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#021 弱者の戦略を地方の観光業で生かすには(ジブン株式会社ビジネススクール①)

本日は、木下斉さんのvoicyで取り上げられていた「弱者の戦略」の生かし方について、触れたいと思う。

まず、弱者の戦略とは、ランチェスター戦略の「強者の戦略」と「弱者の戦略」のうち、後者に当たる。そして、ランチェスター戦略は、第一次世界大戦の時に、イギリスのエンジニアであったF・W・ランチェスター(1868~1946)が提唱した戦争における戦闘の勝ち負けの法則が原点となっており、同じ武器であれば、兵力数で勝敗が決まるという考え方である。


1.「弱者の戦略」と「強者の戦略」の違い

「弱者の戦略」とは

ヒト・モノ・カネなどのリソースが限られた弱者が採るべき戦略。リソースがある強者と戦うことになるので、戦うスポットを局地に絞り、接近戦、一騎討に持ち込む。この勝てるスポットを探し、成果を上げていくことが重要。強者にない差別化ポイントを打ち出す。弱者の逆転の法則は「局所優勢主義」。1990年代のアップルは弱者の戦略を採っていた。

「強者の戦略」とは

ヒト・モノ・カネなどのリソースが潤沢な市場シェア40%以上の強者が採るべき戦略。戦うスポットは広域。シェアの大きさを打ち出す。弱者の戦略に勝つため、自分の直下の弱者の差別化ポイントを真似する「ミート戦略」が有効。弱者の差別化へぶつける、当てる、合わせるという意味。差をなくすことで弱者の差別化を無効にする。

2.地方のDMO(観光地域づくり法人)の事業で生かす

地方のDMO(観光地域づくり法人)の新規事業は、基本的に、十分なヒト・モノ・カネなどのリソースがなく、弱者の戦略を採る必要がある。海外プロモーションと観光アプリを例に弱者の戦略について掘り下げたい。

(1) 海外プロモーションにおける弱者の戦略

地方のターゲット顧客を欧米豪とした場合、ゴールデンルートの東京や京都等の都市を比較すると、まだまだゲストは少ない。強者の東京や京都、大阪にないもので、差別化する必要がある。例えば野菜。野菜は生産地に近いほど、新鮮なものをおいしく食べられる。鹿児島も、季節性の高い桜島大根(鹿児島市・1月~2月)やオクラ(指宿市・6月~9月)、レタス(指宿市・12月)などがある。桜島大根などは2月頃になると、桜島や鹿児島市街地の飲食店で、漬物や煮つけ等で振舞われる。そういった、季節性の高い野菜を新鮮な状態で東京や大阪で食べるのは難しいため、差別化になる。

また、戦うスポットを局地に絞るという意味では、ターゲットもさらに絞る必要がある。欧米豪のうち、ビーガン・ベジタリアン。さらに桜島大根で訴求するのであれば、根菜好きで、地方を訪れる余裕がある長期間の旅行を計画している人など。どんどん絞られてくる。もちろんマーケットの大きさとのバランスも考慮する必要がある。

さらに、局所優位をつくるという意味では、東北、四国、九州などのブロック単位や都道府県単位でナンバーワンを目指すことも重要である。

(2) 観光アプリの加盟店拡大における弱者の戦略

観光アプリを活用した地域単位のバルやCRM(顧客関係管理)を進める際に、加盟店の拡大を図る場合でも、この弱者の戦略は有効である。

特に観光CRMは日本全国で取り組まれているものの、やり始めたばかりの地域は、完全に弱者である。観光CRMは、地域の上顧客(ファン)の見える化を図り、そのファンに喜んでもらえる情報を伝達し、再訪を促すことで、地域やお店の売上増を図る取り組みである。

弱者の戦略を踏まえ、加盟店を増やすスポットを局地に絞り込む必要がある。街の繁華街やターミナル駅の周辺などが該当するが、できれば、○○通りなど、さらに、絞ることが望ましい。

その上で、CRMは、リピートが期待できるゲストを多く抱えるお店と相性が良い。飲食店やお土産屋、宿泊施設など。逆にリピート客を期待できないアクティビティのお店は、CRMは向かない。

さらに、観光CRMの競合も把握する必要がある。競合は、ゲストに手軽に情報発信ができるLINEや鉄道会社等が展開するアプリ。潤沢な資金を活用し、テレビCMやSNS等で、広域でのプロモーションを積極的に行っている。

一方、地域の観光CRMは、予算が少額であるため、広域戦でなく、接近戦・一騎討での営業が重要となる。
さらに、差別化ポイントは、自治体の公式アプリであり、自治体の公式キャラクターと完全タイアップでき、利用に際して安心感であることである。強者がマネできないポイントを押し出しつつ、アプリ会員が求める価値を訴求していく必要がある。

3.まとめ

地方の観光業は、ゴールデンルートの都市と比較すると弱者であり、原則、弱者の戦略で戦うこととなる。戦う市場を絞り、その絞った中でナンバーワンを取る必要がある。さらに、差別化についても、強者が簡単にまねできない要素をゲストに訴求する必要がる。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。


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