映画感想文【リトル・エッラ】
2022年 スウェーデン・ノルウェー合作
監督:クリスティアン・ロー
出演:アグネス・コリアンデル、シーモン・J・ベリエル
北欧からの、心温まるファミリー?コメディ。
大筋のストーリー自体は目新しいわけではない。
友達のいない女の子の唯一の理解者は叔父。その大事な親友にいきなり恋人なんて! 同担断固拒否なんですけど!!
追い出してやろうとあの手この手で嫌がらせを頑張る。しかしどれも満足の行く結果がでないどころか、なんなら裏目に出るばかり。協力者である同級生のオットーとも拗れてしまう。
やらかしたり、やらかさなくたり、ともかく子役の光る映画は沢山ある。
この映画もそんな一つ。
エッラはサッカーが大好きだがボールを蹴る足が折れんばかりに細くて、いたずらに試行錯誤して駆け回る姿も頼りなくて、大人の庇護欲をそそる。
トミー以外に友達はいらないし、スティーブなんて絶対追い出してやる、と息巻く様には、困っちゃうな、などと思いながらも大人の思惑になどとらわれない自由さが魅力的だ。
エッラのやらかし、『あの手この手』はフィクションとしてはやや物足りないが、現実にやられたら「このおバカ!」と春日部在住の某主婦のように叫びたくなること間違いなしだろう。
その行為を咎めてもエッラ自身を否定したりはしない大人たちの眼差しは、羨ましい。
良き理解者であるトミーの存在はもちろんエッラにとって素敵な人だが、同時にトミーにとってもエッラの存在は唯一無二ではなかろうか。
トミーの恋人、スティーブは同性。つまり性的にはマイノリティーである。
映画には一切描かれていないし、トミーにも周囲にもそんな気配はないが、マイノリティーゆえの悩みが一切なかったわけでもないだろう。
無知な子供でも周囲の空気を敏感に読む。
大人たちがトミーの性的指向の詳細を教えたりはしなくとも、「この人、なんだか他と違うな?」くらいは感じているはずだ。しかしエッラはそんな違和感を嫌悪せずむしろ乗り越えて近づいて、トミーを愛している。
単なる異質に対する好奇心というには、エッラの示す愛情はあまりにひたむきである。
エッラにとって不倶戴天の敵であるスティーブの優しさもまた、眩しい。
二人がサッカーを楽しむ様子には思わずほっこりしてしまう。
スティーブは恋人の身内に認めてもらいたいという多少の下心があるかもしれないが、それでも登場する大人たちがみなエッラに真摯である。「子供だから」とはいうけれど「所詮」とは侮らない。エッラの叔父なのか、三つ子のキャラもまた良い(笑
トミーはスティーブにプロポーズしようと考えるけれど、それでエッラへの愛が減ったりはしないのだと語る。エッラもまたそれにうなずき、見事二人のキューピッドになる。
原作が絵本だから当然といえば当然かもしれないが、嫌味のない納得の物語であった。
”友達は人生の庭に咲く花”
別に色とりどり、山程咲き誇らなくたっていいけれど、偶然でもたった一輪でも、咲いてくれたそれは大事にしたい。
エッラの黄色のユニフォームをはじめとして、色彩が鮮やかで楽しいし、特に音楽が良かった。
あのお菓子は、なんて食べ物??
おばあちゃんのポークパンケーキ、美味しそうだけどな。
垣間見の北欧にも興味が唆られる。
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