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2017年5月の記事一覧

プリンを食べた犯人

「あー!あたしのプリンがない!おかぁさーん!プリンがないんだけど!」
「そんな大きな声出さないの。ちゃんと見たの?」
「冷蔵庫の一番上の棚の左に置いて置いたのにないんだけど!誰が食べたのよ!」
そこへこの家の主人(あるじ)が帰ってきた。
「ただいまぁ、どうしたんだ一体? 玄関の外にまで聞こえていたぞ」
「あ、あなたお帰りなさい」
「ちょっと!お父さん!あたしのプリン食べたでしょう?」
「プリン?

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重賞レースのパドックで人間達が目を光らせる中、二頭の馬が会話をしていた。
駄馬「この間のレース見たよ。ベストタイム更新!サラブレッドくんはすごいなぁ!」
サラブレッド「大逃げの『かけっこ太郎』くんには敵わないよ」
駄馬「その名前はよしてくれ、演歌歌手に買われて変な名前付けられちゃったの気にしてるんだから」
サラブレッド「ごめんごめん。かけくん」
駄馬「僕も脚には自信あるけどさ、サラブレッドの君には

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北風と太陽

「よしっ!撮れてるぞ!」
「ベストポジションですね」
男たちが熱視線送る先にはモニターがあり、そこにはワイシャツのボタンを外し、スカートをめくりながら風を仰ぐ二人の女が映っていた。
「ふぅー。暑い暑い」
「ほんとあのおっさん達何考えてるんだろ」
「クールビズの設定温度28℃とかサウナじゃないんだからさ」
「エレベーターとかマジ最悪なんだけど」
「だよね。しかも根拠ないらしいよ」
「地球温暖化とか分

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私がお前を利用する

それは総理官邸のとある一室で、謎の男が総理大臣を叱責しているという奇妙な風景だった。
「なんだよあのスピーチは? えっ?」
「す、すまない」
「すまないじゃねーよ馬鹿野郎! てめぇ何年議員やってんだよ。くそ世襲がよぉ! フリガナ振らなきゃ漢字が読めねぇってどういうことだよ⁈」
「つい…その…」
「こっちは寝ずにスピーチ書いてんだぞ⁈ 俺アメリカ人だし、日本に来て10年経ってねぇっつうのに、お前がこ

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侵略者

「ねぇ、どうしておじさんは一人なの?」
「うるさい!あっちへ行け!シッシッ!」
「悪いことでもしたの?」
「うるさい!」
「ボクも…ボクも一人なんだ。」
「…」
「おじさんはどうやってここへ来たの? 帰らないの?」
「こんなとこ、来たくて来たわけじゃねよ。そりゃあ、帰り方が分かりゃ今すぐにでも帰りてぇよ。帰りてぇけどこの場所は他のどこにも繋がっちゃいねぇ。散々ぱら動き回ってもうクタクタさ」
「ふー

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ばかやろう

「ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!」
選挙に当選した若手議員が満面の笑みを浮かべて万歳三唱を行なった。それを見ていた中堅議員は眉をピクリとさせ、すぐさま会場で注意をした。
若手議員「話ってなんでしょうか?」
中堅議員「当選おめでとう。まぁ、たいしたことじゃないんだけどね、君が着ているシャツに穴が空いていたんだよ」
若手議員「シャツに穴が?」
中堅議員「ほら、右の脇のとこ」
若手議員「あっ、本当

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にがいごはん

帰宅ラッシュの雑踏の中でマイクを握りしめた政治家が熱弁をふるっていた。
「既得権益は悪なのです!この国は開かれなければなりません!それがグローバリズムです!」
政治家のその声は家に帰る人々にとっては馬耳東風だった。
「政治は国民のためにあるのではありません!企業のためにあるのです!国民が健康を害しようと添加物の使用を規制する法律は撤廃されなければなりません!」
ひときわ大きなその声も簡単に雑踏にか

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