだ!」なんて聞いたことがありません。

小さい頃の夢といえば、戦隊モノのヒーローや、女の子であればプリ◯ュアとかでしょうか?(ちょっと例えば古いかもしれませんが・・・)

その子が成長し、大学生になると、様々な経験をし、様々な世界を知り、夢や目標が形成されていきます。さすがに大学生になって戦隊モノのヒーローになりたいと言ってる人はいないでしょう。むしろそんな人は逆に大成しそうではありますが。

要するに、様々な経験を重ねていくことで、世の中の様々なことを知り、夢や目標を形成していくわけです。

そして、本来の意味でのやる気の正体は、実は理想(夢や目標)と現実のギャップを埋めようとする欲なのです。

つまり、勉強それ自体を好きになる必要はなく、夢や目標を強く持たせることから始める必要があります。

世間では「夢を持つのは焦らなくてもいいよ」的な論調が散見されますが、夢や目標は無いよりもあった方がいいに決まってます。

そして、夢が持てないのは、体験が不足しているということも一つの原因になっているということを認識しておいてください。

やる気を阻害する要因を排除する

先ほどはやる気を引き出すためのプラス要因を説明しました。しかし、いくらプラス要因を積み重ねようとも、やる気を阻害するマイナス要因が上回ってしまえば意味がありません。

これまたたくさんの理由があるかと思いますが、その中でも特に重要かつ、みなさんが蔑ろにしているものを2つ紹介したいと思います。

健康状態を万全にする

一つ目は健康状態を万全にするということです。

小学生じゃあるまいし、何言ってるんだコイツ・・・と思われるかもしれませんが、これが結構蔑ろにされているのです。

健康状態というのは、様々な要因がありますが、具体的にいうとバランスの良い食生活、運動習慣、質の良い睡眠です。

持病などがある場合はしょうがないですが、一般的な学生で上記のようなことができていない場合は、ほぼ間違いなくやる気が阻害されています。

健康状態が万全でないと、集中力が持続しない、または集中できないということが起こります。そんな状態でやる気を出せという方が難しいわけです。

そんなことはみんな分かっているとは思うのですが、これがなかなか重視されていないのが現状です。

コンビニ弁当ばかり、運動をまったくせずにクーラーの効いた部屋に篭り、夜ふかしをする、こんな生徒がやる気を出すのは難しいのです。

このような不健康な生徒がやる気を出すのは、そこそこ多くの生徒を見てきた私自身、非常にレアケースです(前編で取り上げたような先天的に勉強ができる例外も存在)。

スマホ依存の脱却

もう一つの要因として挙げるのはスマホ依存です。私自身、学生時代にスマホがあったら、少なくとも東大に合格する可能性はグッと下がっていたと思います。

もちろん、デジタルネイティブと言われる今の世代にとって、スマホを完全に無くすことはできませんし、適切に利用すれば強力なツールになることは間違いありません。

しかし、名著「スマホ脳」にも記載の通り、現在提供されているSNSや動画サービスなどは、世界中の頭のいい人たちが「どうすればもっと利用者の時間を奪えるだろうか」としのぎを削る世界です。

ネットフリックスのライバルはなんと睡眠時間だそうで、そんなサービスを考えなしに使っていれば、勉強にかける時間や集中力が阻害されてしまうことは目に見えています。

全く使うなとは言いませんが、せめてSNSや動画サービスは家庭内で規制する、勉強時間中は物理的にスマホと隔離する(ポケットの中に入っているだけで集中力が阻害されるようなので、全く別空間に置いておく)、受験期間はスマホを持たせない、などの対策をするのがマストです。

まとめ

さて、今回はやる気にプラスの影響を与える要因と、マイナスの影響を与える要因を紹介しました。

もちろん、プラス側、マイナス側ともに、今回取り上げた以外の要因も多くあるでしょう。

なぜ今回の記事で計3つの要因を取り上げたかというと、タイトルに戻りますが「子供のやる気を引き出す主体は塾ではなく家庭」ということをご認識いただくためです。

もちろん、塾もやる気を出させる補助はします。しかし、素地が出来上がっていない生徒に塾がやる気を出すように働きかけても、暖簾に腕押しということが多いのです。

前編で書いたようなやる気を出さなくても勉強ができる生徒は確かに存在します。しかし、後天的に勉強のやる気を引き出すためにはそれなりの時間が必要です。

「勉強が分からないからやる気が出ないけど、将来目標がある」という生徒は塾で伸びやすいですが、「特に勉強する意味が分からないし、やる気もない」という生徒は、根本的に変えていく必要があるでしょう。

そしてその根本的な原因は、塾ではどうにもならない場合がほとんどなのです。ぜひやる気を出させたい方は、普段の家庭の生活から見直してみてください。

(番外編)成績上位者のリアル

これは完全に余談になってしまいそうですが、私の経験上、成績上位者というのはモチベーション維持を意識したことがない人がほとんどです。

彼らにとって勉強というのは、目標達成のために日々こなさなければならないものの一つであり、より効率的な方法を模索した結果、塾に通い始めるのです。

こんなタイトルの記事を書いておいてなんですが、SNSやネットで「モチベーションをアップさせる方法!」などと調べてるうちは、おそらく成績は上がらないと思います。

表面的な解決法を模索するよりも、ぜひ根源的な解決法を模索してみてください。

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