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わからないこと

問題は友達がいないことである。

いや、この言い方じゃ今だけたまたま友達がいないみたいだな。

ずっと友達はいなかった。

幼稚園生時代に近所の幼なじみはいたが、それっきりである。
彼女らが今どこでどんなBBAになっているか知るよしもない。
大学の学生寮で同室の友達はいたが、いじめられて逃げ出したよ……シクシクシク。

って、いやそういう話じゃない。
人に物をあげた話である。

いらない物……とつけ加えるべきか。
しかし、決して粗末な物ではない。
むしろ、気楽に差し上げるには高すぎる物だったかも知れない。
でも私には、いらない物だったのだ。
棄てるには惜しいので他人様に差し上げたのだ。

何だか話がくどいな……。

一つは柑橘系のゼリー菓子である。
地方の老舗菓子店の季節限定のゼリーである。
柑橘系の皮そのものを容器にして百%果汁のゼリーを詰めた、新年に売り出す目出度い菓子なのだ。
美食家で有名な小説家、池波正太郎もお勧めしている。

この時季にこの場所でしか買えない!
旅先でたまたま出会えば、そりゃ買うでしょう。
一人暮らしだから二個だけ買った。
一人で二日続けて楽しもうと思ったのだ。

自宅に着いてから気がついた。
私は高血圧の薬を飲み始めたばかりだった。
グレープフルーツ禁止の薬だった。
調べてみたら、その柑橘系もダメだった。

でも、どうしても食べたい!
なので、一日だけチートデイにした。
降圧剤を抜いて食べたのだ。

もぐもぐもぐ。
ああ、さわやかな柑橘系の味。
冬しか食べられないお菓子に心底満足する。

問題は残りの一個である。
どうする?
二日続けてチートデイはまずいだろう。

よし!
友達にあげよう。
となるのが普通だが、私には友達がいないのだ。

そこで思いついたのがツイッター(X)のフォロワーさん達である。
面識のある方々が数人いる。
フォロワーAさんなら明日の落語会に来るだろうから渡してしまえ。

DMでこそこそと尋ねる。
このゼリー菓子を食べてもらえるか?
OKだったので落語会に持参して引き取ってもらった。
お返しにちょっと可愛い入浴剤をもらったのが逆に申し訳ない。

老舗菓子店
銀行みたいだね

やれやれと家に帰って翌日。

Aさんのツイッター(X)に、件のゼリー菓子が写真と共にアップされた。
もらったお菓子が美味しかったとの報告。
単なるツイートである。

でも同じお菓子の写真を私もアップしているのだ。
私から貰ったとバレバレじゃないか。

やめてよ!
恥ずかしい!!

私としてはDMという裏側でやりとりしたのだから、表のツイートにはあげないで欲しかったのに。感想もDMだけにして欲しかった。
その感覚は変なのだろうか?
友達のいない私だから、人と感覚が違うのかも知れない。

そして今回は黒毛和牛である。
年末福引で当たった商品券で山のようにすき焼き用肉を買った。
3パック。1パックが約170~180gである。
残ったら牛肉のしぐれ煮でも作ればいいや、と思っていた。
高級牛肉を食べたことのない貧者の発想である。
気づくのは後になってからであるが。

すき焼き用の上質な肉は、脂身が多いのだ。
2パックをすき焼きにして食べたが、半分でギブアップだった。
脂っこすぎて食べ進まない。

大根があるから残りは入れて煮付けてしまえ!
と作ってみたが脂でギトギトしている。
一晩おいたらその脂身が白く固まったので取り除いた。
そして改めて煮立てたが、脂っこい事に変わりはなかった。
それでも頑張って食べて、お腹を下した。

おいおい!
何でそうなるんだ?
まだ170gパックが残っているのに。

そして、これもフォロワーさんにあげようと思ったのだ。
近所に住んでいるフォロワーさんを2名ほど知っていた。

DMで密かにBさんに問い合わせたところ、残念ながら不要との回答。
このBさんに関してはいつも、人づきあいが過不足なく大人だなぁと感心していた。
断られても嫌な気分にならないのだった。

そしてもう一人のご近所さんCさんにもDMで問い合わせたところOKとのこと。
さっそくその日のうちに会って牛肉を手渡しした。
これまたお返しに可愛いふりかけなどもらった。
申し訳ないけれど、こういうちょっとした気遣いが嬉しい。

その夜のツイッターにCさんのツイートがアップされた。
件の黒毛和牛の写真である。
前回のお菓子と同じ顛末である。
私があげたと丸わかりである。

葱のみの粗雑なすき焼き料理中
白滝、焼き豆腐などを入れる発想もなかった

頼むから、やめてよ!
何なんだろう、この感覚の違いは?

ツイッター上ではなく、DMという裏側でやりとりしたことは裏側で済ませて欲しかった。

たとえば、DMでやりとりして落語会のチケットを譲ったDさんは、お礼も感想もDM内で済ませてくれた。
行き届いてる!
大人の対応だ!
と思ったものである。
私はこういう対応が好きなのだ。

でも、そう考えない人もいるらしい。
あっけらかんと表側に出してしまう。

……これって……ひょっとして……と、よからぬ思いも頭に浮かぶ。
エリザベスさんに、こんな物を押し付けられて迷惑だった!!
と皆に知らしめるためにツイッターにアップしたのではないか!?

いや、それはあまりに被害妄想が過ぎるだろう。
いじめられっ子の発想である。
嫌ならそもそも断ればいいだけの話なのだし。

逆に考えれば、私はこんな物をもらうぐらいエリザベスさんと仲良しなのよ!
と自慢しているようにも取れる。
いや、それもどうなんだ?
私と仲良しと吹聴して何の得がある?

茶碗蒸しの吉宗
牛肉を買いに行った時に食べた

何だかあれこれくよくよと考えてしまうのだ。
自分がいらない物を他人にあげること自体が間違っていたのか。
失礼だったのか。
自分自身の責任で不用品は破棄すべきだったのか。
わからない。

考えて、考え過ぎた結果、たどりついた結論は。

別に私が変とか変じゃないとかいう問題じゃない。
好きか嫌いかの問題だ。

ツイッターという公でのやりとりか、DMというプライベートのやりとりか。
きちんと区別する人もいれば、あまり気にしない人もいるのだろう。

たとえば黒毛和牛を断わったBさんは、他の件でもDMで問い合わせたことはツイッターには上げずにDM内で済ませてくれる。
そこをして人間関係のベテランと尊敬するのだが。

単純にその辺の感覚の違いなのだろう。
そして多分その辺の感覚の違いが、最終的に信頼して親しくなれるかどうかの線引きになるのだろうなあ……などと思うのだった。

(とはいえ私はそうやって信頼した人に、いじめられるという人生を歩んで来たのだが。人を見る目が濁っているのか? いや、これはまた別の問題か)

そうかそうかそうだったのか……。

などと思ってるところにBさんからまたDMがあった。
「牛肉売れたみたいだね。よかったね」
って、大人だ〜!!

いや、私から先に報告すればよかったのか!
「おかげさまで黒毛和牛の嫁ぎ先が決まりました」
って……それが大人の対応だよな。

ああ、BBAのくせにいつまでたってもお子様な私である。


どっとはらい。









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