詩集「屋久島」 その4

文責:Taka


永田にて


男が釣り糸を垂らしている

男が寝っ転がっている

風が吹いている

波がさざめいている

ここに立っていると全てがどうでもよくなる

時間がただただ流れている


宮之浦川へ


きっと人間は心の内を全て見せられないのだから

僕は川になりたい

言葉が無力であるならば

僕は川になりたい

ああ人間様 どうして君たちは理を覆そうとするのか

僕は川になりたい

高きより低きへ流れる 川になりたい

ああ川よ

君は何を考えている 何を感じている

僕に教えてはくれないか

僕も飲み込んではくれないか


三岳


不思議な縁

そこにあるのは焼酎

不思議な引力

シナリオなんてない

今宵の酒に乾杯

今夜の友に乾杯

これを呑んだら さよなら

またどこかで

縁が導くままに

きっとまたどこかで


世界へ


親父さんの目に涙

僕の顔はグシャグシャ

鼻かんで滲んだ血

「筋を通せ」

僕は親父さんに筋を通せただろうか

実の親を親父さんと呼べない僕が

島の父に通せる筋があるだろうか

僕はただただ素直に誠実に向き合わなければ

君が笑顔でいられるように

大事にしよう

僕には過ぎたるもの

愛していこう

僕に世界をくれたから


帰街


フェリーを降りる

皆それぞれの目的に向かう

別れを告げよう

「またどこかで」

雨が降っている

バス乗り場に一人

僕はイヤホンをする

街に帰ってきた

街が帰ってきた


おわり

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