小説が書けないアイツに書かせる方法 (電撃文庫) 著 アサウラ
【何故だろう?君に脅されると心がときめいてしまう】
勃起不全に悩む少年が魅惑の少女に脅され、小説を書く物語。
勃起不全に悩む少年が魅惑の少女に脅され、小説を書く物語。
自らの恥部を曝け出した者にしか分からぬ、境地と快感がある。
自らの倒錯的性癖を世に放つ事で、マスをカクような悦に浸っていた零。
しかし、自ら告白した性の悩みは、己の過去を越える事が出来ないまま。
産みの苦しみに喘ぐ零を救うように現れた理想的な天啓、琥珀に半ば脅されるまま小説を書く事で。
今までの苦悩が嘘のように創作のアイデアが無尽蔵に湧いて来る。
凸凹コンビかと思われた二人は、思ったより相性が良くて。
琥珀のアイディアとそれを雫に想像させる手段は想像の斜め上過ぎて驚愕を隠せないが、何とか自分の中で消化させる雫。
何故か全てが上手くいくかに思えた所で突然立ち込める暗雲。
唯一無二の創作を行うには頭のネジを外す必要がある。
ぶっとんだ思考こそが、受け取り手側の性的嗜好を存分に掻き立て、万人の満足する作品となる。
実体験を繊細に描写し、物語に仕立てあげられる雫と対照的に妄想をとんでもないレベルで官能的に書く琥珀。
互いに創作に対しての価値観の相違はあれど、人々を自分の作品で興奮させたいという熱量は同じで。
自分のこの空想と感情を分かって欲しい。
承認欲求というと現代ではマイナスイメージかもしれないが、その人だけの自己表現を見たい欲求が読者にはある。
書き手側も自分の見える世界を味あわせたいという欲求がある。
二人の相乗効果により、創作小説は軌道にのるが突然の停滞。
そんな時、琥珀の秘密を知り零は行動を起こす。
恥ずかしさや葛藤やすれ違いを乗り越えて熱く挑んだ結末は、下ネタ満載ながらも何処かやり切ったような清浄な清々しい達成感が全身を包む。
まさに、この状態を賢者タイムと呼ぶのだ。