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ほかろん方式

我家の長女ほかろんには、こだわりがたくさんあります。
知的障害があり、時々躁転する躁病も持ち合わせていますから、本人はかなり、大変な生き方をしているのだろうなあと思います。

字が読めず、難しい言葉がわからず、世の中の仕組みが理解できないので、自分が今生きている世界の様子が、よくわからないのではないかと思います。
あくまで、私の推測ですが。

そこで、何が何だかよくわからないこの世界で、毎日を送るために、不安だらけの自分の心を、何とか落ち着かせるために、ほかろんは自分なりに、五十年の人生経験で積み上げてきた、生活術を使っています。

それをこだわりと呼んでしまうこともできますが、私は「ほかろん方式」と呼んで尊重し、良い部分はまねしています。

まず、朝起きたら、明日着る服を確認します。
ほかろんにとっては、「今、ここ」がすべてなので、今日が晴で暑いのなら、明日も暑いし、今日が雨なら、明日も雨です。
ですから、本当は明日着る服は明日選んでほしいものです。
でも、いいのです。
ほかろんが今、安心できるのなら。明日になって、昨日用意した服では、今日の天気にそぐわないと納得した時に、変えればいいのだから。

靴やスリッパは、脱いだらきちんとそろえる。
靴を脱ぎっぱなしにしがちな私は、ほかろんをお手本にしてます。

物の置き方、カーテンの閉め方などは、5ミリの隙間もないほどきちっとしています。これは、少し息苦しいです。

外から帰ってきたら、持ち物をもとの場所にきちっと戻す。
おかげで、散らかることもないし、物をどこに置いたか、あとであたふた探すこともないです。
三拍四日のお泊りなどから帰ってきたら、私はすぐ洗濯を開始します。
しかし本音を言うと、疲れて帰ってきた時、私はぐたっと倒れこみたいのですが、片付くまで忙しいです。

戸を開けたら、きちっと閉める。
戸棚、押し入れなんでも閉める。
空気の入れ替えで、窓を開けても、すぐ閉める。
暑くても閉める。
鍵はかける。

まあ、用心深くていいですということにしておきます。
本当は天気のいい日は窓を全開にして過ごしたいものです。
私にとっては気持ちいいですが、ほかろんにとっては、戸が開いていると不安なのです。
ほかろんは無料のセコムです。

トイレットペーパーは、予備として、4個を棚に置いておく。
洋服は(最低)二枚ずつ同じものを用意する。
毎日同じ作業着(生活介護の着替え)を用意する。
こうして書きだしていくと、「用意」「予備」「整理」「戸締り」など、防災に対応しています。
そうです。用心深いのです。
私も、ほかろんと暮らしていれば、何か起きたとき、安心です。

「ほかろん方式」は、安心するための生活術なんですね。
すばらしい、ほかろん。
用意するほうは面倒くさいけど。
よく片付いた家の中では転倒のリスクは低くなります。
震災や天候不順が起きたときにも、生き残るのは、ほかろんなんじゃないかと思います。

たぶん、これが、生きた「構造化」というものなのではないでしょうか。
ほかろんから、学ぶことは多いです。


「妹の恋人」 ジェレミア・S・チェチック監督 1993年

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