映画感想文【パリ、テキサス】
1984年 西ドイツ・フランス製作
監督:ビム・ベンダース
出演:ハリー・ディーン・スタントン、ナスターシャ・キンスキー
<あらすじ>
テキサスの荒野を一人の窶れた男が歩いている。体力が尽きた男は倒れこんだガソリンスタンドで保護されるが一切口を利かない。数少ない持ち物から連絡を受け駆けつけたのは、男の弟。音信不通になって4年ぶりの再会であった。弟の住むLAに引き取られた男は、そこで昔捨てた息子とも再会する。
不器用ながら息子と心を交わし、二人は連れ立って別れた妻、そして母を探す旅に出る。
午前十時の映画祭にて鑑賞。
事前知識全くなし。テキサスでパリって、なんでやねん。などと考えながら観に行った。
過去の特に素晴らしい傑作映画を選び、1年間に渡って連続上映するというのが「午前十時の映画祭」のコンセプト。であるので上映されるのはどれも珠玉作品なのだが、あまりに過去の作品で受け入れがたかったり、馴染めなかったり、そういうことも当然だがたまにはある。
普通の映画鑑賞とはちょっと違った毛色の「楽しめるだろうか?」という一抹の不安を感じながらいつも鑑賞に臨んでいる。
今回は1984年、ちょうど40年前の製作なのでそこまで古いというわけではない。白黒でもない。
なので観ていてダルさやまだるっこしさを感じたのは、単に自分の好みの問題だろう。
上映時間は146分と長丁場。
なんというかバカみたいに(失礼)丁寧な造りの映画だなあ。ワンシーンにどれだけ時間をかけるんだ、まるで新年に観た『PERFECT DAYS』みたいじゃないか。
などと思っていたのだが、終わって確認してびっくりした。同じ監督じゃありませんかー。事前に調べないにも程がある(笑
なるほど、そうとわかると途端に色々腑に落ちる気がした。
ストーリーを文字に起こせば、特別凝ったものでもないし、不可解にすぎるというわけでもない。この辺りは『PERFECT DAYS』を観たときの感想と似通っている。
ただとにかくスローテンポ。これも同じ。
昨今の起承転結明快スピード解決アクション映画にすっかり慣らされたイラチ関西人にはまだるっこしいことこの上ない。「ッカー! それでほんでどないすんねんな、行くんかいな、行かへんねんか、ちゃっちゃと決めてんか!」みたいな感じになる。
それなのにそれなのに、観終わった後は何故かすごく納得しているのである。不思議。
父と息子、妻と夫、そして母と子。それぞれの見せた表情を思い浮かべながら「そうか……。ふむ、ふむ……」なんて反芻したりしている。
親子三人の(とりあえずの)行く末を見届けてやったぞ、などと謎の達成感もある。
旅が根底にあるからか、場面にも登場人物にも動きがあって『PERFECT DAYS』より受け入れやすい気がした。
後半、別れた元夫婦の会話から母と息子の再会までは特に良い。音楽もいい仕事をしている。
ただ観ている最中は疲れることも間違いないので、次に上映される同監督作品『ベルリン・天使の詩』を観に行くかは迷いどころ。
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』はちょっと気になるが。
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