ビートルズの演奏はうまいのか?そしてDAWの功罪
🔲ビートルズはうまいのか?
クインシー・ジョーンズ氏がビートルズを「演奏できない」とインタビューで発言し、謝罪するに至ったのは記憶にまだ新しいところ。
実際のところ、ビートルズの演奏はどうなのか?
ジョーンズ氏が付き合っていた、アメリカのトップミュージシャンと比べたらそりゃあ下手でしょう。ただ、「マザーファッカーはないだろ」と思うけれど。
ビートルズはライブで鍛え上げられたバンドで、そう言う意味で個人的には「強い」と思っています。バンドとして安定しているし独自の世界観を構築しています。
ただ粗いところは確かにある。
それが「ビートルズはうまい/下手」論争の理由だと思っています。
たぶん測る物差しの違いなのです。
でも、です。
ビートルズのそれが現代に通用するか?と言うと疑問です。
前述のジョーンズ氏の言葉を踏まえて、NONA REEVESの西寺郷太さんはこうおっしゃっています。
自分は、ビートルズの最大の功績について、「僕もポップスターになれるかも」と多くの子どもに思わせたことによってポピュラーミュージックを発展させたことだ、と思っています。
その理由は、西寺さんの言葉を借りるなら「筆じゃなくてボールペンで文字を書いてもいいんだ」という気づきを与えたことだと思います。
しかし、西寺さんは、「リズム感の画素」「クォンタイズ絶対論」と言うような独特の言葉で、リズムの大切さを語っておられます。
クオンタイズというのは、DAW(Digital Audio Workstation)の音声編集の一つで、演奏のタイミングを自動的に拍に合わせてくれる機能のことです。
🔲DAWの功罪について
DAWがアマチュアにも普及して10〜20年と言ったところだと思います。
今や10代の子どもは「DAWネイティブ」。
クオンタイズされたビートやVOCALOIDの無機質な歌声に慣れた子どもたちにとって、ビートルズ、いやロックの生演奏のような「粗さ」が理解できないとしても不思議ではありません。
つまり、「ボールペン字でもなく書道でもなく、活字印刷が当たり前になった」のです。
このことは「リズムの粗い素人演奏はもはや魅力的ではない」とも言えます。
これは、生演奏に魅力を感じる人でもどうしようもない大きな流れで、それを変えることは難しいでしょう。
DAWはアマチュア演奏をも駆逐したのかもしれません。