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外国につながる子の就学、学習状況についてまとめてみた。

先日(7月30日)、外国籍の子ども達の就学について、以下の記事が出ていました。eboardで、まさに取り組もうとしている領域だったので、外国につながる子ども達の就学・学習の状況について、まとめてみました。

通知本文は、こちらですね。

2万人が不就学のおそれ

まず、この通知の背景にあるのが、昨年6月に成立した「日本語教育推進法」です。これによって、外国人等の子ども、留学生、被用者に対して、日本語教育の機会を確保することが、国や自治体、企業の「責務」とされました。「海外における日本語教育の機会の拡充」についても書かれいて、そういった点から文化庁の管轄になっているのでしょう。

それを受けて、初めて全国規模の就学状況調査が行われ、3月に結果が公表されました。全国的な休校で慌ただしい時期でしたが、最大約2万人が不就学の可能性があるとの報告は、SNS(私のタイムライン上)では話題になりました。

「外国人の子供の就学状況等調査結果(確定値)」が、元資料なんですが、具体的には、「不就学」と「就学状況確認できず」の合計が19,471人。これに、実態がつかめない「出国・転居(予定含む)」を加えると22,488人。なので、「約2万人が不就学の可能性」となるわけです。

約5万人の子ども達に日本語の指導が必要

一方で、日本籍の子や就学している外国籍の子については、文科省の「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」にまとまっています。もちろん在日の期間が長く、日本語が堪能で、問題なく学校生活を送っている子もいます。一方で、日本語での学習が難しい子もおり、そうした子は通常の授業に追いていくことはできません。日本語指導が必要な「外国籍」の児童生徒数:40,485人、日本語指導が必要な「日本国籍」の児童生徒数:10,274人を合わせると、約5万人の子ども達が日本語の指導を必要としている状態です。

この資料、もうちょっと見ていくと、いろいろ載ってます。例えば、どの言語を母語としている子が多いか。ポルトガル語が最多で、中国語、フィリピノ語、スペイン語、ベトナム語と続きます。ポルトガル語は、ブラジルにルーツがある子達ですね。

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そして、興味深いのは次の「学校に何人、日本語指導が必要な子がいるか」のグラフ。「1人」というところが一番多いのですが、次に多いのが「5人以上」。また、小中学校合わせると、全国で約3万校あるので、在籍があるのは全体の25%程度ということになります。つまり、ほとんどの学校では「日本語指導が必要な子」はいない、いても1人くらいだけど、いるところにはいっぱいいる、ということになります。

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以下のグラフと見ると、その理由がはっきりします。愛知県がダントツ最多で、東海地方が多い。関東でも、東京より神奈川が多い。工場など製造業の現場で働いている方が多いんですね。なので、外国につながる子の就学・学習の課題は、愛知県にとっては大きな課題ですが、岩手県(全国最少)にとっては、そこまで大きな課題ではない。これだけ、自治体によって、状況が異なる教育課題もめずらしいです。

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正直、普通の公立校に外国につながる子がたくさんいる状況、なかなかイメージできないですよね。私もです。こちらをご覧ください。

先生も大変です。横浜市で勤務していた先生に聞きましたが、こうした日本語指導を行う国際教室の先生は、別に日本語教師ではない、普通に教育学部出て採用試験受けた先生とのこと。特別支援学級や聾学校などもそうですが、いきなりその担当になる。「先生すごいな」と思うと同時に、ヤバイなとも思っちゃう。でも、こうした特別なカリキュラムがある学校が増えてきています。

進路、就学における課題

ただ、日本で生きていくことを選択した場合、進学から就職にいたるまで、日本の制度の中でやっていく必要があります。就学前にいわゆる「生活言語」の習得がうまくいかず、母語形成が遅れしまうと、その後の抽象的な語彙が多い「学習言語」の習得がうまくいかず、学習に遅れが出てきます。ちなみにこれは、家庭での語彙やコミュニケーションが乏しくなりがちな困窮家庭でも起こりがちなことです。

そんな中で、高校や大学の受験、就職に日本の制度でのぞんでいくのは、なかなか大変です。先にあげた「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」でも、中退率や進学率で高校生全体に対して、大きく差が開いていることがわかります。

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外国につながる子ども達の学習機会充実のために

課題自体の認知も含めて、まだまだ取り組みが不十分な分野ですが、まずは「日本語教育推進法」が成立したことは、大きな第一歩ではないかと感じました。以下の記事にもある通り、義務教育について定めた憲法第26条では「すべて国民は」と定められており、これまでは「外国籍の子ども達に学習機会を保障する必要があるのか?」という議論もあった、あるようです

むしろ、これから労働力人口が減っていく日本では、そうした子ども達の学習環境や、その後の労働環境を改善していくことで、日本に残る選択ができることが必要なのでは?と思います。日本語教育推進法成立の背景には、そういうところもあるのでしょう。

不就学2万人の発表と合わせて、3月には、以下の通り有識者会議から施策の方向性が示されましたが、まだまだこれからな印象。個人的には、また「学校や先生頼みの感があるなー」と感じます。日本語指導者の育成も必要なんですが、スクールソーシャルワーカーしかり、ICT支援員しかり、不登校支援しかり、そこに従事される方の労働環境もよくしないと、なかなか問題解決が難しいなと思います。

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この課題については自治体によって困り感が違うので、自治体独自に取り組みを進めているところも多いです。NPOの活動もそうした地域ではさかん。以下は、東京福生市で活動されているNPO YSCグローバルスクールの動画。

私たち、eboardにできること

先の報告書にも「GIGAスクール構想の検討と共に、ICT教材の活用、遠隔授業等の実施等を推進」とある通り、こういう領域こそ、ICTが寄与できるところが大きいと思っています。これから外国につながる子が増えていく中で、全国津々浦々に「日本語指導ができる人」を要請していくのは、現実的に厳しいですよね。

文科省も、「かすたねっと」という専門の情報サイトを設けていますが、ICT教材については、あまり整っていないのが現状です。市場として大きいわけでもなく、やはり収入が少ない家庭も多いので、企業としても参入しづらいところです。

ICT教育分野のNPOとして、「学びをあきらめない社会の実現」をミッションに掲げるものとして、外国につながる子達がeboardでもうまく学習してもらえるよう、今年度プロジェクトを推進していきます。


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