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海老原いすみ
2019年4月23日 18:25
タバコが100本あったから、1日2本吸っていた。残りが50本になったから、1日1本吸っていた。残りが20本になってから、2日に1本のペースになった。残り10本になってから、3日に1本のペースになって、その煙をこれまで以上に味わうようになった。とうとう残り3本になった時、無意識のうちにこれまでの人生を振り返っていた。生まれてすぐに祖父母の家に預けられたこと。両親の顔が分からないから保育園
2019年4月7日 20:56
四月のとある夜の事だった。その晩、外は雨が降っていて、時折強い風が吹くと窓ガラスが揺れ、振幅によって生じた数ミリほどの隙間から鋭い風が部屋に侵入した。電気の消えた暗い部屋の中には一人の女がなかなか寝付けずにいた。雷は鳴ってはいないものの、雨と風の他に聞こえる音が女の神経を逆撫でた。「トトト、トトト…」女の見つめる先には暗闇を暗闇と認知させる為にあるように存在する変哲もない天井と壁とがあるだけ