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映画感想文【幸せのイタリアーノ】

2022年 イタリア製作
監督:リッカルド・ミラーニ
出演:ピエルフランチェスコ・ファビーノ、ミリアム・レオーネ

<あらすじ>
有名シューズブランドの社長を勤めるジャンニは御年49歳。恋のために名前を偽り身分を偽り、プレイボーイっぷりにますます磨きがかかる。
新たな恋のターゲットは車椅子に乗ったバイオリニスト、キアラ。ひょんなことから自身も車椅子ユーザーとして知り合い、彼女を落とすためにジャンニはそのまま嘘をつくが……。



2018年フランス製作『パリ、嘘つきな恋』をイタリアでリメイクした作品。
オリジナルは観ていないが、そちらも大ヒットだったらしい。
さほど期待をしていなかったのだが、予想を裏切ってとても良いラブコメだった。

まず、楽しい。
めっちゃ笑える。
シューズブランドの社長でマラソンが趣味、至って健常者のジャンニが車椅子ユーザーを装い、その嘘を突き通すためのハプニングが面白い。
劇場はずっと笑い声が絶えず、みんなが笑っているから自分も気兼ねなく声を上げることが出来た。この一体感はなかなか病みつきになる。

車椅子ユーザー、つまり障害者の恋愛となると健常者同士では存在しない不自由さがあるのは当然で、深刻な空気になりがち。
それをこんなに笑いに昇華するなんて、あっぱれである。
もちろん映画では障害者を巡る偏見や問題もきちんと扱っている。特にジャンニ自身が最初から偏見の塊である。しかしそれは不理解からくる思い込みであり、自分の愛しい人がその立場であれば印象や態度は180度変わってしまう。
これを自分勝手というのは簡単だけれど、人間の想像力なんて大体そんなものだ。

自分の中の偏見、過ちを認め改めるのは勇気がいる。20歳もすぎればなかなか性格というものは変えられない。
ジャンニに限って言えば多少の失敗はあれど取るに足りないもので、今までこれで上手くやってきたんだからこれからもそのままで良いと思っていても無理はないだろう。実際経済的には一定以上の成功を収めているわけだし。
そんなジコチューでギラギラしていた彼が、本当は彼なんか全然必要としていないキアラによって変えられていく様が、恋をするということの幸せを教えてくれる。

交通事故で下半身不随になってもヴァイオリニストとして立派に成功し、車椅子テニスも楽しむ。辛さはあるだろうに、それを微塵も感じさせない。
自分の不自由を誰にも頼ったりしない。
生きていくのに他人を必要としていない。しかし拒絶するでも強がるでもなく、親しみを込めて感謝し受け入れる。
賢く、強く、にじみ出る余裕。決して不運に悲観しない、しなやかな内面の美しさがとても魅力的。
あとシンプルにめちゃくちゃ美人。太眉がセクシー。
そりゃ名うてのプレイボーイも落ちるわ。

他にもキアラのナイスバディな妹・アレッシアにパワフルすぎる婆ちゃん、普段お固いお局風なのにカラオケ大好き秘書・ルチャーナ。
愛すべき仲間たちに囲まれて、助けられて、最後は大団円。音楽も効果的でとても楽しいラブコメだった。
一番良かったのはジャンニの豪邸で愛を営むシーン。発想が秀逸でロマンチックに加点100だ。

ただ一つだけ難を呈するならば、邦題がちょっと。
現代は『Corro da te(あなたのもとに駆けつける)』
嫌味じゃない洒落っ気が効いていてとても良い。
それが『幸せのイタリアーノ』ってのは、やっぱりちょっとナンセンスな気がするのだが。


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