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魂のスクラップ&ビルド
工事現場を見ている。
古い建物はあっけなく壊れる。
ショベルカーがやってきてきれいに片付ける。
地ならしをして、土台を組み、新しい家が出来上がっていく。
障害のある子を育てること。
それは、今まで自分が持っていた価値基準を壊すことから始まる。
クレーンで全部解体して、新地にしてゼロから積み上げていく。
要するに普通と言われている世間の価値基準を壊して、全く違う種類の生き方があるということに気がついていく。
そして今までと全く違う生き方を実践し、積み上げていく。
その生き方は、普通の生き方とは違っている。
ある人は不幸と言うかもしれない。
ある人はかわいそうにと言うだろう。
また、何も言わなくても、まなざしで、哀れを伝える人もいる。
20年ほど前だろうか。イギリス、リーズ大学の障害学教授にきっぱり言われたことがある。
「あなたは普通の生き方はできない。」
「障害のある長女を育て、自分なりに、仕事も社会人大学院も頑張って、普通の人なみの暮らしをしたい」といった私への答えだった。
そうなんだ。障害のある子を育てることは、普通と全く違う生き方をすることなんだ。
普通、人並み、世間体、学校の成績、良い学校、就職、健常者、大手企業、エリート、美人、お金持ち、専門職、勝ち組、強さ、自立、独立、健康、五体満足、格好良さ、頭がいい、スピード。
今まで、良しとされているもの、普通と言われているものに縛られて生きてきたから、生きづらさを感じる人が多くなってきたのではないだろうか。
障害のある人だけでなく、エリートといわれるような人でも、有名大学の学生が学校に行けなくなったり、大手企業に就職しても、過労死したりする人がたくさんいる。
それは、今まで良しとされていたものが、そしてそれを目指して生きてきた事さえも、幻だったからなのではないだろうか。
それならば、これからの未来に向けて、私ができること。
それは幻想や常識を壊して、人間らしい生き方を目指すこと。
そして障害者の母として、それなりの生活を実践していくことだ。
障害者らしい暮らし。普通の人に近づかなくていい暮らし。
弱くていい。
ゆっくりでいい。
病気でもいい。
障害が重複しててもいい。
経済的に自立できなくてもいい。
人を頼りにしていい。
依存先は多い方がいい。
助けてって言っていい。
逃げていい。
これが、私にできる、未来に向けてのメッセージ。
心が苦しくない世界にむけてのんびり生きていこう。
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