読書感想:運命の人は、嫁の妹でした。2 (電撃文庫) 著 逢縁奇演
【並び行く無限の可能性の中で、運命は現世でもつれ込む】
前世の記憶が並行世界へと大吾達を誘う物語。
前世で繋がりを帯びたかに見えた嫁·兎羽とその妹·獅子乃との関係。
しかし、並行世界という無限の可能性がある世界に放り込まれてしまい、ヒロインレースはその斜め上を行くかのような混沌さを見せる。
宇宙という舞台で思う存分、踊り明かしながら。
獅子乃と大吾の関係に一矢報いようとする兎羽は、関係が対となりつつ、転換期で運命を味方に出来るのか?
宇宙をまたにかけた命懸けのレースバトルや宇宙を滅ぼし得る未知の隕石の登場、そして大吾と獅子乃以外にも登場する意外な元婚約者・工藤の登場や一筋縄に決着がつかなそうな三人の三角関係性など、前世の関わりが、壮大な宇宙へと拡がっていくコスモワイドなラブコメと相成った。
運命に導かれし三角関係の現在地はまさかの並行世界。
現世での大伍と兎羽の愛情の深さが分かるだけに、コメディな雰囲気が多い中、獅子乃の愛の深さと切なさとやるせなさがわかりやすく伝わってくる。
運命と前世というどうにもならない宿業を、自分の手で変えてやろうと足掻く姿には、その健気さと純朴さに思わぬ涙腺が込み上げた。
また、兎羽を幸せにしたい気持ちと、獅子乃との前世での関係で揺れ動く大吾の気持ちが絶妙で。
それもそうだろう、平行世界のように幾つも存在する前世では獅子乃と、現世では兎羽と恋人関係になっている。
前世と現世で関係が見事に対になっている事を意識せざるを得ない。
だが、この現代世界では違う。
兎羽が結ばれ、獅子乃がお邪魔虫。
それは今までとは真逆の初めて訪れた機会であり、初めて二人、同じ線の上に並べた世界。
だからこそ、この世界では対等、故に正々堂々。
真っ直ぐに大吾を寝取る事を宣言し、獅子乃は兎羽に宣戦布告を突き付ける。
だけど、それでも負けられない、負けたくない。
たとえ、獅子乃と大吾との愛がどれだけ巨大であって、自分の愛がそれと比べたらどれだけちっぽけだとしても。自分には武器が何一つないとしても。この愛を手放すつもりは毛頭ないから。
大悟の周りに時空を越えたヒロイン達が集い、これから本当のヒロインレースが幕開ける。
恋は戦争だからこそ、強かに立ち回る彼女達によって。