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「プロがこっそり実践中!TUTでトレーニングを一段階上げる裏技」




1. はじめに:TUTとは何か?

TUT(Time Under Tension)とは、「筋肉が負荷を受け続けている時間」のことを指します。
筋トレの動作において、筋肉が緊張状態を保ったまま持続的に刺激される時間とも言い換えられます。
例えば、1回の反復動作に5秒をかける場合、それを10回行えば合計50秒間、ターゲットとなる筋肉はテンションを受け続けたことになります。

従来、筋力トレーニングでは「扱う重量」「1セットあたりの回数」「セット数」といった要素が重視される傾向にありました。
しかし最近では、TUTが筋肥大における重要な要因であるという研究結果が多く示され、トレーニング効果の向上をめざすうえで「筋肉が刺激を受けている時間」をいかにコントロールするかが注目されています。
では、実際にどのように、コントロールしていけば良いのか。
その“カギ”について、迫っていきましょう。


2. TUTが注目される背景:筋肥大・筋力向上との関連

筋肥大におけるTUTの役割

筋肥大を促す要素には、「機械的張力(メカニカルテンション)」「筋損傷」「代謝ストレス」などがあるとされます。
TUTを意図的に長くすることによって、筋肉が持続的に張力を受け続ける時間が増えるため、こうした要素が相乗的に働きやすくなると考えられています。

  • 機械的張力:重量を使った運動において筋繊維が受けるテンション。TUTを延ばすことで、より長い時間テンションをかけることが可能。

  • 筋損傷:筋肉を負荷によって微細に損傷させ、修復過程で筋肥大を促す。動作をゆっくり行うことでエキセントリック局面(降ろす動き)を強調し、損傷を効果的に引き起こすことができる。

  • 代謝ストレス:筋内に乳酸など代謝産物が蓄積しやすい環境を作ることで、筋肥大を刺激。TUTを伸ばすと、酸素供給が追いつかない時間が長くなるため、代謝物の蓄積が増加しやすい。

これらの要素がうまく組み合わさることで、筋肥大の促進につながってきます。

筋力向上との関連

筋力を高めるには、一般的には高重量を扱うことが効果的とされます。ところが、TUTを重視した中程度の重量(1RMの60〜70%程度)でも、動作テンポを遅くしてコントロールすることで、高い筋力向上が得られるという報告もあります。これは、長時間の力発揮によって神経筋系に多面的な刺激を与えることができるためと考えられます。

もっとも、最大筋力を極限まで引き上げたいパワーリフターなどの競技者の場合は、やはり高重量を扱う練習が必要となります。ただし、停滞期に差しかかったときや、フォームの改善を図りたいときには、一時的にTUTを伸ばして神経筋制御を洗練させる手段として有効です。


3. TUTを意識したトレーニングの基礎

3-1. 回数・重量・テンポとの関係

TUTは、1回の挙上・降下動作にかける秒数 × レップ数という形で算出されることが多いです。たとえば「挙上2秒 + 降下3秒 = 5秒/1レップ」を10回行うと、50秒のTUTが確保できます。

  • 重量が重くなるほど、動作スピードは自然に遅くなりがち

  • 軽めの重量でも意図的に動作を遅くすれば、TUTを十分に確保できる

初級者の方は、過度に高重量を扱わなくとも、まずはフォームを安定させながら、一定のTUTを確保することを目指すとよいでしょう。中上級者の方は、重量やレップ数、セット数とあわせてテンポを計画し、どの程度のTUTをトレーニング全体で確保するかを考えることで、より戦略的な筋肥大や筋力向上を目指せます。

3-2. トレーニング頻度やボリュームとの兼ね合い

TUTを意識するトレーニングは、動作が遅くなる分、筋肉への疲労や消耗が大きくなる場合があります。
そのため、セット間の休憩時間や週あたりの頻度を調整し、オーバートレーニングに陥らないようにすることが重要です。

  • 週2〜3回の頻度で、各部位のTUTをしっかり確保する

  • トレーニングボリューム(総負荷量)とTUTのバランスを考慮し、無理のない範囲で取り組む

特に初心者の方が一気にTUTを増やすと、筋肉痛や疲労が回復しきれないまま次のトレーニングを迎えてしまうこともあります。段階的に導入することをおすすめいたします。
トレーニングボリュームの設定方法については、以下の記事を参照ください。
筆者の記事としては少し高めの設定ですが、これさえ読めばボディメイクのトレーニングメニューについて、自身で組めるようになりでしょう。


4. TUTを活かすための具体的な方法

4-1. スロートレーニング

最もシンプルな方法が、挙上と降下の動作スピードを遅くするというスロートレーニングです。たとえば「挙上2秒・ピーク1秒・降下3秒」のように、1レップあたり6秒程度をかけます。

  • メリット

    • 軽めの重量でも筋肉を強く意識できる

    • フォームを崩しにくく、ケガのリスクを減らせる

    • 初心者でも始めやすい

  • デメリット

    • 高重量を扱いにくく、神経的な最大筋力向上にはやや不利

    • 1セットにかかる時間が長くなり、全体のトレーニング量を確保しづらい

4-2. ネガティブ(エキセントリック)トレーニング

筋肉が伸びながら力を発揮する局面(エキセントリック局面)で、特にゆっくり降ろすことを意識する方法です。
挙上は比較的スムーズに行い、降下に3〜5秒かけるなど、意図的に長いネガティブ動作を取り入れます。

  • メリット

    • 強い筋損傷を起こしやすく、筋肥大につながりやすい

    • 通常より重い重量を“耐えながら”降ろす方法もあり、新たな刺激を与えられる

  • デメリット

    • 筋肉痛が非常に強く出やすい

    • フォームを誤るとケガの危険性が高い

    • 補助者が必要になるケースが多い(高重量で行う場合)

4-3. ポーズ(ストップ)レップ

動作の途中で数秒間停止し、そこで筋肉の緊張を保つ方法です。スクワットの場合はボトムポジションで2〜3秒キープする「ポーズ・スクワット」、ベンチプレスでは胸の直前でバーベルを止める「ポーズ・ベンチプレス」などが知られています。

  • メリット

    • 特定の弱点局面を強化しやすい

    • 静止時間分、TUTが自動的に増える

    • フォームを見直すきっかけになる

  • デメリット

    • 筋肉および関節への負担が大きい

    • 呼吸を止めがちになり、血圧が上昇するリスク

    • 筋疲労が急激に進むため、回数をこなすのが難しい

4-4. クラスターセットやスーパーセットとの組み合わせ

  • クラスターセット:1セットの中で小休憩(10〜30秒程度)を数回挟みながら、同じ重量や回数を複数回行う手法。

  • TUTを伸ばすことで筋疲労が大きくなる種目でも、小休憩をはさみながらならトータルの回数・ボリュームを維持しやすくなります。

以下クラスタースタイルのついての記事になります。
クラスタースタイルは、非常に画期的なトレーニング方法で欧州では結構に人気のあるトレーニング方法です。トレーニングボリュームがうまく保持できない方、レップ数が保持できない方は、解決策につながるかもしれません。
以下、参照ください。

  • スーパーセット:異なる種目を連続して行う方法。例えば「胸の種目と背中の種目」を組み合わせるように、拮抗する筋群を連続して動かす場合が一般的です。TUTを重視した種目と、ややテンポを速めて行う種目を組み合わせるなど、動作スピードを変化させながら筋肉に多角的な刺激を与えることができます。


5. 種目別のTUT活用例:BIG3編

ここでは、代表的なコンパウンド種目やマシン種目などを例にとり、TUTをどのように取り入れられるかを一緒に考えてみましょう。

5-1. ベンチプレス

  • 通常のテンポ:挙上1秒・降下1〜2秒

  • TUTを意識したテンポ例

    • 挙上2秒・頂点で1秒キープ・降下3秒(合計6秒/レップ)

    • ネガティブ重視なら挙上1秒・降下3〜5秒など

重量は1RMの60〜70%程度でも、十分に大胸筋や三角筋前部、上腕三頭筋などに大きな刺激を与えられます。
ただし、TUTが長くなるぶん、回数が少なくなりすぎないよう調整しましょう(目安として8〜12回ほど行えればベスト)。
これは難しく考える必要はありません。
わからないことがあれば、LINEやDMからメッセージいただければお答えいたします。

5-2. スクワット

  • 通常のテンポ:挙上1秒・降下2秒前後

  • TUTを意識したテンポ例

    • 降下3秒・ボトムで1秒停止・挙上2秒

    • ボトムポーズを2〜3秒取り、ゆっくり挙上する

スクワットは下半身の大きな筋肉(大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋など)を総合的に鍛えます。TUTを伸ばすと心肺にも強い負荷がかかるため、最初は重量を控えめにして、動作をコントロールすることが大切です。

5-3. デッドリフト

  • 通常のテンポ:挙上1〜2秒・降下1〜2秒

  • TUTを意識したテンポ例

    • 挙上2秒・ピークで1秒キープ・降下3秒

    • エキセントリック強調型で、降下を4〜5秒かけてゆっくり行う

デッドリフトは広背筋や脊柱起立筋、ハムストリングスに強い刺激を与えられますが、腰への負担が大きく、フォームが乱れるとケガのリスクが高まります。特にTUTを伸ばす際は、背中が丸まらないように意識してください。
正直、デッドリフトでTUTを取り入れるのは、初心者にはおすすめしません。どうしても行いたい場合には、パーソナルトレーニングを受講されることをオススメします。

5-4. ダンベル種目・マシン種目における活用:軽め

  • ダンベルフライやダンベルプレス:ネガティブ動作に3秒以上かけるなど、胸の筋繊維を強く意識。

  • ダンベルカール:上腕二頭筋が伸びきる手前で1〜2秒キープし、降ろす際もゆっくりコントロール。

  • レッグプレスやレッグカール:マシンは軌道が安定しているため、TUTを重視しやすい。フォームが安定するので、初心者の方は取り入れやすい。

ダンベル・マシン種目の解説については、どこかで映像での説明をさせていただこうかなと考えております。
noteの方は、毎日投稿しておりますのでチェックしてみてください。


6. Q&Aコーナー:TUTについてのよくある疑問

ここでは、TUTを取り入れる際によくあるご質問をまとめてみました。
ぜひ参考にしていただければと思います。


Q1. 初心者でもTUTを意識したトレーニングを行うべきでしょうか?

A. はい、筆者的には初心者の方にもおすすめです。過度に重い重量を扱わなくとも、動作をゆっくり行うだけで、十分に筋肉へ刺激を与えることができます。
またフォーム習得の面でも、ゆっくり動かすことで動作の確認がしやすくなります(筆者的には、フォームの確認でしっかりTUTを入れるトレーニングをすることをおすすめしてます)。
ただし、最初は疲労や筋肉痛が大きく出る可能性があるため、セット数や頻度を控えめに設定し、徐々に慣らしていくことをおすすめします。

Q2. 筋肥大だけでなく、筋力向上にもTUTは有効でしょうか?

A. 一般的には、筋力向上を狙う場合は高重量を扱うことが主流です。
しかし、TUTを意識した中〜高負荷のトレーニングも、神経筋の発達や筋肥大を通じて筋力増加に寄与すると考えられます。
特にフォーム改善や限界を破るための刺激として、短期的にTUTを意識した方法を取り入れるのは有効です。
ただし、最大筋力の伸びを優先する時期には、従来どおり高重量・低レップを中心としたプログラムも並行して行うことを推奨いたします。
トレーニングプログラムの組み方については以下参考にしてみてください。

Q3. TUTを意識すると筋肉痛がひどくなるのですが、問題ないでしょうか?

A. TUTを伸ばすと、エキセントリック局面での負荷が強くなるなどの要因で、筋肉痛が強く出やすい傾向があります。
筋肉痛自体は、トレーニングにおける自然な反応ではありますが、あまりにも痛みが強かったり、数日間まったく回復しない場合は、トレーニングの量や頻度が過剰になっている可能性があります。
適切な休息と栄養補給、ストレッチや軽い有酸素運動などのリカバリー手法を取り入れ、無理のない範囲で行いましょう。
以下ストレッチに関する決定版となるのがこの記事です。こちら購入いただけましたら、ほぼ自分のパーソナルが必要ないぐらいの内容となっています。

Q4. 1レップあたり、何秒程度が理想なのでしょうか?

A. 一般的な目安としては、1レップあたり4〜6秒程度がよく挙げられます(挙上2秒・ピーク1秒・降下2〜3秒など)。
ただし、ネガティブに特化する場合は、1レップあたり5〜8秒程度かけることもあります。
最終的には、ご自身の目的(筋肥大・筋力向上・フォーム習得など)やトレーニング計画に合わせ、さまざまなテンポを試しながら調整していただくのがよいでしょう。

Q5. 高回数・高TUTを行うと筋持久力ばかりつきそうですが、それでも筋肥大や筋力向上は期待できますか?

A. 高回数・高TUTのトレーニングは、筋持久力の向上に効果があるのは確かです。しかし、長いテンション維持による筋損傷や代謝ストレスの増大は、筋肥大にとっても大切な刺激となります。
最大筋力特化のプログラムと組み合わせながら、周期的に高TUTのフェーズを取り入れることで、より総合的な成長を目指せます。


7. TUTの専門的な裏づけ:筋繊維・エネルギー代謝・神経系適応

ここでは少し専門的な視点から、TUTがどのように筋肉や神経に影響を及ぼすかを概説します。

  1. 筋繊維のタイプ:

    • 速筋線維(Type II)は、高負荷・短時間の収縮で強い力を発揮します。

    • 遅筋線維(Type I)は、低負荷・長時間の収縮で持久力に優れています。
      TUTを伸ばすと、速筋線維だけでなく遅筋線維にも十分な刺激を与えられる可能性があります。特に中間的な運動強度で時間をかけることで、幅広い筋線維を巻き込みやすくなると考えられています。

  2. エネルギー代謝:

    • ATP-CP系(短時間の瞬発力)

    • 解糖系(中程度の運動時間)

    • 酸化系(長時間の運動)
      TUTが長引くほど、解糖系や酸化系のエネルギー供給への依存度が高まります。これによって、トレーニング中に乳酸などの代謝産物が蓄積しやすくなり、代謝ストレスを誘発しやすいのです。つまるところ、減量中にはもってこいなのです。

  1. 神経系の適応:

    • 筋肉が力を発揮する際、脳からの指令や筋線維の動員パターンが大きく関わります。

    • TUTを伸ばすことで、持続的に筋線維をリクルートする必要が生じ、神経系の制御能力や筋線維の協調性が洗練される可能性があります。

    • 特に高負荷を扱わずとも、動作コントロール能力が向上し、結果的にフォーム改善や最大筋力発揮時のスキル向上につながることもあるとされています。


8. トレーニングプログラムの立案と注意点

8-1. 期間設定と周期的な変化

TUTをメインに据えたトレーニングを行う際も、一定のサイクル(周期化)を設けることが効果的です。

  • 導入期(1〜2週間):軽めの重量でフォームとテンポを安定させ、筋肉痛や疲労の具合を確認しながら慣らす。

  • 強化期(4〜8週間):TUTをしっかり確保しつつ、扱う重量を徐々に増やす。種目によってネガティブやポーズ・レップなどを取り入れ、新たな刺激を与える。

  • 調整期(1〜2週間):高TUTによる疲労を抜き、軽めのトレーニングやテクニック練習に集中する。

このように、一定期間ごとにトレーニング内容の強度やテンポを変化させることで、身体が慣れすぎることを防ぎ、継続的な成長を狙うことができます。
ピリオダイゼーションと同じ感覚ですね。ピリオダイゼーションについてはこちらを参照ください。しっかりまとめてあります。

8-2. 栄養と休養の重要性

TUTによって筋肉への刺激を増やすほど、筋肉の修復や再合成に必要な栄養素も多くなります。十分なタンパク質摂取をはじめ、炭水化物や脂質、ビタミン・ミネラルなどバランスのとれた食事を心がけてください。

  • タンパク質:1日あたり体重1kgにつき1.6〜2.2g程度が目安

  • 炭水化物:トレーニング強度や体質に合わせて適切な量を摂取

  • 休養日:筋肉の回復と超回復の時間を確保

また、TUT重視のトレーニングは精神的にも負荷がかかりやすい傾向があります。睡眠不足などが続くとパフォーマンスは落ちる一方ですので、質の高い睡眠とリラックスできる時間を意識的につくるようにしましょう。
食事の取り方については、過去記事をご覧ください。
マガジンの栄養学というところから、検索できます(だいたい無料です)。


9. 実践例:TUTを取り入れたモデルプログラム

以下は、トレーニング経験の異なる3つのレベルに応じた、TUTを活用するモデルプログラムです。実際に取り組む際は、ご自分の体力や目標に合わせて重量や回数を調整してください。

9-1. 初心者向けプログラム(週2回想定)

  • 種目の一例

    • スクワット(マシンでも可):10回 × 2セット(挙上2秒・降下3秒)

    • ベンチプレス(もしくはマシンチェストプレス):10回 × 2セット(挙上2秒・降下3秒)

    • ラットプルダウン:10回 × 2セット(引く2秒・戻す3秒)

    • ショルダープレス(ダンベルでも可):10回 × 2セット(挙上2秒・降下3秒)

    • ダンベルカール:10回 × 2セット(挙上2秒・降下3秒)

  • ポイント

    • 重量は「あと2〜3回できそう」な程度に設定し、フォームを最優先に

    • セット間は1〜2分程度の休憩を取り、筋肉の感覚を確かめる

    • 同じ部位を追い込みすぎないよう、全身をバランスよく鍛える

9-2. 中級者向けプログラム(週3〜4回想定)

  • 種目の一例(分割法)

    1. 上半身プレス系 + コア

      • ベンチプレス:8回 × 3セット(挙上2秒・頂点1秒キープ・降下2秒)

      • ダンベルフライ:10回 × 3セット(挙上2秒・降下3秒)

      • ショルダープレス:8回 × 3セット(挙上2秒・降下3秒)

      • プランク:30秒キープ × 3セット

    2. 下半身メイン

      • スクワット:8回 × 4セット(降下3秒・ボトム1秒ポーズ・挙上2秒)

      • レッグプレス:10回 × 3セット(挙上2秒・降下3秒)

      • レッグカール:10回 × 3セット(挙上2秒・降下3秒)

      • カーフレイズ:12回 × 3セット(挙上2秒・降下2秒)

    3. 上半身プル系 + 補助種目

      • デッドリフト:6回 × 3セット(挙上2秒・降下3秒)

      • ラットプルダウン:8回 × 3セット(引く2秒・戻す3秒)

      • ダンベルロウ:10回 × 3セット(引く2秒・戻す3秒)

      • アームカール:10回 × 3セット(挙上2秒・降下3秒)

  • ポイント

    • 種目ごとに強弱をつけながら、ネガティブやポーズを部分的に取り入れる

    • 週の中で異なる種目やテンポを組み合わせ、多角的に刺激を与える

    • セット間の休憩は1分半〜2分ほどを目安にしながら、必要に応じて調整

9-3. 上級者・競技者向けプログラム(週4〜5回想定)

  • 例:TUT強調フェーズ(4週間程度)

    1. 高TUTデー

      • ベンチプレス:5〜6回 × 5セット(挙上2秒・頂点1秒・降下4秒)

      • スクワット:5回 × 5セット(降下4秒・ボトム1秒・挙上2秒)

      • ネガティブチンニング:5回 × 3セット(降下に5秒)

    2. 通常ペースデー(中〜高重量、低〜中レップ)

      • デッドリフト:3〜5回 × 3セット(通常テンポ)

      • ミリタリープレス:5回 × 3セット(通常テンポ)

      • バーベルロウ:5回 × 3セット(通常テンポ)

    3. 補助種目デー(スーパーセット + TUT意識)

      • ダンベルフライ(ゆっくり) + ダンベルプレス(通常ペース)

      • バイセプスカール(ゆっくり) + フレンチプレス(通常ペース)

      • レッグエクステンション(ゆっくり) + レッグカール(通常ペース)

  • ポイント

    • 高TUTのトレーニングは疲労が蓄積しやすいので、週末やオフ前などに配置

    • 重量設定はやや控えめにしつつ、フォームとテンポを厳密に守る

    • 最大筋力を落とさないためにも、通常ペースや高重量系のトレーニング日を同じ週にバランスよく組み込む


10. 今後の展望:最新研究やトレーニング手法との融合

10-1. Velocity-Based Trainingとの組み合わせ

近年、バーベルの挙上速度を計測するVelocity-Based Training(VBT)という手法が注目されています。
VBTでは、リアルタイムで挙上速度をモニターし、目標とする速度帯を維持しながらトレーニングを行います。
TUTと組み合わせる場合、降下局面はゆっくり、挙上局面の速度は一定以上を目指すなど、目的に応じて速度とテンポを同時管理することが可能になります。

こういうやつ。最近は、バーベルにつけるタイプも売ってる。

10-2. BFR(血流制限)トレーニングとの融合

軽い負荷でも筋肥大を促しやすいとされるBFR(Blood Flow Restriction)トレーニングは、血流制限用のベルトなどで筋肉への血流を部分的に制限しながら行う手法です。
TUTを重視することで、さらに強い代謝ストレスが生じると期待されます。ただし、血流制限を行う際には適切な圧力設定や安全面への配慮が必要です。

10-3. 筋電図やウェアラブルデバイス活用によるTUT管理

近年、筋電図(EMG)や加速度センサーなどを用いて、動作中の筋活動やスピードをリアルタイムに測定できるウェアラブルデバイスが増えてきました。こうした技術を利用すれば、トレーニング中のTUTを正確に測定し、セットごと・レップごとにフィードバックを受けながら微調整することが可能になります。
今後はこうしたデータ活用が、より精密なトレーニングプログラムの設計につながることでしょう。


11. まとめ

ここまで、TUT(Time Under Tension)の基本的な考え方と、トレーニングのパフォーマンスを高めるための具体的な方法や注意点についてお伝えしてまいりました。

  • TUTとは:筋肉が負荷を受け続ける時間のこと。

  • 筋肥大・筋力向上への有効性:メカニカルテンションや代謝ストレスを高め、トレーニング効果を促進。

  • 具体的な手法:スロートレーニング、ネガティブ、ポーズレップなどで動作を意図的に遅くする。

  • 注意点:疲労や筋肉痛が強く出やすいため、休養や栄養摂取をしっかりと行う。

  • プログラムへの組み込み方:目的やレベルに応じ、通常ペースの高重量トレーニングと組み合わせながら周期的に行う。

初心者の方は、軽い重量から動作を丁寧に行い、ターゲットとする筋肉への意識を高める練習として、TUTをぜひ取り入れてみてください。
中上級者の方は、停滞期を打破する手段として、またフォーム洗練の機会として活用することをおすすめいたします。
今後は、デバイスや新たなトレーニングメソッドとの融合によって、TUTの管理や効果測定がさらに正確に行える時代が到来するでしょう。

トレーニングは継続が命です。日々の練習に少しずつTUTの概念を取り入れ、ご自身の目標に向かって着実に前進していただければ幸いです。


〔参考までに〕TUTを意識したスクワット動作の一例

    (スタートポジション)
        ● バーベルを担ぎ上げた状態で背筋を伸ばす
        ● 足幅は肩幅程度、つま先はやや外向き

         ↓ (降下動作:3秒かける)

    1秒目:股関節と膝を同時に曲げ、ゆっくり下がる
    2秒目:大腿四頭筋と臀筋に意識を集中しつつさらに深く
    3秒目:床と太ももが平行orやや下あたりで止める

         ↓ (ボトムポーズ:1秒)

    ボトムで静止し、筋肉の緊張を保つ

         ↓ (挙上動作:2秒)

    1秒目:踏ん張りながら体を持ち上げ始める
    2秒目:腰が浮いたり背中が丸くならないように注意しながらスタートポジションへ復帰

12. 参考文献

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ぜひ、ご自身の目標やライフスタイルに合わせてTUTを活用し、さらなるレベルアップを目指してみてください。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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