ライター必見!編集力アップにつながる「乱読」のススメ
こんにちは。エディマート代表の鬼頭です。
フリーのライターを経て編プロの経営者となった私が、自らの経験から体感した「こうしたら、仕事が増えた!」について、僭越ながら記事にまとめさせていただいています。
以前の記事で、ライターとして長く生きていくためには「編集力」を身につけておくことが重要だと書きました。今回は編集力を高めるためのメソッドの一つ、「乱読」についてご紹介します。
「乱読」といっても、何でも読めばいいわけではありません。この記事では、「どんな本を読むべきか」、また「どうやって読むべきか」についても触れていますので、最後までお付き合いくださいね。
1.商品を知らなければ、ライティングは始まらない
クライアントは、あなたを「文章のプロ」と認識し、課題解決につながる質の高い文章を求めています。商談や打ち合わせの際に、企画や構成といった本来は編集者がやるべきことをお願いされることもあるでしょう。
そんな時に「それは自分の領域ではありません」と返すのではなく、ロジカルに、スマートに返答できるようなスキル(=ライターに必要な編集力)を身に着けたいものです。
さて、編集力を磨くために最初に確実にやっていただきたいのが、あなたがアウトプットする商品の「乱読」です。書籍や雑誌、Webメディア、SNSなど、成果品となる対象について、過去事例や競合商品は必ず、複数目を通しておきましょう。
車の構造を知らない人に、車を作れるでしょうか?
完璧なマニュアルがあれば不可能ではありませんが、発注側としては不良品があがってきそうで不安ですよね。ライティングも同じことが言えます。アウトプットの商品を知らないライターに、仕事を任せることはできません。
ここで視点を変えましょう。
もしかするとライターであるあなたは、こんな経験があるかもしれません。
いわゆる「ラッキーパンチ」という現象です。クライアントのフィーリングにたまたまあった、専門性をそれほど求められなかったなど、偶然の重なりに過ぎませんので、自分の文章力と過信することなく、アウトプットする商品の乱読は必ずしてください。
2.編集力を磨くため、ライターが乱読すべき本とは?
ひとえに「編集力」と言っても、実際はいろいろな要素で構成されています。企画力や、進行管理能力、統率力、コミュニケーション能力などなど。
それらすべてを「乱読」でまかなうことは無理ですし、ライターがそこまで求められるケースは少ないでしょう。
乱読によって磨ける「編集力」の要素としては、(1)トレンドをかぎわける嗅覚、(2)最後まで読ませる構成力、(3)人を引きつけるデザイン力だと考えます。少ないと思われるかもしれませんが、ライターが身に着ける「編集力」としては十分です。
ということで、(1)〜(3)の観点でライターが乱読すべき本をご紹介します。
■乱読にオススメその1 「売れているメディア」
いきなり拍子抜けしましたか?
文学賞や本屋大賞受賞作、ベストセラー、話題を集めている雑誌や情報誌を片っ端から。ネットで探すより、書店に行ったほうが視覚的に売れている本がわかりやすいかもしれません。
WEBメディアもしかり。注目を集めている、バズっているメディアは見ておいたほうがいいです。
なぜなら、売れているメディアには理由があるからです。
なぜ売れているかを知ることは、自身のクリエイティブにも参考になりますし、クライアントにとっても有益な情報となりえます。
打ち合わせの際の、「最近話題の『◯◯◯◯』でも、やっていますよ」は、キラーフレーズとなることでしょう。
■乱読にオススメその2 「BRUTUS」
言わずと知れたマガジンハウスが発行するライフスタイルマガジン。カルチャー、ファッション、アート、スポーツ、インテリアなど、ジャンルを問わず、かつ嗅覚するどく発信していますよね。
なぜ「BRUTUS」をオススメするかと言うと、「編集の聖域が残っている」と思うからです。
出版不況のあおりを受け、雑誌の多くは部数を伸ばすことよりも、広告出稿でビジネスをしようと考えるようになった気がします。「この記事、商品やサービスを持ち上げているな」と思いながらよく読むと、じつはタイアップ広告だった、なんて経験ありませんか?
なかなか純粋な記事に出会えなくなったいま、BRUTUSの発信する切り口や見せ方は貴重です。もちろん、BRUTUSにもタイアップはありますので、すべてが聖域とは言いませんが、編集者のクリエイティビティに触れられる数少ないメディアの一つです。
ちなみに当社でも、参考資料していろいろな定期購読をしていましたが、最後まで続けたのは「BRUTUS」でした。
■乱読にオススメその3 「編集マニュアル」
さて、世の中には編集の仕事についてまとめたハウツー本がいくつもあります。それらを乱読すれば、「編集とは?」を知ることができるでしょう。
ちなみに私も、自社のレーベルから一冊、編集にまつわる本を出しています。
ただし、編集の領域はとても広いため、もしかすると編集マニュアルの乱読は、あなたに混乱をもたらすかもしれません。
もし一冊だけというのなら、私は自分の本を差し置いて、「雑誌づくりの決定的瞬間 堀内誠一の仕事」という本を強く推薦します。すでに新本はないようですが、中古で入手できますよ。
「an・an」「BRUTUS」「POPEYE」といった雑誌の黄金期を支えたアートディレクター堀内誠一氏の仕事の進め方を知ることができる一冊。DTP以前の時代に、ロゴやレイアウト、イラスト、文章まで自身で手掛けたバイタリティは、編集という仕事の崇高さや魅力を知るのに十分過ぎます。
■乱読の裏技 「本のカタログ」
乱読の量を増やす裏技として、本のカタログに目を通す方法があります。
PIE Internationalでは、広告やデザインに関するさまざまな本の年鑑、カタログを出版。たとえば、弊社でもバイブルとしていた「雑誌をデザインする集団キャップ」という本では、藤本やすしさん率いるデザイン事務所CAPが手掛けた、さまざまな雑誌がスクラップされており、この一冊だけで、何百冊もの乱読ができます。
3.編集力を磨くための、正しい乱読の仕方
私見ながらここまで、ライターが編集力を磨くためにオススメのメディアを紹介させていただきました。「ではさっそく読んでみましょう」ではなく、ちょっとしたポイントを押さえてほしいのです。
■「読む」よりも「見る」を意識
編集は「集めて編む」と書くように、全体を俯瞰して適切にプランニングする力が求められます。乱読する際は、文章を「読む」前に、メディア全体がどう構成されているか「見る」ようにしてください。
■奥付を見る
本の奥付には、制作に携わったスタッフが並んでいることでしょう。どんな役割のメンバーが、それぞれ何人携わっているか。想像より少ないスタッフであれば、優秀な編集者が潜んでいるかもしれません。
もし編集後記があれば、それぞれの編集者のキャリアや考え方にも触れられることもあります。
■「自分だったら」の旅に出る
最後がもっとも大切なポイント。「自分だったらこうする」という視点でメディアに触れるようにしてください。
自分だったらこんな特集タイトルにする、キャッチはこうつける、写真はこう撮る、デザインはこうする……。
「自分だったら」を持つことで、違いや足りていないことが明確になり、学びのレベルが変わるはずです。
私も編集者視点でメディアに触れる際は、頭の中でその編集部に所属したり、発注された外部スタッフになったりして、しばし想像の旅に出ます。
すべてに自分なりの答えを出せる訳ではありません。答えが出せないときは、それを新たな学びにしましょう。
4.まとめ
いかがでしたか?
不透明で目まぐるしく変化する世の中で、ライターの未来をより明るくするメソッドの一つが「編集力」を磨くことであり、そのための実践法の一つに乱読のススメを挙げさせていただきました。
プライベートな時間にメディアに触れるときでも、編集者視点で見る癖をつけるだけで、糧になるものが増えると思います。
ぜひ、乱読とセットでお試しくださいね。