世界の教養:「ロリータ」
今回紹介するのは、「ロリータ」です。
ナボコフの小説「ロリータ」(1955年)は、最も素晴らしく、かつ最も物議を醸した20世紀小説の一つとされているようです。
ロシア生まれのナボコフ(1899〜1977)は、イギリスで教育を受け、同国で執筆活動を開始し、のちにアメリカに移って大学教授になりました。その過程で、読者によって好き嫌いが分かれる知識人であることを意識したわざとらしい語り口調を編み出しました。
「ロリータ」は、中年の大学教授ハンバートが12歳の少女に抱いた、ゆがんだ性的欲望を描いた作品です。ハンバートは、ある未亡人の家で幼い娘ドローレス(愛称ロリータ)が庭で日光浴しているのを目撃し、その家に部屋を借りることにします。ロリータと一緒にいたいがために未亡人と結婚までしますが、未亡人はすぐに亡くなってしまいます。ハンバートとロリータは肉体関係を持ちますが、移り気なロリータは関心を失います。やがてハンバートは真の愛に変わったことに気づいて求愛をしますが、ロリータはそれをはねつけます。
語り手であるハンバートは、言葉が巧みで表現力も豊かですが、その優雅で詩的な言葉遣いで事実をねじ曲げ、幼い少女への性的欲望という不穏な本質を隠しています。彼の説明では、誘ったのはロリータの方で、彼の性的にませた少女たちへの欲求は、悲恋に終わった幼い頃の恋愛体験の副産物だと言います。
ナボコフは「ロリータ」を書き上げたものの、多くの国で発禁処分になり、アメリカでもなかなか出版されませんでしたが、1958年に刊行されベストセラーになりました。今日「ロリータ」は、ポストモダニズム文学の特徴である”信頼できない語り手”という叙述技法を使った最重要な作例であるとして、高く評価されているそうです。
結構ショッキングで重たい内容だな、と思いました。そんな内容であるがゆえに、今回は他の記事に比べて、参考文献のどの部分を削っていくか迷いました。このような事実があったんだ、と思っていただければと思います。
参考文献
デイヴィッド・S・キダー, ノア・D・オッペンハイム, 小林朋則 訳, 文響社, 1日1ページ読むだけで身につく世界の教養365, 2018年, 274p