きのうはごめんなさい
忙しく過ぎた8月。
なんといっても、一番大変だったのは、ほかろんでしょう。
知的障害のあるほかろんは、この、危険な猛暑の中、勇敢に徒歩・電車・バスを乗り継ぎ、毎日、生活介護の通所に通いました。
(ほかろんの意思で送迎サービスは利用していない)
公園清掃、競技場の外周清掃、アマゾン倉庫でのパン販売、などなどハードな仕事をこなしながら、ガーデンセラピーや、造形、音楽、ダンス、プログラミングなどの活動を楽しみ、調理の活動にも、しっかり参加。
さらに、水泳カウンセリングのお泊り合宿三拍四日では、メンバーのスーちゃんのお世話もしました。(世話焼きというか、おせっかいだけど、頼りになるおねえさん)
そして、緊張の中迎えた、初ショートステイを、笑顔でこなすという、素晴らしい一か月間を過しました。
さらに、追い打ちをかけたのが、迷走台風。
朝、あまり雨がひどい日には、ほかろん自分で、
「きょうはたいふうだから、おやすみする。」と判断し、生活介護をお休みしたり。
心身共に、大活躍したほかろんです。
躁病でもあるほかろんですが、今年はもう、八か月間も躁転していないという、穏やか新記録を打ち立てています。
環境を整えるとか、薬の調整とか、本人の成長とか、いろいろな要因があるかと思いますが、私の主治医の名誉院長が言うことには、
「お母さんが成長したからだよ。」だそうです。
障害のある子を育てていると親の心持や生活態度、はてまた、人生そのもの、ようするに親の人となりが、すべて子供に影響します。
だから、親も心の筋トレをして、メンタルを整えていきましょうというのが、名誉院長の教えです。
ほかろんは私の鏡なのです。
名誉院長は私のことを
「いいお母さんになったね。」とかいつもほめてくれます。
そしてそれは、私にも伝播して、私はほかろんを
「お皿を拭いてくれてありがとう。」
「新聞を取ってきてくれてありがとう。」
「いつも公園清掃してくれてありがとう。
「毎日、通所に行って偉いね。」
「お薬をしっかり飲んで偉いね。」などと、沢山ありがとうと言って、たくさんほめています。
そんなこんなで、八月も無事終わるかと思っていたら、やってきたのです。
「ヤダさん。」久しぶりに登場。
たまにやって来るヤダさん。
今回はスカートです。
次の日のために用意したスカートを持って、
「これじゃないスカートください。」で始まり、私がどのスカートを出しても、もうお葬式のスカートまで出しても、、キュロットを出しても、ハーフパンツを出しても、冬服を出しても、すべて、
「ヤダーヤダー」
こういう時は、私がタイムアウトで外へ出ます。
なんだかんだして2時間ほど、
「ヤダーヤダー」と叫びまくり、まあなんとか、落ち着いて寝ました。
そして次の朝。
神妙な顔で起きてきたほかろん。
朝ごはんが済んで、私は、二階の自分の部屋に行って、
「少し寝ます。」と引き込もりました。
しばらくすると、ほかろんの声。
「せんたくもの、たたみました。」
まあ、ありがとう。と起きていくと、
「きのうはごめんなさい。」とあやまるほかろん。
「お母さんの方も、怒ってごめんね。」と答えました。
ああ、すごい。
ほかろんのほうから、自ら
「ごめんね。」を言ってきた。
私よりずっと成長しているね。
私は名誉院長に、いつも言われているんだよ。
自分の方から、「ごめんね」って言うようにって。
ごめんねって言うと、空気が変わって和らぐからって。
ほかろんの方から、「ごめんね。」って言ってくれて、ありがとう。
合宿やショートステイで、とても、緊張が続いていたから、反動でヤダさんになっちゃったんだね。
雨が止んだので、私は自転車に乗って一人でお買い物に行きました。
ベティさんの模様のTシャツが、ワンコイン以下で売っていたので買って帰りました。
「お留守番ありがとう。」と言ってベティさんを渡すと、
「わあ、かわいい。ありがとう。」と満面の笑みで答えてくれました。