日本サッカー サポーター五大バス囲み事件 何がサポーターを動かしたのか。
通称「バス囲み」をご存知だろうか。試合結果への不満等を選手・関係者にぶつける(伝える)ために、試合後にサポーターが関係者出口に集まる行為をいう。出口を塞ぎ選手バスが出発できない状況となるため「バス囲み」といわれる。近年は回数が減少したが、成績不振のクラブでは繰り返し行われてきた歴史がある。
Jリーグをはじめ、日本国内のサッカーシーンで、過去に数多くの「バス囲み」が発生してきた。その中から、特に大きな事件、歴史の転換期となった事件を5点取り上げる。
1997年8月2日 日本平スタジアム エジウソン事件
清水サポーターからは「エジウソン事件」と呼ばれ長く記憶に残っている「バス囲み」。当時のJリーグは延長Vゴール方式を採用していた。103分に柏レイソルのエジウソンがアクシデントで倒れ試合を止めることをアピール。しかし、目の前にボールが転がってくると痛みがなかったかのように突如立ち上がり清水エスパルスゴールに突進。Vゴールを決めてしまった。まさかの失点での試合終了に納得できない清水エスパルスサポーターが「バス囲み」。柏レイソルのチームバスは出発することができず軟禁状態となった。当時としては珍しい大規模な「バス囲み」となり大きく報道された。のちに清水エスパルスは「清水エスパルス クラブ創設20周年記念本『20th ANNIVERSARY 1992-2012 THE CHRONICLE OF THE SHIMIZU S-PULSE』」を発売したが、その中で「スペシャルインタビュー 上川徹レフェリーインストラクター 1997年のエジウソン事件を振り返る」を掲載している。当時、主審を務めた上川徹さんは2002年、2006年にFIFAワールドカップで主審を務める。エジウソンは2002年にブラジル代表の一員としてワールドカップ優勝に貢献する。
2013年3月23日 ヤマハスタジアム ゴトビ、辞めろ
ダービーマッチの惨敗が「バス囲み」を引き起こしてしまった。シーズン開幕直後のナビスコ杯グループリーグ第2節ではあったが、清水エスパルスは昨シーズンから継続して11戦未勝利。流れを変えるために若い選手を起用したゴトビ監督だったが、それが裏目に出て守備が崩壊。静岡ダービー史上最大得点差の1-5で敗れた。清水エスパルスサポーターの不満が爆発し「ゴトビ、辞めろ!」「お前ら、やる気あるのか!」と罵声がチームバスに浴びせられた。清水エスパルスは、翌2014年から低迷期に入る。2014年は最終節でJ1残留を決定。2015年にJ2降格。
2014年3月2日 フクダ電子アリーナ 史上最速「バス囲み」
J2第1節で「バス囲み」が発生。史上最速の「バス囲み」といわれた。試合結果はジェフ千葉0―2栃木SC。2年連続の昇格プレーオフ敗退でピリピリムードのJ2開幕戦だったが再三の決定機を逃し完封負けとなった。チームバスに乗っていた鈴木監督に、サポーターが直接話し合いを要求。チームバスが出発できなくなり「バス囲み」となった。ジェフ千葉の島田亮社長は「運営の不手際もあり大変申し訳なく思っております。」という謝罪文を発表した。J2の過酷さが広く再認識されることにつながった「バス囲み」だった。
2010年5月15日 宮城スタジアム 無観客試合の布石
「バス囲み」した浦和レッズサポーターの人数は50名と少数ではあったが卑猥な罵声に加えて北朝鮮代表の梁勇基に対しての国籍差別発言があったため、浦和レッズにはけん責と制裁金500万円が科された。報知新聞は「『オ〇ニー・サッカー。オ〇ニー・フィンケ』と浦和レッズサポーターがフィンケ監督を罵倒した」と記事掲載してる。しかし、浦和レッズが、このときに発生した国籍差別問題を軽視していたために、2014年3月8日に「JAPANESEONLY」事件が発生。浦和レッズは、「JAPANESEONLY」事件では、制裁金だけに留まらず無観客試合処分が課せられることになる。「JAPANESEONLY」事件と併せて日本サポーター史、サッカー史に記録される「バス囲み」となった。
1997年10月26日 国立競技場暴動
10月26日は日本サッカーと国立競技場に因縁の日。1985年10月26日はFIFAワールドカップ1986メキシコ大会アジア最終予選の日韓戦。ホーム&アウェイの勝者が本大会出場を決める大一番だったが、日本代表は韓国代表に1-2で敗れ、ワールドカップ初出場が絶望的となった。1987年10月26日はソウル五輪アジア東地区最終予選の中国戦。引き分けでも20年ぶりの五輪出場を決めることができたが0-2で完敗した。そして1997年10月26日。FIFAワールドカップ1998フランス大会アジア最終予選B組のUAE代表戦。加茂周監督が解任されるなど苦しい戦いが続く日本代表は呂比須ワグナーが3分に先制弾を決めるがUAE代表に同点に追いつかれ引き分け。日韓戦を残して自力での本大会出場が消滅した。極めて短いアディショナルタイムだったことへのサポーターの不満もあり代々木門で「バス囲み」。生卵、空き缶、パイプ椅子が飛び交い暴動に。「おい!ちょっと来い!」と応戦したカズのクルマが壊されるなど大荒れとなった。選手、サポーター共に極限の心理状態で戦ったワールドカップ予選だった。
「バス囲み」はサポーターのストレス発散のパフォーマンスの一つでもあり、クラブ関係者、運営スタッフに多大な迷惑がかかる。しかし、振り返ってみると、サッカー史・サポーター史の時代背景を測るトピックスでもあるといえる。
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