🎥鰯賣戀曳網（いわしうりこいのひきあみ）観ました

2021年6月13日 
ＭＯＶＩＸ柏の葉にて

「月イチ歌舞伎」について

≪月イチ歌舞伎≫って、知っていますか？
シネマ歌舞伎を毎月1週間ずつ（新作は3週間）上映してくれます。
シネマ歌舞伎とは、歌舞伎の舞台を撮影して、映画館で上映するという“新ジャンル”。
 2005年から始まっていて、30作を超えるラインナップがあるそうです。

歌舞伎に興味はあるけど、少しお高くて、なかなか気軽な感じで観に行けなかった私には、渡りに船のエンタメでした。
ムビチケカード3枚セットを利用して鑑賞しています。
そうすると、1作品当たり1,900円で見ることができます。
2019年から見始めましたが、歌舞伎が本当に身近に感じられるようになった気がします。
実は学生のころから美しい女方、坂東玉三郎さんが好きで、歌舞伎への興味のもとはこの方でした。

「シネマ歌舞伎」その魅力①

もともと、映画の種類としても「舞台」を題材にしたものが好き。
淀川長治さんもおっしゃっていたけれど、バレエ映画『赤い靴』ミュージカル映画『コーラスライン』などなど、シネマ歌舞伎もまた同様で、舞台を映画で作るとその細部にわたって画面にクローズアップになって映し出されるところが素敵なところ。
その手元、足元、表情、舞台の細部、息遣いまで大写しになって映し出される。
生の舞台の素晴らしさとは、また違う切り取り方で、舞台劇とは別の個性を持つところが大変な魅力なのです。

「シネマ歌舞伎」その魅力②

全部ではないけれど、舞台裏の様子やメイキング、特別インタビュー等も収録されている作品があります。
お得感満載です。

「シネマ歌舞伎」その魅力③

記録として貴重です。
今回の「鰯賣戀曳網」は平成21年1月の歌舞伎座さよなら公演で上映された舞台を撮影したものだそうです。
今は亡き、18代目中村勘三郎さんがご活躍の時に演じられたもの。
今回は玉三郎さんの特別インタビューが冒頭ありましたが、思い出深いこの作品がこのような形で残ったことを喜んでおられました。
舞台上、お二人が着ていた着物が並んで衣文掛けにかけられているのを懐かしむように見つめておられた様子には、なんともしみじみとした感銘を受けました。
また演者としては見ることができない舞台の様子をスクリーンで再確認できる発見もあるようでした。

「シネマ歌舞伎」その魅力④

編集や演出によって、スクリーン上に全く新しい世界観の歌舞伎が生まれている。
そして、この魅力に引き寄せられて、生の舞台にも行ってみようとなるのではないかな。

「シネマ歌舞伎」その魅力⑤

歌舞伎はいつの時代も緩急自在にその時代の空気を取り入れ、だからこそ途絶えることなく脈々と続いているのだそうです。
ジブリ作品、野田秀樹、宮藤官九郎、三谷幸喜などなど。
古典も素晴らしいし、趣向を凝らしたNEWシネマ歌舞伎も新作歌舞伎もみんな楽しめます。

そして、「鰯賣戀曳網」（いわしうりこいのひきあみ）について

三島由紀夫の作品だそうです。
冒頭の玉三郎さん談によると三島作品の中では珍しいhappy endingな喜劇。
だから、玉三郎さんはとても嬉しかったのだとか。
鰯売りの猿源治（さるげんじ）と傾城・蛍火の恋のお話。
傾城とは城（国）を滅ぼすほどの美女を指し、のちの遊女の同義語。
玉三郎さんと勘三郎さんのゴールデンコンビ、また今はトキメク松本幸四郎さんの博労役や、シネマ歌舞伎を見るうちに目が離せなくなってきている片岡亀蔵さんもそれぞれ魅力的です。
玉三郎さん演じる、蛍火の女性像が面白いと思いました。
もとは丹鶴城のお姫様、たまたま通りかかった鰯売りの声に魅せられて城から飛び出たところで人さらいに会い、遊女として売られてしまう。
しかし、彼女は芯が強い。
人並外れた美貌と品位で他を寄せ付けぬほどの傾城として存在する。
そして心では、かの鰯売りに再会できることを念じ続けている。
恋が成就し、二人して旅立つ時にも、もとは御姫様、その気迫ですべての者たちをひれ伏せさせてしまう。
一方、声高らかに鰯売りの口上に声を張る、その凛々しさ、かっこよさ。
晴れて自由の身となって、望むは城に戻ること、両親に再会することではなく、愛する人と添い遂げること。
強くて、自分をちゃんと持っている自立した女性なのだ。
すばらしい。

おまけ

演目名は、縁起を担いで割り切れない奇数個の漢字で構成されているのだそうです。
当て字や当て読みしたものが多いため、小難しい漢字が多いのはそのためだとか。