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自分磨きに取り組んでいるはずが、なんだか空回っている日々

ヘアースタイルの探求により変な方向にモテてしまった男

前髪が上手く決まらない。男の清潔感は髪に出るなんていわれるが、自分の場合はパサパサかつ毛先も広がり放題で、どうやったらツヤツヤの髪になれるかと日々頭を悩ませている。

そんな中で見つけたのがココナッツオイルだ。特に美容向けのココナッツオイルは余分な成分が含まれているので、食用のココナッツオイルがいいらしい。肌に塗れば化粧水の吸収を助けてくれるし、髪に塗っても良い。当然、食用で料理にも使えるので一石三鳥だ。早速Amazonでポチって髪の毛に塗ってみる。

これにより、私の生活には二つの変化がもたらされた。

一つは自分の髪の毛から美味しそうな匂いがするようになったことだ。うん、食用なんだから当然だな。もしかしたら職場を歩く中でふわりといい香りを漂わせ、同僚の食欲を刺激してしまうかもしれない。歩くだけで飯テロをしてしまうなんて、なんと罪な男だろうか。

二つ目は、近所の鳩が私に寄ってくるようになったことである。「鳩にモテてもしょうがねぇんだよ」なんて思いながら適当にあしらっていたのだが、今度寄ってきたら威嚇して、私がエサじゃないということを分からせてゆこうと思う。

奮発して買ったヘアアイロンが悩みの種に

より良いヘアースタイルの追求のため、ヘアアイロンを購入してみた。しかもただのヘアアイロンではない。水分を飛ばすことなく髪に熱を加えることができる優れもの。お値段は2万円だ。

その場で水分が飛んでパサパサになってしまうことがなく、設定温度に到達するのも早い。以前使っていたものと差は歴然としている。しかし、問題点が一つある。赤色のモデルを買ってしまったのだ。

カラー選択をミスったせいで「同棲中の彼女が部屋に置いていった」ように見えてしまうのである。

女友達からは「おうちデートをする時に、部屋の中の女子力が高すぎると元カノに未練タラタラの男だと思われる可能性があるから注意しなよ」と言われた。

いやぁ、参った。流石に1本2万円するヘアアイロンを色のためにもう一度買うのは躊躇する。というより、部屋の中に赤と男性向けカラーのヘアアイロンが置いてあったら、ますます疑いを強めるだけではないか。

まだ部屋に呼ぶ相手もいないのに、ヘアアイロンを着色するためのスプレーを購入しようかなどと、先取りしすぎた悩みを抱える日々である。

美容沼にハマる原因

「男でも日焼け止めは重要だ」という話を聞き、毎日BBクリームを塗るようにしている。SNSや写真加工文化の影響で、世の中のルッキズム志向がドンドン進んでおり、それにあわせて男性の美意識も上がってきた。私も時代の波に乗らねばなるまい。

私のこの"野生味あふれる濃口醤油味フェイス"の魅力を最大限に引き出すのだ。

女子力が向上してくると、今まで気にしていなかった肌のシミやニキビなどが気になってくる。そこで皮膚科に行って塗り薬、飲み薬をもらってきた。

前日の夜にココナッツオイルを塗り、朝支度する時に化粧水と乳液を塗り、ニキビ防止の塗り薬とBBクリームを重ねて・・・私史上もっとも顔面が大渋滞している。といっても、女性はこれよりも遥かに多種多様な化粧品を駆使している。彼女たちの日々の努力に思いを馳せられるようになったと考えれば、良い人生経験になっているともいえそうだ。

そうこうしているうちに今度はゲジゲジの眉毛が気になってきた。よっしゃ、ここはプロにお願いしよう、と思って眉毛サロンを訪れる。施術を受けていたら「お客さま、間違って眉毛を剃刀などで剃ったことはありませんか?」と尋ねられた。

怪訝に思いながらそんなことはないと答えると、「お客さまは左の眉毛だけ一部毛が生えてきていない」と指摘を受ける。

え、俺の眉毛禿げてるの?

どうやら私の顔面は"野生味溢れる濃口醤油味・左右非対称フェイス"だったようである。

一つ改善するとまた一つ足りないところが見えてくる。ズブズブと際限なく沈んでゆく底なし沼のようだ。

スキンケアや眉毛などで鏡を見る機会が増えると、増え続ける体重により顔の輪郭がふっくらしてきたことに気づく。魅力度向上にあたって一番効果があるのは痩せることだ、というのは心の底では分かっている。

しかし、過酷な運動による減量はやりたくない。そこでお金さえ出せば簡単に手に入る各種の美容製品を試す、という芯を微妙に外した行動にのめり込むのである。

美容は「ツラいけど一番成果に近づく行動を避け、簡単で効果が出たような気になる行動を求める」心理を利用したビジネスだと思っている。人間の怠け心がメシの種なので、いつまでも商売が続くのだ。

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