仕事で役立つ折衷案の見つけ方
ケーキの切り分け問題に見る、問題解決の手法
「半分に切る」と口でいうのは簡単だが、実際には人間である以上完全なる均等には分けられない。
ケーキがショートケーキだったら、イチゴが何個乗っているのかとか、間にどれだけイチゴがたっぷり入っているかとか、そもそも切り分けた土台部分の大きさも違うかもしれない。
ここで正解として示されるのは、「Aさんが切り分け、切り分けたうちどちらを取るかはBさんが選ぶ」という方法だ。
Aさんは自らの手で切り分けた。Bさんは自らの意思でどちらにするかを選んだ。ケーキを分ける過程を「切る」と「選ぶ」に分解し、それぞれに主体性を与えたのがこの方法の秀逸なところだ。
納得を生み出す技法
このような「お互いに納得づくで合意させる知恵」というのは世の中の至る所で現れる。
例えば、新しい組織の代表を決める時などだ。専門性の高い集団の代表となると、専門家としての実績は求心力を保つ上で重要な要素である。
ただし、専門性が高いがゆえに、実績の素晴らしさは専門家でないと判断できない。自然体でいくと専門家たちの閉鎖的な村社会が形成され、派閥争いが勃発する。
腐敗対策としては、民主的な過程(選挙など)を経て選ばれた外部の人間を介入させることだが、素人が実権を握りすぎてしまうと適格な人材が選ばれない懸念がある。
ここで生み出されたのが、「候補者を専門家が推薦」し、「民主的な過程で選ばれた人間が承認/否認」をする方法である。
これなら変な候補者が出てくる危険性は減らせるし、異なる論理で動く外部人材による緊張関係も保つことができる。
初めてこの方法を知った時は、絶妙なバランスを保つ人類の知恵に感嘆してしまった。
同じシステムに相乗りしている相手と上手くやる方法
さて、私の仕事であるシステム企画にも、このような考え方は応用が効く。
集団Aと集団Bが一つの同じシステム基盤の上で一緒に業務をしているとする。集団Aはできるだけ多くの人にシステムを使ってもらって、幅広く知恵を募りたい。一方で集団Bはセキュリティに敏感でなるべく使う人を限定したい。
お互いの思想は対立しているが、同じシステムを使っているのでどちらか一方に決めなければいけない。
ここで私たちが採った方法は以下だ。
確かにシステム基盤は一つなので、仕様を分けることはできない。しかし、「使用可能なメンバー登録」という運用面であれば別々のルールを採用できる。
エンジニアの人たちは「相手集団のデータを見れない」「登録ユーザーだけがシステムを使える」という単一の仕様のシステムを一つ作れば済むので、お財布的にも優しい。
ポイントは「異なる集団のデータを参照できないようにする」ことで、ルールの違いによる影響が及ばないようにすることである。
このように、調整ごとで行き詰まったら、「物事のレイヤーを分けて打開を図れないか?」と考える癖をつけると、思わぬ突破口が開けるかもしれない。
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